【11万PV,1240F,★170,♡2450】勇者にフラれた最強美少女の『ざまあ』を手伝ったら、急にスローライフが始まりました~俺でいいならお好きなだけ隣にどうぞ~
Episode049 大魔導士ナノック・ビシュア
Episode049 大魔導士ナノック・ビシュア
目の前に現れたこの少女が大魔導士というのは、あまりにも信じ難い話である。
年老いている様子もなく、正体さえ知られなければ普通の女の子にしか見えない。
俺としては、スライムが覚醒してそうなったとか、あったとしても、かなりヨボヨボなお爺さんかお婆さんをイメージしていたんだが。
まあ、若いに越したことはないし、別にいいか。
とりあえず、話しかけてみるとしよう。
突然の『思念通達』はビックリされると思うけど。
『もしかして、あなたが大魔導士様ですか?』
「わッ!? ウソ、『思念通達』を使える人がもう1人いたなんて……」
あ、意外と普通の少女みたいな顔をするな。
3000年生きてるにも拘わらず、心身どちらも衰えてないって感じか。
そういうことなら、ヘルメイス様にいろいろされないように気を付けないとな。
また俺に与えられた主人公属性の所為でこの人まで好きにさせかねない。
おっと、自意識過剰なつもりはないぞ?
「……あなたのその様子だと、もう私が何者か分かってるみたいだね」
『そりゃ、『思念通達』を使えるヤツが『解析』を使えないはずがないですよ』
自分で言っておいてなんだが、この人は『極寒地域ベルーファにて暮らす人間といえば……』という、完全に答えの定まっていることがあるから『何者か分かってる』と言ったんだろう。
そう言っても、俺は『解析』で大魔導士だって分かったんだし、ウソは言ってない。
「それじゃ、答え合わせだね。私はナノック・ビシュア。この極寒地域ベルーファに住まう、この世界で唯一の大魔導士……あなたの世界だと、賢者って呼ばれてることが多かったかな?」
『もしかしなくても『解析』ですか? ああ、俺は日本ってところから来ました』
流石は大魔導士ってところだな。
俺はまだ200種類も魔法を使えやしないが、この人は全部の魔法を使えるんだろう。
場合によっては、少しだけ回収させてもらうとするか。
『俺はアヅマ・カンザキです。今回は、あなたにしてもらいたいことがあってココに来ました』
「私にしてもらいたいこと、ねえ……。わざわざ来たってことは、キノコの毒か何かをどうにかしてほしいってことでしょ?」
おお、飲み込みが早くて助かる。
『大魔導士ならどうにかできる』って話は本当だったんだな。
まあ、今まで誰もナノックさんのところまで辿り着けなかったから、あくまで言い伝えくらいのモンだったと思うが。
とか思っていたら、どうしてかナノックさんが震え始めた。
もしかして、極寒地域にいた所為で2000年や3000年も誰に頼られることもなかったから、頼られて嬉しいみたいな感じなのか……?
とか期待していたが、答えは想定外にも頼りないものだった。
「……わ、私、解毒とかムリなの! あの時は回復魔法をテキトーに使いまくってたらどうにかなったけど、デタラメだったの!」
……つまり、だからこそこんな極寒地域なんかに移住してきたと。
どうしてこんな場所に住んでるんだか不思議だったが、謎が解決したな。
というか、それじゃあ俺たちが頑張ってココまで来たのはどうなるんだよ。
「でも、しょうがないか……。頑張って来てくれたんだし、できるだけのことはするよ。数日はかかると思うけど、よろしくね」
『ああ。こちらこそ、よろしくお願いします』
洞窟の中がかなり寒くなっていたことを忘れていた俺たちは、とりあえずナノックさんの魔法で移動することになった。
大魔導士の名に相応しく、『地図移動』ではなく『瞬間移動』を使うらしい。
「それじゃ、私から離れないでよ。制御の難しい魔法の1つだから、もし失敗したら生きてないと思って」
俺たちは互いに身を寄せ合い、ナノックさんの『瞬間移動』が発動するのを待った。
どうやら、俺みたいに詠唱をしなくていいとかはないらしい。
アレは『魔法再現』の『魔法本体のみをコピーする』って特性ありきだがな。
もう慣れているのか、ものの10秒で詠唱を終わらせたナノックさんが叫ぶ。
「『瞬間移動』!」
次の瞬間、意識が少しグラついたと思ったら、誰かの家にいた。
言わずともナノックさんの家である。
よくこんな場所に家なんか建てれたなと感心していると、大魔導士は言う。
「私、他人行儀は嫌いだから素の喋り方でいいよ。それで? あなたは、どういうキノコの毒に侵されてるの?」
*
俺は、昨日の昼から今に至るまでのことを全て『思念通達』にて話した。
途中でユイナたちのツッコミやら何やらあったが、苦笑しながらもナノックさん……ナノックは最後まで聞いてくれた。
「へえ……。ホンネコチョウダケか。よく尋問で水にソレのエキスを垂らしたヤツが使われるって聞いたことあったけど、まさかソレを普通に食べちゃうなんて……」
『どうやら、この症状で苦しんでる人ってのは、生憎なことに俺だけじゃないらしいんだが。回復魔法でどうにかなる……タイプじゃないんだろ?』
俺がそう訊くと、どうしてか少し悩むような顔をしたナノック。
もしかして、今回に至っては治す方法が何かあるってことなのか?
だったらいいんだが、治せないとしても俺には『思念通達』があるから、そんなに心配はしていない。
まあ、いつか口の筋肉が衰えるのが早くなるってことはあるだろうけど。
「……それならさ、まず、どんな感じなのか聴かせてよ。ほら、私への印象とか、その辺のことでいいから」
俺を侵している毒の様子を診ようとしているナノックが話しかけてくる中、俺は内心でちょっと強く祈っていた。
……頼みますヘルメイス様。これ以上はハーレムを増やさないでください。
別に、美少女に囲まれて暮らすのが嫌とかじゃない。
だとしても、俺にはもったいなさすぎるだろ……!
しょうがないし、言うだけのことは言わせるか。
俺は固く閉じていた口を楽にして、言葉が出てくるのを待った。
「……ナノックって、ぶっちゃけて2番目に俺のタイプだな」
……この口は、何を言っているのだろうか。
耳まで真っ赤にしたナノックを呆然と見つめながら、俺はそう思ったのだった。
次回 Episode050 大魔導士とその弟子まで好きにさせちゃった( ̄∇ ̄;)
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