Episode047 いざ、大魔導士を探しに。

急に胸が大きくなった――少しではあるが――ことにビックリした所為で一睡もできなかった俺は、意外としっかり男なんだなあと実感させられてしまったワケだが。

翌朝、起きてすぐにカミナスにドラゴン状態になってもらった。

10mはあった巨躯が更に大きくなり、ドラゴンとしての貫禄は完璧になっている。


『カミタンの翼、なんか重量が増してますね……』

『まあ、硬くなるんだからそれだけ重くなるだろ』


ドラゴン特有の念話と俺の『思念通達』で会話しながら、俺はカミナスを眺める。

以前より鱗は金色に輝き、角も伸びているな。

どうして『愛の力』なんかでドラゴンが強化されるのかなんて分からんが、なんとなくカミナスにヘルメイス様の手が加わってる気がする。

じゃなかったら、そんな手段にならないと思う。

カミナスが人型に戻ると、俺たちは家の中に戻ったのだが……。


「……カミナスさん、少し胸が大きくなってるね」


この中で一番貧乳であろうジェルトが、少し羨ましそうに言う。

……なんか申し訳ないし、どっかから精霊を強化する方法でも見つけ出して、ジェルトの胸が大きくなるようにいろいろしてみるか。

とか考えていると、カミナスが急に上の服を脱いだ!?

とりあえず『発光』という――まだ使ったことがなかった――魔法で失明した俺はホッと胸を撫で下ろした。

どうして目を閉じるのではなく自ら失明したのかは不明である。

まあ、俺は『治癒』が使えるから何も問題はない。


「ほら、カミタンは今やCカップはあります! Aカップのあなたを置き去りにしてやりましたよ!」

『謝ったら一分抱き着いていいぞ』

「じ、ジェルトさん、カミタンが悪かったですゥ! 許してください!」


……相変わらずのチョロゴンもといチョロインだな。

いい加減、こういう手段でどうにか行動させる自分の癖をどうにかしたいとも思う。


「……カミナスさん、ズルい。自分だけ抱かれようだなんて」


胸についてはもうそんなに気にしていないらしいジェルトが、頬を膨らませて言う。

まあ、抱き着きたいならご自由にどうぞってところだな。

それで誰かが損するワケじゃないし、むしろウィンウィンだと思う。

おっと、俺は愛されてる実感があって嬉しいだけだからな?

胸の柔からさや髪からするいい匂いに罪悪感を覚えてるのは秘密である。

ということで、俺は流れのままに2人ともと抱き合う。

……よく考えたら、俺たち11人中の7人は精神生命体とか長寿種族か。

悪魔や天使、ドラゴンに精霊が年齢概念がないとすら思えるほどの長寿なのは勿論のこと、この世界のケモミミはエルフ同様に人間の寿命の10倍で、17歳くらいになってから死ぬ1年前まで、全く年を取らないらしい。

そういうことなら、少なくとも他3人を積極的に抱いてあげるべきなのかね。

これからどうすべきか考えながら、俺はそっと自分の目に『治癒』を使うのだった。



『全員、荷物持ったか?』


昨日と同じく『思念通達』で話しかける俺たちは、カミナスの背中に乗った。

しばらくはこの家もとい屋敷とはお別れになるし、何も被害はないといいんだが。


『それでは飛びますから、天体観測のときと同じようにお願いしますよ?』


そのカミナスの声に合わせて、ジェルトが結界を張る。

これで地上と同じように過ごしても問題ないな。

直後、カミナスが以前と比べものにならないレベルの速さで飛んだ。

まさか肉体的にも強化されていたのかとビックリするが、そうじゃなかったら人型のときに胸が大きくなった理由が分からんから、納得はできる。

それより、極寒地域べルーファのどこに大魔導士がいるのかすら知らないで行って大丈夫なのか?

まあ、そこは俺の主人公属性のご都合主義が発動するのを期待するしかないか。

逆に、ヘルメイス様が手を突っ込んできた場合はいろいろありそうだが。


――と思っていたのが、つい2時間くらい前だっただろうか。

今、俺たちは確実に迷子になっている。

というものの、つい30分くらい前に極寒地域ベルーファの領域に入ったのだが。

そもそも吹雪の所為で視界が悪く、その所為もあって方向が分からなくなった。

今回ばかりはヘルメイス様の所為にできない気はするが、あのイケメンが仕組んだんじゃないのかと思うと憎ましいが恨めない。


『カミナス、大丈夫か?』

『そ、そろそろ、どこかで休憩したいです……』


かなり疲れた様子のカミナスが、念話で俺に答える。

こういうときは近くに都合よく洞窟が見つかる―――というか、ヘルメイス様が用意してくれる――モンなんで、少し先にそれっぽいものが見える。

やっぱり、あの人は使えるパターンは全部使いたいんだな。

しょうがないし、一旦あそこで休むか。


『カミナス、あっちに洞窟っぽいのがあるから、そこに入ろう』

『わ、分かりました……。ようやく休めます……』


……なんか申し訳ないし、何かしてあげるとするか。

それこそ、翼を長時間動かしてたら疲れてるだろうし、マッサージでもしよう。

俺のマッサージは、前世の家族からなかなか評判よかったからな。

そう思いながら、降り立ったカミナスの背中から、洞窟の中へ入っていたのだった。


次回 Episode048 マッサージとヘルメイス様と伝説の大魔導士

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