【11万PV,1240F,★170,♡2450】勇者にフラれた最強美少女の『ざまあ』を手伝ったら、急にスローライフが始まりました～俺でいいならお好きなだけ隣にどうぞ～

Episode022 大規模クエスト、９人で受けます。

俺とユイナが出会ってから、今日で２週間になる。

数日前に５人増えて以降は誰も俺たちの家もとい屋敷を訪れる者はいないが、ドラゴンや悪魔や天使がいることが既に広まっているってことなのかね。

いや、カカリやマルヴェ、コトネは角や尻尾や翼を隠すように言ってあるし、少なくともカミナスだけが脅威と見られているんだろうか。

いずれにしても、俺たちが死人必須と考えられた邪精霊の討伐を成したことも関係して誰も来なくなったんだろうか。

いや、俺たちのところに来た依頼人が悉（ことごと）く前にいた場所から姿を消したってことでちょっとした騒ぎになっているのかもしれない。

全員が故意でここにいるだけなんだが。

それはともかく、今日は運動がてらにクエストを受けようという話になり、今は冒険者ギルドで良さそうなクエストを探している。

俺も魔法を使わない戦いを体験してみたかったので、昨日に武器屋で――『解析』で武器のアレコレはしっかりと調べて――一番性能のいい剣を買った。

金があると、好きなように気ままに物が買えるからいいよね。

「この『人型邪蛙の殲滅』というのはどうですか？ 私の突き攻撃が役に立つと思いますよ」

「それより、カミタンは『幻想蝶の討伐』がいいと思います！ 幻想蝶がドロップする翅はキレイな洋服にしてもらうことができると聞いたことがありますし、毒霧にさえ気を付ければ問題ないはずです！」

……今は６月上旬で、そろそろ梅雨に入るくらいだろうか。

夏になると多くの強い魔物が活発になるからか、この時期はまだ弱い部類の魔物が活発になっている頃らしい。

しかも、ソイツ等が餌になって強い魔物が更に強くなったり、強い魔物に弱い魔物を喰らって餓死を回避させない為にも討伐は必要とかで、報酬はかなりのモノだ。

梅雨に納屋で寝泊まりしたくない冒険者たちからしたら、有り難い話である。

俺とて数日前に精霊皇帝がドロップしたものを売り払って金は有り余っているが、クエストで金が貰えるならば貰っておかねば損だ。

だが、どうせならちょっと面白味のある報酬のクエストはないものか。

『幻想蝶の討伐』ってヤツをクリアすれば、そこでドロップした翅を使った服を作ってもらえるらしいけど、俺はまだ毒耐性の魔法は持っていない。

それこそ、普段の魔法による殲滅になってしまう。

何かいいクエストがあればいいんだけどな……。

「ねえ、アヅマ。この『宝石人形の討伐』っていうのは何かしら？ 『鉱山の奥から出現しました。既に10人を超える鉱山作業員が死んでます。報酬は宝石人形からドロップした宝石全部。知り合いの加工職人を紹介します。追伸：できれば30人以上で挑んでください』……ですって」

隣で俯瞰していたカカリが、掲示板の右端に貼ってあった紙を持ってきて言う。

『宝石人形』って何なのか知らないが、岩石でできた人形と言ったらゴーレムくらいしか思い当たらないが、本当にゴーレムだったりするんだろうか。

作品ごとに強さのカテゴリーには違いがあるけど、強いヤツはマジで強いんだよね。

死人が出ていたり、大規模で挑めって書いてあったりするあたり、コイツは強い部類のゴーレムと見て間違いないはず。

「『宝石人形』ですか？ よく伝承の中には出てくるんですが、現実に出ることは殆どないとされているレアなモンスターですね」

……そりゃ、強いし宝石をドロップするゴーレムなんて、簡単に出現しないか。

その紙を俺も見てみると、既に21個の『死んだ挑戦者の数スタンプ』がある。

どうせ『７割の戦力でもヨユー』とか言ったヤツ等が返り討ちに遭ったのだろう。

「……コレ、俺たちが敵う相手なのか？」

「何言ってるんですか！ 今回は体を動かすことが目的ですが、場合によってはアヅマくんの魔法が頼りです！」

……ユイナが俺の魔法の威力に依存しているんじゃないのか心配になるな。

確かに今までは普通に一撃で殺すこともできたのだが、俺の魔法が宝石の体のゴーレムをどうにかできると思えない。

それに、倒せたとしても宝石が無かったら嫌だし。

……いや、よく考えれば、俺たちが受けないっていう話はないか。

元勇者の右腕もドラゴンもいて、これでどうやって物理が効かないなんてことが起こるんだろうかと逆に不思議になる。

「……それじゃ、頼りにしてるぞ。俺も戦えるなら戦うけどな」

そう言いながら、俺はユイナの頭を撫でた。

急に頭を撫でられてビックリしたみたいだが、このくらい必要なのである。

無駄に人の体に触るのは良くないとは言われているのは当然であるものの、ナデポとニコポは俺みたいなチートの特権じゃないだろうか。

「それじゃあ、今日のクエストは『宝石人形の討伐』だ！」

＊

……ということで、俺たちはその宝石人形の出現する鉱山まで来ている。

まだソイツの姿が見えないが、奇襲してくるとかはやめてほしい。

宝石人形についてだが、どうしてこんな鉱山でそんな魔物が発生したのかはともかく、どうせ開発された鉱山にいた土精霊の恨みとかから発生したんだと俺は思う。

ということで、精霊本人に訊いてみることにした。

「なあ、ジェルト。今回の件って精霊が関わってるのか？」

「うーん……。恨みの気配はあるけど、精霊じゃないかも……」

……ジェルトがそう言うってことは、精霊の仕業じゃないのか。

ただ、精霊じゃない誰かの恨みっていうのはどういうことなんだろう。

昔に鉱山の毒の所為や過労で死んだ人の恨みから発生するって考えることもできるが、ユイナ曰く『人間と魔物の魂は性質が違う』とのことなので、九割九分で有り得ないと考えた方がよさそうだ。

とか思っていると。

『……オ……ノ、レ……。ユ……ル、サ……ン……』

……なんというか、そういう感じで登場するんなら『うーらーめーしーやー……』とか言いながら出現してほしかったように思う。

いや、そんな登場のを許されるのは美少女の幽霊だけに限られるモンだ。

余裕ぶったことを考えながら、俺たちは遂に現れた宝石人形と対峙した。

次回　Episode023　VS宝石人形、そして明かされる恐怖。