乳輪の大きさと優しさは比例する。

年下の先輩

 出張と言ってもその内容は学術研究会のプレゼンテーション発表への参加だった。それも弊社は全国各地に支社や支局、グループ会社があり、毎年、経費の削減や売上・粗利アップの提案、コストパフォーマンスの上昇などに関連する案をチームで企画し地方予選を行う。その予選を勝ち抜いたものがリモートで全国予選に選出され、上位十チームが本選に出場する権利を得るのだ。


 ここまで大層なことのように言っているが、その実態はただの恒例行事に過ぎず、うっかり勝ってしまうと発表準備や打ち合わせが入り、通常業務に差し支えてしまうので中堅以上の社員たちはろくにチームの話し合いに参加せずに毎年順番に回ってくるリーダーを任せられた社員が体裁よく企画し怒られない程度に予選落ちさせるというのがセオリーだった。


 しかし、運が良いのか悪いのか僕が入ったチームのリーダーがなんでも一生懸命頑張る人で予選を連戦連勝。ついに本戦への切符を勝ち取ったのだ。


 羽田空港の第一ターミナルで待ち合わせしていた。


 きっとあの人のことだから時間ぴったりに寸分狂わずやってくることだろう。


「おはようございます。立花さん」


「おはようございます。鹿角かすみさん」


 僕は近づいてくる女性に挨拶をした。


「迷いませんでしたか?」


「えぇ問題なく。学生時代に卒業旅行で行ったことあるので」


「そうですか、でも今回は仕事ですから。くれぐれも羽目を外さないようにお願いしますね」


 事務的な口調で簡潔に言う彼女の言動からは、とても自分より年下とは思えなかった。


 


 

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