Episode038 ヘルメイス様との出会い!?

俺は魔力不足により気絶していたが、遂に目を覚ました。

だが、どうも周囲の空気がおかしいし、まず家ではない。

白い霧に包まれ、光はあるが全く周辺が見えないことから、屋外なのか屋内なのかすら不明な状態になっている。

しかも、駆け回って戦いまくっていたおかげで成長していた筋肉もすっかり落ちてしまったような身体で、まるで前世の身体みたいな……。


「おはよう! やっと目を覚ましたかな?」


おっと、誰かいるらしいな。

俺は唐突にした低くも高い声のした方を向き、魔法が放てるように腕を構える。

今回も俺の巻き込まれ体質がはたらいた結果だろうが、流石に離れ離れはまずい。

『思念通達』も、結界で阻まれているかのように効果を示さないままだ。

さすがに生きて帰れたら奇跡なのかもしれない。


「ちょっと待って! 確かにオレがアヅマ君を巻き込まれ体質にした張本人だけど、『魔法再現』を与えたのもオレだからね!?」


……え? 俺が感謝すべきで、同時に憎むべきかもしれない相手だと?

そんなヤツが、どうして俺をこんな謎の場所に……?

というか、今更ながら、ここが天界か何かの類ではないかと思い至る。

日本にいた頃だって、こういう風景がアニメの中にあると、それには神様なり天使なりが関わっていたじゃないか。

そういうことなら、納得できなくはない。


「それで、……あなたは何者ですか?」


俺がそう尋ねると、霧の向こうから長身で細身の青年が出てきた。

クリーム色の髪のツンツン頭で神様みたいな雰囲気はないが、その飄々とした感じも日本人からしてみるとアニメや漫画の中に出てきていた神様みたいで、逆に神様だと認識してしまう。


「オレはヘルメイス。この杖、ケーリュケイオンでいろいろ操作する神様さ」


そう言いながら、神様……ヘルメイス様は右手に持っていた、蛇が絡んでいるような形状の杖を俺に突き出す。

名前が少し違うが、俺が知っている風に言えば、目の前の人は神ヘルメスだろう。

そういえば、神ヘルメスは死者の魂を司っていて、創造や転換もできる、神ゼウスの使いだと聞いたことがある。

コレも前世の知識だが、神に世界とか時代とかって関係ないものなのかもしれない。


「いやー、まさかオレの改造した魂が、あんな立派になるとは思ってなかったわ!」


……それ、聞かなかった方がよかった情報のような……。

今の言い様だと、ヘルメイス様の改造した魂はヤバいことになっていたって言っているように聞こえるんだが。


「え? つまりはどういうことですか?」

「ああ、ちょっと心配させてしまったみたいだね。実は、今までにも、アヅマ君以外にもオレの改造を施したことがあったんだけど、その度にソイツ等は全員犯罪に走ったのさ。チート能力だからって調子に乗っていいワケないのにな」


……なんだ、ヘルメイス様自身じゃなくて、力を与えた相手が力にモノを言わせて犯罪者になったってだけだったか。

もし、改造の失敗で今まで改造してきた人たちが暴走していたとかだったら、俺まで暴走することになるのかと危惧する破目になるところだったな。

そんなことを思っていると、ヘルメイス様はニカッと笑って。


「それに比べて、オメーはその力で人を助けている。……いや、もう助けすぎなレベルだとオレは評価するぜ」


……神様から直々に評価を下されるとか、常人にはできない体験だよな。

これも俺の主人公属性のおかげなのかね。

いや、ソレを付与した張本人がこうして話の場を設けたんだから、そうじゃないか。

それと、そういうことなら訊いておかねばならないことが幾つか。


「あの。俺って、どうして死んだのか知ってますか?」

「……オメー、よく勇気あるって言われないか? フツーは訊かねえぞ?」

「一応知っておいた方が、スッキリすると思うので」


俺がそう答えると、ヘルメイス様は少し躊躇ってから。


「……オメーはな、オレが推薦で転生させたんだ」

「……え? ハアア!?」


ちょっと待て! それって禁忌じゃないのか!?

いくら神様の推薦にしたって、生きている人間を生まれ変わらせることまでは許されているとは到底思い難いのだが……。


「そりゃ、後で主であるゼイウス様には怒られたさ。でも、オメーだってあの世界のままじゃイヤだったろ?」


……そこを訊かれると否定はできない。

アニメや漫画を心の拠り所にして、テストやその他諸々に打ちのめされるだけの日々だったんだから、今の方がずっと価値はある。

むしろ、俺はヘルメイス様に推薦されたことを誇るべきなのかもしれない。

まあ、人に言ったら、ヘルメイス様の悪い噂が広がっちゃうだろうから言わないが。


「……俺が大切にしたいって思える人たちに出会えたのは紛れもなくあなたのおかげですし、その上便利な力までくださり、本当にありがとうございました」

「なーに、オレだって、オメーが世界を変えてくれると見込んでそうしたワケだし。実際、世界は少しずつ、あるべきだった形から変わり始めているからな」


俺には、その『あるべきだった形』というヤツが分からない。

ユイナが誰かに襲われていたり、シズコがまだカミナスに手を焼いていたり、ミュストがジェルトの悩みを解消できていなかったり、コトネもカカリもマルヴェも未だに暇していたり、ヘリュミやタシュー、その他大勢の少女たちがロリコンの欲望の為に拉致られていたり……。

そんなのが、世界が『あるべきだった形』だったんだろうか。

だったら、俺をこの世界に連れてきてくださったヘルメイス様を、素直に尊敬する。


「そういえば、魔法が進化したり、討伐ボーナスと称して魔法が貰えたりしたろ?」


世界のアレコレを考えていると、顔を覗き込むようにヘルメイス様が訊いてきた。

確か、『物質創造(中)』とか『毒生成』とかだったよな?


「はい。貰いましたね」

「……この世界の歴史に、そんな現象が起こったヤツァいねえ。つまりは、『世界の理』までもがオメーを特別視しはじめたってことだ。これからもがんばりな!」


その一言を最後にして、ヘルメイス様は俺に手を振った。

次の瞬間、魔力切れで気絶したときと同じような感覚が、俺の意識を襲った。


次回 閑話 『メンバープロフィールを書け』って手紙に指示が。(ユイナ視点)

【ガチでプロフィールや容姿が書いてあるから、是非チェックしてください!】

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