憤慨彼女

「申し訳ありませんでした」


 支配人の男が頭を下げるも鹿角さん静かに怒りを滲ませている。


「どうして部屋の予約を間違えるのですか?」


「本当に申し訳ございません」


「そちらがシステムの不良でネット予約ができないというから、私は御電話してふた部屋予約したのですよ」


「まことに申し訳ありません。こちらの不手際です」


 永遠と頭を下げる支配人と怒りが収まらない鹿角さん。


 話を聞く限り、電話で予約した部屋が受付していたスタッフさんの手違いで男女で二部屋をとるはずが、ツインの一部屋を予約されてしまったとのこと。


 どうやら電話を受けたスタッフが新人の女の子で、男女の宿泊と聞いて僕たちをカップルか夫婦と勘違いし前後の話をよく確認しないまま誤った部屋を予約してしまったとのことだった。


「もういいですよ、鹿角さん。ホテル側も不備を認めて謝ってくれて、宿泊代も無料にしてくれてもらえるわけですし、ここは抑えましょう」


「しかし、それでは今日の宿泊ができないじゃないですか」


「鹿角さん、今から他のホテルを予約とれますか? 僕はたぶんとれないと思いますよ」


「で、でも……」


 鹿角さんは困惑しながら俯いた。支配人はとりあえずこの押し問答が終わることに安心したように表情を和らげた。


「わ、私にも心の準備と言うものがですね……」


「大丈夫です。僕は近くの漫画喫茶にでも泊まりますよ。ということなので支配人さんキャリーバックはフロントで預かってくれますか?」


「もちろんでございます」


 そう言って支配人は僕のキャリーバックを丁寧に受け取りバックヤードに姿を消した。


「立花さんそれでは……」


「いいんですよ、それより余計なことで苛立って明日のプレゼンに支障が出ることの方が最悪ですから……明日は頑張りましょうね」


「立花さん……」


 僕は彼女に手を振ってエントランスを出た。


 外はまだ騒がしい。僕は背伸びをしながら国際通りに伸びる道をスキップしながら歩いていく。

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