【11万PV,1240F,★170,♡2450】勇者にフラれた最強美少女の『ざまあ』を手伝ったら、急にスローライフが始まりました~俺でいいならお好きなだけ隣にどうぞ~
Episode031 VS貴族、そして。
Episode031 VS貴族、そして。
俺は今、貴族と対峙している。
ジェルトを危険な目に合わせようとした張本人である貴族のヒゲオヤジことヘルマンはレイピア使いで、攻撃速度では俺の方が劣る。
とりあえず受けから入ることにした俺は、ヘルマンに。
「どうした? ヒゲヅラの通りの肉体年齢なのか?」
「ハッ、見え透いた挑発ですな。残念ながら、私の肉体年齢は30歳なのでね」
そう言うと、ヘルマンは俺にレイピアの先端の照準を合わせた。
俺はまだ、レイピアで使われる技がどんなモノなのか知らない。
少なくとも、日本で見てきた作品の中で出てきた動きに似ている技も存在するかもしれないが、だからと言って対抗できるかどうか……。
「それでは、挑発に乗らさせていただきます。フンッ!」
ヘルマンは声を発し、その痩躯のどこにそんな力があるんだとツッコみたくなるレベルの突進をかましてきたんだが……。
軽く見積もっても、全然ユイナより速い!
別に、エリアの広さとかのおかげで3秒は余裕があるから……って!
「『空気壁(中)』!」
想定していた以上のタイムでゼロ距離まで持ち込まれた俺は、慌てて『空気壁(中)』を発動させ、一撃目を防ぐ。
そして、分かってはいたのだが、たった一撃で発動させた空気の壁は壊れた。
まあ、雨避け用に習得しただけだったから、防御面は期待してなかったし、今回に至っても、唐突な攻撃を一時凌ぎする為だけだから問題ない。
だが、レイピアの技っていうのは……!
目の前で、自分でも驚く速度で愛剣【壊滅剣グランギニョル】とヘルマンのレイピアが幾度となくぶつかる。
……コレ、『剣術』をユイナから回収してなかったら死んでたな。
「ほう……。私の秘儀『〈ゾリード流レイピア術〉雷神』を防ぎきるとはな!」
いや、秘儀だったのかよ……。
最初から全力で来られるのって怖いが、もう既にこれ以上の火力が出せないって言うのなら、攻略はもう簡単だ。
……と思ったのだが。
「ちなみに、私の流派である〈ゾリード流レイピア術〉は、秘儀以外が連続技として作られておるから、これからが地獄だぞ、少年?」
そりゃ、一筋縄ではいかないモンだよな。
分かっちゃいたけど、こういうときは希望を持たさせてほしいよ……。
あと、この戦闘中、俺にできるかどうか関係なく、やらねばならないことがある。
このヒゲオヤジに、ジェルトを拉致しようとした目的を聞き出すことだ。
強者ってのは、戦い中は気分が高揚して口が軽くなるんだよね。
コイツもそういうタイプだとは限らないけど。
再びヘルマンが突進してくるのを剣で受け流しながら。
「なあ、あんたって、どうしてジェルトを拉致しようとしたんだ?」
「ふふふ……。あんなにもロリっ娘を見つけて、それも珍しい精霊ならば、誰が私物にしたいと思わずにいられるはずがないですよ」
つまり、コイツにはジェルトが精霊であることが見抜かれたということか。
でも、ジェルトは精霊だと分かる特徴――宙に浮いてるとか、翅があるとか――を全く外に出していないからには……。
それより、コイツってロリコンなのかよ。
「私もあなたと同じく、『解析』を使えますからね。私はロリっ娘を収集していますが、あの年頃の娘は精霊の可能性があるので、『解析』で調べているのですよ」
「そうか。なら、もうコッチも手を隠すだけムダってことなんだな」
やっぱり、人間にも普通に『解析』を使えるヤツはいたらしい。
互いに手札は見え透いてるってことになるんだが、〈ゾリード流レイピア術〉は魔法の類じゃない所為で、どのくらい種類があるのか分からん。
ただ、一つだけ疑問が残る。
それは、今日、俺たちがこの周辺を通るということを知られていたことだ。
思考を読み取る魔法があるなら話は別だが、そんなのを使えるなら俺の防御は既に意味を失っているはずである。
「まあ、今日あなたたちがこの周辺を通るということは、あの子に付けた盗聴魔法で全て筒抜けでしたよ。あの喋る、思考能力を持つスライムだって、今日の為に育成した自慢のスライムだったはずなんですがね」
一方的に喋り続けながら突きを放ってくる器用さは、まさに熟練者の沙汰だ。
それを受け流している俺は、まだ意外と冷静さを保てているらしい。
一撃ずつ、『剣術』による補正を受けながら避け、見事に無傷を貫いている。
日本にいた頃のテストのプレッシャーに比べたら、何てことないのかもしれない。
だが、どうしてコイツが全て話そうとしているのかが分からん。
もう訊きたかった内容としては十分なレベルで答えてくれているのだが、それで、結局この男の目的は何なんだ?
「自分で言うのも何ですが、私はロリコンなのでなあ! 100人目記念である精霊の少女を屋敷に連れ帰り、ひたすらに愛でてやるのだ!」
……そんなことで人を拉致るな。
というか、100人も被害に遭っているのに、どうして誰も気が付かないんだ?
まあ、今回使ったみたいに、森の中で攫う手段が
それこそ、世界各地でやってるんだとしたら、一層バレ難いことは明白である。
……あと、なんとなくなんだが、少しずつ防御が簡単になってきているような……。
「君、いつも耐久強いって言われないかい? もう私は腕が疲れてきたのだが。最後に腕が疲れたのなんて、それこそ4、50年前の駆け出し時代ですなあ……」
「……俺、そういうこと言われたことないし、自分を客観的に見ると、かなり忍耐力はないと思うんだが」
ヒゲオヤジが疲れたというのも、分からんワケじゃない。
俺はもう、殆ど全ての動作を『剣術』に任せっきりにしてしまっている。
これは魔力量の多いヤツの特権とも言えるだろう。
魔力量が多いと、魔法の効果――今回の場合、『剣術』の使用者アシスト率――が高くなったり、発動時間が長くなったりするとは聞いていたが、まさか全自動になるとは誰も想定するはずがない。
もしかすると、俺はこの世界で一番魔力量の多い人間かもな。
「疲れてきたってんなら、もう終わりにしていいか?」
「ちょっ!? 老人相手に容赦がないのではないか!?」
「肉体年齢も精神年齢も30歳くらいのヤツにそんなこと言われても意味ねーよ!」
俺は剣で強くレイピアを飛ばし、その勢いでヘルマンも吹っ飛ばされて壁に激突。
気を失うかと思いきや、握り拳に魔力を灯らせて立ち上がった。
どうやら柔術みたいなのも使えるらしい。
ただ、これ以上戦っても俺が勝つ未来しか見えてこないな……。
いや、別に俺ツエーって思考じゃないんだが。
……もう、どうにかしちゃっていいかな?
「わ、私を殺せるなら殺してみせるのだ! 私を殺せば、どんな刑罰が降りかかってくるのか、震えて待つ未来しかなくなってしまうぞ!」
「………それって、魔物に殺されたように見せかければ十分だよな?」
俺は無慈悲にそう言うと、手の中に毒を発生させる。
邪精霊を討伐した際に、『討伐ボーナス』と称して入手した魔法『毒生成』である。
ちなみに、そのボーナス何たらの話を皆にしたのだが、普通はそんな方法で魔法は手に入ることはないらしい。
……コレって、主人公属性の風がいい方向に吹いたからなんだろうか。
それは置いといて、俺はじりじりとヘルマンに近づく。
「それじゃ、今から口に毒をぶち込む」
「なっ!? そんなことをしては……」
ヒゲオヤジが何か言い終わるのを待つのももどかしく、俺はヘルマンの口の中に毒を飛ばして、それが口に入ったのを確認する。
吐き出すそうとするも、喉へと直接ぶち込むイメージで入れたので抵抗は不可能だ。
そして、ロリコン貴族は地に伏した。
「……ふう、やっと終わったー!」
気が付けばそう叫んでいた俺は、周りのスライムを一瞬で焼き殺し、振り返る。
そこには、顔面蒼白になったユイナとミュストが。
「あ、あの……。その人、殺しちゃったんですか?」
「いや、ただ麻痺して気絶するくらいの毒だから、そんなに問題ない……はず。脅しておいた方が効きやすいかと思って。とりあえず、近くの街にでも運んでおくか」
俺のその言葉に、2人とも安堵の顔色を見せた。
この一件で俺が逮捕されることを心配してくれていたのだろう。
……今度からは、できるだけ変な要素で心配させないようにしよう。
そんなことを思いながら、玉座の横に縛られているジェルトに駆け寄ると。
「お兄ちゃん! 助けて!」
……この声は、ここにいる誰のモノでもない。
だが、確かにどこかからくぐもった声が聞こえてくる。
かと言って、敵対反応はもう室内に残っていない。
じゃあ、この声は一体……!?
「左向いて! 助けて!」
その声……とはまた別の声に促されるままに、俺は左を向く。
……あのロリコンは、死んでいても死んでいなくても、死刑になるだろう。
そう確信しながら、俺は玉座の左奥に隠されていた大きい木箱に近づく。
まさかあと2人も拉致しているなんて思いやしなかったが、ヘルマンがこの箱の中のロリっ娘に関して話をしなかったのは、ジェルトが手に入って忘れたからだろうか。
いずれにせよ、そこで伏しているヒゲオヤジには、早く裁かれてほしいものである。
俺は1辺2mの木箱の蓋を苦労して開け、よじ登って中を覗いてみると。
「ありがとう! お兄ちゃん!」
助けられたのだと理解し、嬉し泣きをしながら笑う、12歳くらいのウサミミの少女が2人いた。
次回 Episode032 はじめてのけもみみ
※マルヴェやコトネの場合は、角があるだけで耳は人間と変わらなので、ケモミミではないです。
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