Episode028 いざ、天体観測へ!(そして、ココハドコ? (◦口◦))

日も暮れてきた頃、居間にはグッタリそした様子のカカリとカミナスがいた。

話を聞くに、カカリが見つけたおすすめスポットの方向の通りにカミナスは進んで空中の調査をしようとしていたらしいのだが、……本人がそう言っていたように、カカリは方向音痴だったんで、その場所に辿り着くまでに時間がかかったとのこと。

昼頃には探し始めていたのに、もう夕方の5時を過ぎている。

……苦労掛けたな……。


「2人ともありがとな。俺も少しは気に掛けて『思念通達』で様子を訊くとかしとけばよかったか……。四方八方行ってたし、嫌だったろ?」

「いえ! そんなことないです! カミタンはご主人様の役に立てるなら、たとえ死ぬことになっても後悔はないと思いますから」

「わ、私だって、別にあなたに命令権を使われたからやっただけなんだけどね? それでどうして、あなたがそんなこと言わなきゃいけないのよ?」


……なんか凄く申し訳ないんだが。

俺たちも一応は必要な買い物をしてきているとは言え、どうしても罪悪感がある。

どうしようもないし、今日の射的の景品から選ばせるか。

俺は後ろに引いてきていた車輪付きの木製の籠を差し出すと。


「なあ、お礼ってことで、この中から好きなものを持って行っていいぞ」

「え? 別に、ご主人様の要望に応えたことに、お礼なんていらないですよー。それなら、カミタンは頭を撫でてほしいです!」


……まあ、それはそれでアリか。

籠の中のものを持って行かない代わりに俺が頭を撫でるってことなんだし。

俺は手を伸ばし、カミナスの頭を優しく撫でる。

自分で言っておいて本当に撫でてもらったら顔を真っ赤にするカミナスは、俺を見て優しく微笑んだのだが、……やっぱり上目遣いって強力だな!

ちょっと揺らぎかけたぞ。まだ誰がいいとかハッキリ決めたワケじゃないんだけど。

……あと、必要以上にカミナスを撫でるのは、実はあまりしたくない。

俺だって撫でれらることなら何度でも際限なく撫でてやりたい……とは思うのだが、もし角にあたる部分に触れてしまうと、この世界のドラゴンは本格的な主従関係が触れた人との間で成立してしまうらしい。

今はただカミナスが俺のことをご主人様呼ばわりしているだけだが、もし本当に角に触れてしまえば、俺はカミナスに永遠に付きまとわれることになる。

別に、美少女とずっといられるなんて状況が嫌なのではなく、そうすることで発生するカミナスの行動制限が嫌ってことなんだけど。


「……ん? どうした、カカリ?」


俺がカミナスを撫でるのを止め、未だに何にしようか悩んでいるらしいカカリに目を向けると。

……大人っぽい見た目に相反して、カカリはある一つの景品を眺めていた。

そう、パンダ……みたいな動物のぬいぐるみである。

隣にある犬のぬいぐるみと、どっちにするかで悩んでいるらしい。

ただ、本人はそれは自分のイメージに合うのかとでも言うかのように首を振った。

で、近くにあった香水か何かの瓶を手に取る。

……世話が焼けるなあ……。


「ねえ、アヅマ。私はコレを……」

「ちょっと待つんだ。俺は『解析』でウソとかホントとかって分かるんだよ」

「……何のことかしら?」


……ちなみに、今回のことに関しては俺の見立てが正しかったらしい。

確信がなかった俺が実際に『解析』を使うと、その言葉にはウソ判定が出たからだ。

悪魔って寿命は人間の比にならないけど、そうやって自分を抑えてられるほど長くないと俺は思うんだが。

それに、カカリやマルヴェは牢番の仕事の所為で500年は無駄にしてるんだし。

俺はパンダ(っぽい何か)のぬいぐるみと犬のぬいぐるみを拾い上げると。


「……ほら、コレがホントは欲しかったんじゃないのか? 俺は、できれば我慢しないで生きていたいタイプなんでね。逆に、誰かが我慢してるのを見ると、つい我慢を辞めさせたくなるんだわ」

「あ、アヅマったら……」


呆れ半分驚き半分といった様子で、カカリは俺の差し出したぬいぐるみを受け取る。

……と同時に、ぬいぐるみを椅子のところに置くと。

急に俺に抱き着いてきた!?

別に俺だって、そういう展開になるのには不満はないのだが、いい加減、ラブコメ展

開は勘弁してほしいのだ……。

とか思ってユイナの方を向いたが、彼女の中でも何かしらの心境変化はあったのか、ただ軽く微笑んでいるだけだった。

そこに普段のこういうときみたいな殺気は含まれていない。

それで安心した俺は、カカリに抱き着かれながら。


「……ワケが分からないよ」

「だって、我慢させたくないんでしょう?」


……俺はあくまでカッコつけてそう言っただけだったんだが。

できれば我慢しないで生きていたいってのは本当だけど、後者については本当にそうとは言えない。全く言えない。

だって、そんなこと言ったら、極端な反論は幾らでも出てくるんだよなあ……。

まあ、それは置いといて。


「……ユイナ、今日は怒らないんだな」

「はい。別に、まだアヅマくんが私を選んだワケじゃないのに、怒る権利はないと気が付きましたから」


……それはそれで、逆に怒ってほしくなるな。

なんだろう。俺はかまってちゃんじゃないんだが、そうなるのは慣れか?

まあいいや。怒られないに越したことはないんだし。



翌日の朝。

カミナスの調査によると、今日行くことになっている場所であるアベリタ高原の空には何の問題もないそうだ。

雲る予報もないし、カミナスの背に乗っていくことさえできれば1時間くらいで行けるとのこと。

どうせなら俺の『地図移動』を使えばよくないかという話も出たのだが、あまりに距離が遠かった所為で魔法の適応範囲外だったからカミナス頼りになったのだが。

で、どうしてこんな早朝から出向くことになったのかというと。

……一応「楽しみだから」ということにしてあるが、俺の巻き込まれ体質というか、そんな感じのヤツで何かしら起こるのは分かっているからだ。


「さて、それじゃあ出発するか」


荷物を全て持って全員が乗ると、カミナスが飛んだ。

そんなことしたら俺たちが大丈夫じゃないはずなのだが、ジェルトの使う結界でそうならないようにした。

だから、全員何も気にすることなく普通に座っている。

そのまま全員で――カミナスもテレパシーっぽいので入ってきて――喋りながら進むこと、だいたい30分経った頃だっただろうか。


「……何ですか? あの、少しずつ見えてくる渦巻みたいなのは……」


最初に異常に気が付いたのは、ユイナだった。

俺たちはそれをただのデカイ木……それこそ、世界樹の親戚みたいなモンだろと思って、避けるだけだと思っていたのだが。

少しして、カミナスが叫んだ。


「や、ヤバイです! あれは竜巻というか……、『爆風竜巻』です!」


……それって、魔法だよな?

どうしてこんなところでそんな魔法がと思うが、俺の魔法でどうにか……。

と考えて『終焉之業火』を使ってみたところ、ボフッと音を立て、搔き消された。


「ヤバイって! 俺の魔法が効かないならもう対抗策が……!」

「いえ、待ってください! それなら私がやります!」


俺の魔法が通用しないことが分かると、ユイナが前に出た。

そして、剣を横にして掲げ、詠唱を始める。

やがて青く光った剣を確認し、ユイナがジェルトに言う。


「ジェルトさん! 一瞬だけ結界が壊れますので、すぐに維持してください!」

「うん、分かった」


そう言ったのと同時に、ユイナが剣を振る。


「『魔力爆散』!」


この『魔力爆散』という魔法には、魔法を破壊する力でも込められていたのだろう。

見事に、ユイナの魔法で爆風竜巻は破壊された。

……そして、本当に魔力が爆散した。


「「「うわあああ――――!!」」」


全員でそれぞれに絶叫しながら、俺たちはどこかに落ちた。

カミナスが体勢をどうにか戻さなかったら、カミナスだけでは済まず、全員死んでいたかもしれない。

……とりあえず、ココハドコ?


次回 Episode029 よし、さっさと脱出しよう。

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