第3話
二転、三転と、目まぐるしく環境が変化したが今は冒険者ギルドに厄介になっている。
ステータス盤というアイテムに手を翳すと、何かが体から抜き取られるような感覚に陥る。
受付嬢ことセレアさんの説明によると、魔力を抜き取られたのだとか。
それで自分のジョブやら、ステータスの詳細を確認出来るみたい。
アタシがなれるジョブを計測してくれるそうだ。
これは、持っているスキルの確認—―つまり話の裏取りと、明日の戦いにはアタシも参加しなくてはならないので出来るだけまともなジョブに転職しておこうとのことだ。
本来は10ゴルド取られるのだが、ギルド専属
—――ジョブ転職可能一覧—――
・巫女見習い(New)
・斥候(New)
・投擲師(New)
—――詳細ステータス―――
ララ……現在のジョブ:村人
レベル…1/10
状態;戦闘奴隷
力:10
魔力;5
耐久:2
敏捷:15
器用;10
運:7
—―――固有魔法—―――
・未発現
—―――スキル一覧—―――
《穴掘り》
《逃げ足》
《投擲》
《軟体》
—―――――――――――――
異世界ファンやジー感溢れるアイテムに少しだけ興奮する。
勿論、臆面には出さないけど。
ステータス盤をタップすると、詳細が出てくる。
例えば、〈力〉をタップすると―――。
物理攻撃力、筋肉の質の底上げに関係する。
打撃・斬撃武器等の攻撃力を高める。
と出てくる。
何となく想像できるモノは置いておく。
〈器用〉を調べる。
モノ作りや装備アイテムを使いこなす事に関係する。
打撃・斬撃・投擲武器、弓等の近距離・遠距離攻撃の技術習熟速度を上げる。
錬金だとか鍛冶とかに〈器用〉が関係するのか。
後は要は命中みたいなものか?
分かり難そうで分かり易い説明助かる。
後は、〈魔力〉と〈耐久〉ね。〈敏捷〉はいいや。
まずは、〈魔力〉ぽちっと―――。
魔力攻撃・防御力に関係する。
体内に保有している最大魔力量が魔法防御力になる。魔力を使用すれば魔防は下がる。ただし魔力が減っても攻撃力は落ちない。
鍛冶・錬金作成に魔力が必要で、質を高めることが出来る。
攻撃についてはね、うん。そもそも発現する魔法によるから。
魔法防御力にも依存するのか。
魔力量が多くても魔力を使い切ってしまえば、魔力抵抗力を失うって…魔防に関しては魔法さえ使わなければ……ってことね。身体が魔力に対しての抵抗力を上げてくれるってことかな?
〈魔力〉ステータスを伸ばすには、今は鍛冶と錬金をしないといけないと。どっちも今は無理だね。
〈耐久〉はそしたら、ただの物理防御系の事しか書かれてないだろうし、見るの止めるか。
うーん、じゃあ後はスキルだけど、〈軟体〉でも見ておくか。
〈軟体〉……柔軟な身体になる。ケガがしにくくなる。
この怪我がしにくくなるって捻挫とか腰痛とかかね?
まあ、もっていて損はないな。
まあ、大体のことは分かったか。
それよりもなれるジョブが三つもある。
村人1レベルの癖に。
我ながら生意気だな。
・巫女見習い
ジョブ固有スキル…《治癒》が手に入る。
魔力が良く育つ。
《治癒》をタップ……肉体の損傷を癒す魔法スキル。魔力に依存して効果が変動する。
なんと……これがあれば回復出来るのか。
病気に効くか分からないけど、これがあれば母ちゃんの事をすこしでも治せるかもしれない?
アタシがそう思って、受付嬢のセレアに聞く。
これは病気にも聞くのかと。
「固有魔法で発言する回復魔法なら病気や状態異常にも効くけど、これは怪我のみに効くスキルよ。」
なるほど。魔法みたいだけどスキルなのね。魔法って言うかステータスの魔力に依存するスキルか……、面倒くさい。
てか、詳細にも魔法スキルって書いてあるな。
少しだけ悄然としてしまう。
上げて落とされた。
・次いで斥候
ジョブ固有スキル…《索敵》
器用・敏捷が良く上がる。
何となくわかってた。
《索敵》……敵を発見しやすくなる。
これだとステータスが二つも良く上がるみたい。
《索敵》スキル自体はまあまあって感じ。
豚鬼との戦い、生き残るならこれだろう。
いや巫女もありなの?
投擲師は見る必要ある?
いや一応見とこうか。
・最後の投擲師
ジョブ固有スキル…《乾坤一擲》
力と器用が良く育つ。
《乾坤一擲》……投擲攻撃が十倍の威力になる。
ええええ。思いのほかすごい。
舐めてました。
十倍?石でも結構破壊力が望めるって事?
一度の戦闘で一回までなら使えるのか……。
一撃必殺技はあって損はない。
窮地を救ってくれるスキルである。
どれを選ぶのが正解か、ベターな答えが知りたい。
「おねーさん、どれがいいの?」
滅茶苦茶真剣な顔でアタシは聞いたと思う。
なのに受付嬢は少し笑いを堪えるようにしている。
失礼な奴だ。
お姉さんが落ち着いたので再度質問する。
すると、答えてくれた。
「えっと、パーティーを組むのが前提ならどれも正解じゃないかな?でも強いて言うなら巫女見習いは止めた方がいいかも。レベルが上がるまで魔力が乏しいし、後衛とはいえ、被弾する確率が高いし今のララちゃんじゃ即死でしょう?だから、おすすめは斥候か投擲師ね。斥候は敏捷がよく育つから逃げ足を鍛えられるし、投擲師は高火力攻撃に期待出来ますからね。」
確かに。アタシは神妙に頷く。
「因みにですけど、レベルってどうやって上がるんですか?」
「レベルは魔物や人間……生き物全てだけど、それを殺めたり傷つけて貢献する事でレベルが上がるわね。」
今までに何度か《投擲》してきたけど、有効打にはなってなかったってことか?
だから村人1レベルなのか?
「あの、村人1レベルなんですけど、これを仮に10レベルにしたら他のジョブに転職した時どうなるんですか?」
「村人は10レベルまで上がると、そのステータスが引き継がれるわね。でもジョブを変えるとそのジョブレベルに合わせて1に下がるわ。仮に村人10レベルから剣士(New)に転職すると剣士レベル1になるけど、剣士レベル1から村人に転職し直しても村人レベルは上げた状態の10のままよ。因みに基本的に手に入れたスキルはジョブを変更してもそのまま引き継がれるわ。ただし、ジョブ固有スキルは、そのジョブを極めないと―――レベルを最大にまで上げないと引き継げないから気を付けてね。」
なんと。
ジョブ固有スキルがレベルMaxまでいけば、他のジョブに切り替えても使えるだと……。
凄いことを訊いてしまったよ。
転職繰り返しまくったらバケモンじゃんね?
アタシの最強伝説が始まる?
初めて、希望が出てきた。
そうと決まったら……答えは一つ。
「アタシ、投擲師になります。」
—――詳細ステータス―――
ララ……現在のジョブ:投擲師
レベル…1/20
状態;戦闘奴隷
力:10
魔力;5
耐久:2
敏捷:15
器用;10
運:7
—―――固有魔法—―――
・未発現
—―――スキル一覧—―――
《穴掘り》
《逃げ足》
《投擲》
《軟体》
ジョブ固有スキル…《乾坤一擲》
—―――――――――――――
投擲師になりました。
これで豚鬼蹴散らしてやる。
斥候をしていても有効打を与えられないなら、レベルが上がらないと結論付けた。
攻撃できる武器もないのだ。
あるのは路傍の石ころだけ。
それでは今のアタシには
攻撃が与えられるようになれば斥候に巫女見習いになればいいよね。
一夜明けて、ドリトル森の南域。
総勢500名近くの
身長が低すぎて見えないが、傭兵ギルド、冒険者ギルド、騎士団、それぞれの指揮官がいるらしい。
各声が聴こえてくる。
それぞれが鼓舞しているっぽい?
「諸君らよ、豚鬼が発見された!数は50を超えるそうだ!」
敵の数に恐れおののいている。
招集を受けて集まっただけで、詳しく知らされてない情報弱者もいるらしい。
「だが、恐れることはない!集まったのは500人以上だ!一人で戦う訳ではない!10人で囲んで一匹を駆逐せよ!我等なら勝てる!!」
大部分の人間は顔を強張らせているが、やる気みたいだ。
戦意を失っている者は居なさそうだ。
辺りを見渡していると、1日限定の団員だったバンダナイワシ達がいる。
向こうは此方に気づいてないようだ。
あいつ等は性根がやばい。出来るだけ戦闘が始まったら、近くにいないようにしないと。
大所帯でのドリトル森林への侵攻。
勿論、斥候のように静かに他の魔物を刺激しないよう慎重に……なんて配慮は行われなかった。
冒険者と傭兵が左翼・右翼に布陣し、後方に騎士が陣取るらしい。
騎士が最高戦力なのかもしれない。
森に入って、すぐ。
月狼の群れが襲ってきた。
縄張り意識の高い狼種らしく、好戦的だ。
3匹から5匹の群れで急襲してくる。
鋭い牙と爪で夜襲を仕掛けてくる恐ろしい魔物だが、今は早朝。既に陽は出ている。
青々とした木々の中、黒い塊が動くと目立つ。
これが迷彩色なら見過ごすだろうけど。
何てったって真黒ですから。
危なげなく冒険者達が倒してくれる。
傭兵側に現れたのは傭兵側の人間が始末している。
行軍が遅く接敵する事を見越して、《乾坤一擲》で攻撃!
手頃な石ころの攻撃は月狼の牙に当たったようでへし折れ怯んだ。アタシより戦闘慣れした集団がその隙を見逃すはずもなく。
めった刺しにされた冒険者達によって始末された。
「あーもったいねえ。」
なんて声も聞こえてくるが、今日は素材狩りでも何でもない。
死んだ月狼の血で他の魔物が寄ってこないとも限らないので、倒した魔物はアイテムボックスに収納されていく。
冒険者ギルドは冒険者という
マスタリーとはレベルを最大にまで上げ切っているジョブの状態を指す。
冒険者はレベル50が
冒険者になるために、探索者になったりと順序があるそうだ。
ジョブの発現方法は分かっている。
探索者は迷宮に足を踏み入れると取得できる。
探索者ギルドというのも存在するが、此方は冒険者に成らなくてもよいし目指さなくて良い。探索者のジョブで得られる《アイテムボックス》が手に入れば良いと思っている者が入る。または初心者入門としても存在している。
因みに冒険者に成ると、《
ただ魔力に依存するスキルみたいなので、魔力をある程度伸ばしていないと有効的に使えないそうだ。
地域密着型の人間には冒険者のスキルはあまり魅力ではないらしい。大体の店や家には魔力探知機が設置されているので、これを悪用しての盗賊行為も出来ないみたいだしね。
これで店に入ると店の魔力探知機に魔力残滓が記録されるらしい。魔力は指紋のようなもので、皆違うらしい。
それを読み取ると、何処かに登録した事のある魔力……それこそ一度でもステータス盤を使ったことがあれば、照合されて犯罪がバレるというわけ。
勿論冒険者にまでなったならステータス盤を使ったことがないわけがない。だから、この手で悪事を働くとすぐにバレるらしい。因みに他人の物を盗むと、その時点で勝手にジョブが盗賊となってしまうらしいので、ジョブが盗賊の状態でステータス盤を使って転職するのも正規のルートでは難しいらしい。
悪いことはしちゃダメってことだね。
因みに所有者が死んだアイテムはその時点で所有権がはく奪されてしまうので、殺してから奪うという方法ならアイテムを自分の物に出来るらしい。
アイテムが所有者が意図して譲渡した場合も盗賊落ちせずにアイテムを手に入れることが出来る。
だから、売買取引や報酬を貰っても盗賊落ちすることがないのはこれが理由らしい。
らしいってのはそれが神に決められたルールなんだとかと教会が言っているから。
それが他人の所有物かどうかは何故か触れば分かるらしい。
これもふしぎだよね。
話はだいぶ逸れたが、《乾坤一擲》によってレベルが上がりませんでした。
初めての魔物討伐で経験値らしきものが流れ込んでくるのは実感したのだが、それだけだ。
レベルが上がると、上がったことがはっきりと分かるらしい。
でもまだ1レベルも上がっていないので、それは分からない。
小動物なんかにも村人時代に投石しているはずなのだが、レベルを上げるのはレベルの高い、魔物や魔獣、人間なんだそうだ。
もしかしたら小動物の兎とかは微々たる経験値しかもっていないのかも。
取り敢えず、必殺技は一時間は使えない。
斥候だと迂回したりするので二時間は掛かった――ので深域へ辿り着くのは最短最速でも一時間は掛かる。
アタシは手頃な石ころを拾っておく。
《乾坤一擲》スキルが使えなくとも、《投擲》は使える。
目に当たれば、怯ませることくらい出来るだろう。
魔物の目に当てるとか至難の業だけど。
まぐれでも無理。
だって動くんだもん。
石ころとアタシが当ててへし折った牙も回収しておく。
これは普通にダメージが期待できそうだった。
冒険者は折れた牙には見向きもしない。
恐らく素材価値はなくなったのだろう。
アタシが拾っていても誰も気にしてなかったからね。
寧ろ、牙が折れてない、毛皮の損傷の少ない月狼を見て、物欲しそうな解体したそうにしていた。
それから幾度も戦闘があったが、その都度撃退に成功している。多少の怪我人はいるが、戦力外になる程の致命的な負傷者はいなかった。
アタシは《投擲》スキルで石ころを当てたが、やはり経験値を得た!という感覚は得られなかったので有効打は与えられていないとみて間違いない。
レベルも低ければ、力も器用も足りないという事だ。
スキルがあっても活かせるだけのステータスがないと……。
無事に中域と深域の境程の場所で一旦休憩となった。
ここが最初で最後の休憩地点らしい。
あまり騒いで出て来られても困るので、ひっそりと
十分程、休憩を取っていると――――、
「敵襲—―――!!!」
斥候と思しき人影が、深域方向からやってきた。
斥候の後方からは、雄叫びと複数の足音が聞こえてくる。
『—―――bumoxooooooooooooo!!!』
聞き覚えのある雄叫びだ。
豚鬼だとすぐに分かった。
大団円で襲ってきたようだ。
幸い《乾坤一擲》はすぐに使える状況だ。
スキルを使った相手は是が非でも倒して貰わねばならない。
だから、最初は《投擲》攻撃である。
ここぞというタイミングで《乾坤一擲》を炸裂させる。
超小粒の石礫を三つ。
左で投げる。
そうアタシはサウスポーなのだ。
前方が接敵したのを見計らって、後続に向かって投げる。
敵は頭が良い。連携を取る、だから脅威なのだ。
まあ、そのポテンシャルも脅威なのだが。
兎に角三個同時の散弾攻撃である。
最初に接敵した豚鬼達の一部は早速討ち取られたようだ。
だが、此方も後続から前線に躍り出てきた豚鬼の踏みつけや体当たり、棍棒の薙ぎ払いで冒険者、傭兵、騎士それぞれに戦死者が出始めている。
二体、三体で背中を預け合い、戦うのだ。
一体ずつ囲んでなど理想論だ。夢物語だ。
数の多い此方も森の中、木々が邪魔をする。
木々を背に戦う豚鬼もいるのだ。
地の利も活かしてくる敵。
ただ闇雲に突っ込んでくるだけではない。
三人は防御が固すぎるので、二人組を狙う。
正面に三人、計六人で取り囲んでいるのが見える。
アタシは敵が大振りの攻撃を仕掛けた瞬間—――薙ぎ払った時を狙うことにした。
冒険者と我慢比べの牽制はいやらしい攻撃を繰り出す人間に業を煮やした豚鬼の大振り――薙ぎ払いに合わせた《乾坤一擲》によって瓦解した。
振り抜いた巨体の顔面目掛けて、月狼の牙を《乾坤一擲》スキルを用いて《投擲》。
これが眼窩を突き抜けて、頭蓋にまで到達したようで、ビクンビクンと身体を震わせた。
その隙を冒険者が首筋目掛けて攻撃。
大量の血を撒き散らしながら倒れる。
仲間の死にギョッとした豚鬼が前方三人に手一杯になっている所を背にしていた味方が斃れたのだ。
冒険者達も即座に持っていた長剣を投げた。
背中にずぶりと刺さり、豚鬼は悲鳴を上げながら後ろに意識が行ってしまう。
そこを前方の三人が隙あり!と一突きずつ食らわせる。
豚鬼は最後の最期まで棍棒を振り回し、突貫して冒険者一人を圧し潰し、道連れにする。
恐ろしい執念だ。
他の冒険者も顔を青褪めているが、すぐさま他の戦闘に混ざりに行く。
恐ろしい戦いだ。
また経験値が入った全能感に襲われる。確実に強くなった感じがする。これがレベルアップだろうか。
兎に角気持ちが良い。脳が身体中の細胞が喜んでいるのが分かる。
アタシはこっそりと斃した豚鬼に近寄り、月狼の牙は引き抜いて回収しようと試みたが、深く刺さり過ぎて抜けなかった。リサイクルしたかったのに、無念。
アタシはそれから何度も執拗に一匹の豚鬼に《投擲》する。
なるべく被害を減らそうと考えた結果だ。
棍棒を投げることも考えたが、重すぎた。
〈力〉が足りてないのだろう。
アタシの攻撃を煩わしそうに払った瞬間。
これまた冒険者が一突き。
そしてすぐ後方にバックステップして退避。
距離を取っての一気に突く。
これが冒険者の森での集団攻撃のテンプレートらしい。
《投擲》による攻撃が有効打と認定されたのか、十分程の戦闘でまた経験値が入った。
全開みたいにがっつりは入ってこなかった。
でも、経験値が入ってきたのが分かった。
どうやら1レベル上がったことで、1ダメージは与えられるようになったみたいだ。
この稼ぎ方は確実に寄生だが、仕方あるまい。
正面切って戦っている勇士の皆さんが聞いたら怒るだろうから絶対に自慢はすまい。
アタシもしっかりと戦っている。
戦闘は結局一時間を優に超えた。
だから2度目の《乾坤一擲》による《投擲》で2匹目の豚鬼の頭も玉砕。
拳大の石礫が派手に決まった。
正面切って戦っていた冒険者の味方は少し驚いていたが、直ぐに他敵を倒しに向かう。
それでもまだ終わらない。
なぜか。
血の臭いに誘われて、他の魔物も寄ってきているのだ。
これが原因でまだ終わらない。
アタシは再びレベルが上がったのを実感する。
この全能感はやみつきになる。
戦闘中毒者にでもなりそうだ。
射線に味方が入らないよう立ち回って石ころを投げる。
豚鬼の身体に掠り傷が付いたのが見えた。
アタリ所が悪かったのか、うっすらと血が滲んでいる。
多分2ダメージは入るようになったのかもしれない。
絶対に倒せないが、安物のダガ―で薄皮1枚切る程度の攻撃になったのかも。
そう思うと、常に有効打を加えている味方の心強い事。
誰だ、最強伝説とか絵空事を夢想してた奴。
出て来い。
味方の死体はぱっと見、数十は超える。
恐ろしい。
残すところ十数体の豚鬼に、月狼達。
鬼蜘蛛は良くも悪しくも自身の狩場からはほとんど出てこない。モラワームは味方にも月狼や豚鬼にも狩られている。
なんて不遇な魔物。
少しだけ憐憫に思う。
と言いつつ全力で《投擲》してますけどね。
なんてったって、経験値!
魔物から掠め取る経験値なら文句は言われまい!
ぶよぶよの芋虫部分に尖った石を投石すると上手い事ぶっ刺さる。一昔前まではぽよんぽてんと跳ね返されてたのに感動。
これまた倒せているわけではないけど、ダメージを与えることが大切。
寄生と呼ばれようと生きるために意地汚く経験値を稼がせてもらいます!
戦闘から一時間四十分。
再使用までの残り時間で戦闘時間が分かる。
そこで人類側が勝利する。
豚鬼共を殲滅し、月狼も倒す。
主に冒険者達がアイテムボックスを使って魔物を回収する。
豚鬼は全て。
月狼は余力がある者が。
死体も回収された、どちらかと言うとこちらのせいで、ボックスが圧迫してそうだった。
冒険者54名、傭兵62名、騎士44名が死んだらしい。
160名の死者が出た。
遠距離攻撃役で本当に良かった。
今回は弓部隊や魔法攻撃部隊がいなかったので被害が出てしまったようだ。
それでもたった三倍の死者で済んだと指揮官のザックロール子爵は喜んでいたが。
アタシもなんだかんだ、三回は全能感を得ることが出来た。
多分、三回はレベルが上がったということ。
.尊い160名の命でアタシのレベルが3上がった。
コスト悪すぎて引く。
そりゃイワシ達はアタシを使い潰そうとするわけだよ。
使い潰して、レベルが上がれば万々歳。
次から薄皮一枚くらい強くなれるんだから。
上位のジョブに就けばもっと強くなるのかもしれないけど。
せめてどの位強くなったのか分かればいいのに。
ステータスオープン!みたいな。
《鑑定》スキルがあれば分かるらしい。
けど、持ってない。
だから分からない。
戦いは無事に終わったので、また一時間程かけて行軍して帰った。
この際、《乾坤一擲》で《投擲》して月狼の首に命中。
トドメを刺したが、レベルは上がらなかった。
魔物のレベルも分からないので、どの個体がレベルが高くて美味しい経験値なのかも不明。
そういうのもあるのだろう、兎に角今回はレベルが上がらなかった。
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