Episode050 大魔導士とその弟子まで好きにさせちゃった( ̄∇ ̄;)

『……という感じなことを言うんだ』

「え、えーっと……。へ、へえ~、そうなんだ~」


頭から煙を上げそうなくらい完全に真っ赤になっているナノックを見ながら、俺はヘルメイス様がまた仕組んでないかどうか警戒している。

確かに、この人の見た目が2番目に俺のタイプってのは本当っちゃ本当だ。

ちなみに、俺の1番目のタイプは、当然のように黒髪ロングである。


「……アヅマくん、責任は取りませんよ?」

『俺ももう慣れてきたからな。どうすべきか分からんけど、どうにかしてみるよ』


俺にできることと言えば、責任持って家族に迎えること以外にあるんだろうか……。

ディアーの場合は立場的な問題があったおかげでどうにかなったんだけど、ナノックにはそういうのないから、俺たちと一緒に暮らそうとする可能性は十分にある。

まあ、まだナノックが俺のことを好きになったとは限らないし、そこは要注意だな。


「……でも、私は可愛くないし、見た目にも自信ないし……」


おや、そういうタイプでしたか。

たまにいるよね。可愛いのにそうやって卑下する娘。

日本には画面越しか紙面越しにしかいなかったので、むしろ新鮮で有り難い。

家族に引き入れられる部屋なんてもう残ってないのに、持ち上げたくなってしまう。

とか思っていると、俺の気持ちに呼応するようにして口が開いた。


「何言ってるんだよ十分な美少女のクセして。まあ、この場にいる11人全員美少女なんだけどな?」


……この口、持ち上げるのとその分のカバーを同時にやりやがった。

意外なホンネコチョウダケのフォローに驚きつつ、真っ赤になった11人を眺める。

それはそれとして、早く解毒してもらいたいんだけど。


「とっ、とりあえず! あなたの毒はどうにかできるだけどうにかしてみるね!」


顔を真っ赤にしたままのナノックは、家の奥の方へと逃げるように入っていった。

……これもヘルメイス様のシナリオ通りじゃないといいんだけど。

まあ、大魔導士たるナノックが仲間になってくれるのも心強いんだが、魔法は俺だけで十二分にこと足りてるからなあ。


「……もしかすると、アヅマくんの最大の武器は口なのかもしれないですね」


しみじみと何かを実感したような表情をしたユイナが、そんなことをぽつりと言う。

『口は災いの門』とは言うが、『口は最強の武器』とは言わんのよ……。

と現実逃避のように考えていると、ナノックが入っていった方から誰か出てきた。

大魔導士なんだし、弟子の1人くらいいたって不思議じゃないか。

ローズグレーのミディアムレイヤーを揺らしながらやってきた紫色の瞳の少女は。


「……シイスバラな魔力デスね」

『ん? シイ……スバラ?』


何言ってるのかよく分からんが、俺自身のことから考えるに『素晴らしい魔力』って言ってるんだろう。

魔女とかの弟子ってキャラが濃いヤツの枠なんだろうか。

日本にあった作品でもそういうケースはたまにあったし。

遂に『思念通達』で急なことにも反応するようになっちまったし元に戻ってからもこの状態にならないかと少し解毒後のことを心配していると、奥へ行っていたナノックが戻ってきた。


「この子は私の唯一の弟子、テイニーケッグちゃん。絶対零度の精霊で、氷魔法を完璧に操ることができるよ。勿論、私が教えたから他の魔法も使えるけど……」

「テイニーがナノックに拾われて、もう3000年も経ちマスね」


この娘が精霊か……。確かに、ジェルトと似たような雰囲気を感じる。

あと、精霊が弟子ってこととか、世界の伝説である大魔導士が弟子を取ってるってこと自体が前代未聞で、誰も知らないんじゃないのか?

『絶対零度の精霊』って時点でココに来てから出会ったのは明白だし。


「……なんか、抱き心地良さそうだな」


おっと、あと少しってことろで、俺の口が『終焉之業火』を放つ如く爆弾発言を投下してきたんですけど!?

もしかして、もう解毒されるのを分かってでの置き土産のつもりか!?


『ちょっ、ストップストップ! これはちゃんとホンネコチョウダケの毒の所為だから! 仮に俺の本心のどこかでそう思ってたとしても、わざわざ言わないから!』


12人が発言にどう反応しているかも確認せずに、俺は床で大胆に土下座をかましながら、自己防衛もとい言い訳をする。

さっきのはさすがにキモすぎるにも限度ってモンあるだろうがとツッコみたくなる。

俺は恐る恐る顔を上げてみると。


「……そう言ってくれるなら、少しだけ抱いてもいいデスよ……?」


しゃがんで俺を覗き込みながら、テイニーがそんなことを言う。

当然のように赤くなっている頬は、俺の2度目の功績もとい罪跡だなと思う。

なんか申し訳なくなってまた顔を伏せた俺にナノックが。


「す、凄い……。体温のない精霊を、それも極寒地域の精霊であるテイニーの頬を真っ赤にするなんて……」

「アヅマさんは、テイニーさんと同じく精霊の私も……同じ状態にしたことがある」


俺の前科を犯した相手であるジェルトが、困ったような表情をして言う。

……もう解毒して帰らさせてくださいっ!

俺と関わった女性は俺が赤面させる運命にあるんだろうかと要らぬ心配が湧き上がってきたところで、俺の両肩をポンポンと叩く手が。

俺がそっと顔を上げると、ナノックとテイニーがしゃがんで俺を見ていた。

……スカートの中が見えそうなので、勘弁してくださいっ!


「……ねえ、一つだけ、あなたの毒をどうにかする方法があるかもしれないの」

「テイニーが得意の氷魔法で、アヅマの毒を凍らせマス!」


あ、俺に話しかけてきたのはそういうことか。

てっきり、あたかもヘルメイス様の掌の上で話が進んでいるかのようなことを言うのかと思っていたが、ただの杞憂だったらしい。

俺の自意識過剰も深刻になってしまったものである。

仮に本当にそうなったとしても、この2人もいいとは思うんだけど、だからといって安易に家族を増やすのもな……。

と、俺が勝手に安心していると。


「それでなんだけど、治してあげるから、……私を可愛いって本当に思ってるなら、私自身もそう思えるようにしてよ……」

「……テイニーを抱き心地良さそうと言った罰デス。いっぱい抱いてクダサイね?」


あ、ヘルメイス様の掌の上でしたわ。


次回 Episode051 解毒。そして家族は増えるのか?

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