第6話 双子とサイコパス

 今日もお仕事っす(´・ω・`)

 週末働いてる皆様、お仕事頑張ってね。

 そして週末お休みの人、ゆっくりしてね。

 ワシも早く帰りたいっす。まだ仕事行ってないけど。

 ということで、今日もテキトウにお話は続きます。


 ***


 ルールって大切よね。

 スポーツでも遊びでも。

 生きていく上での法律もそうよね。

 約束って大切なのよ。

 ある意味、私の前世では約束を大切にしない人達に囲まれていた。

 だから、私もルールを守らない相手には、同じ様にルールを守らず対処した。


 天魔くんは、その約束、ルールそのものの存在だと思うの。

 約束を取り決めたら、それが絶対。

 破ったら命を失う、魂が死ぬ、喰われるわけだ。

 これってすごい事よね。

 約束を取り付ければ、その範囲内なら力を得られるんですもの。

 もちろんこの取引は、重大な落とし穴もあるんだけどね。

 約束が公平かどうか、どんな裏があるかなんて、人間には分からないんですもの。

 約束さえ守っていれば、その他の匙加減をどうにでもできるのは、お互い様なのだ。


「それでね、ちょっと考えたんだけど。」


『うん』


「天魔くんへできるお願いってさ」


『うん』


「私の敵を倒す事だよね?」


『...』


「天魔くんから色々能力をもらっているから実感がわかないけどね。

 鑑定できちゃうし、便利能力のギフトもある。

 でもね、それ以外で、例えば美味しいご飯を出してとか。

 可愛いペットを頂戴とかいっても、叶える事は無理だろうなって。

 私がそうした願いを出したら、きっと誰かを喰わせてからになる。

 仲間にした魔人を使って、美味しいご飯を作らせる。

 可愛いペットを魔人にもってきてもらうって訳ね。

 このやり方って、一見、同じに見えるから、勘違いしちゃうわよね」


『勘違い?』


「ソノラを食べたじゃない?」


『うん』


「で、この目の前のソノラは、私の言う事を聞いてくれているわ。」

「お嬢様の犬っす( ・ิω・ิ)」

「はいはい、敬礼しなくてもいいのよ。

 けれど、私は彼女に何も与えていない。

 じゃぁ何を代償にしているのかしら。

 彼女自身の魂?

 おかしいわよね。

 私の敵をなんとかしてくれた分は、天魔くんの一食だとするわ。

 その後に、ソノラが私に良くしてくれるのは、一食じゃたりない。

 これからも増えるとしたら、それはどういう意味になるのかしら?

 まぁ簡単な話よね。

 ソノラは天魔くんの子分になった。

 つまり、これがお代ね。

 この世界に、ひとり、ひと魔かしら、仲間を増やした。

 これが天魔くんへの報酬。

 そして報酬だけど、私にも利があるようにしている。

 私が天魔くんを頼るように、そしてお願いを続けるようにね。

 いずれ、天魔くんの軍団が地上に出来上がるのかしら?」


『だとしたら、どうする?るいるいは、どうしたいかな』


「いずれ天魔くんは、私を必要としなくなる。

 その時、私も魔物にしてくれたらいいなーって思ってる」


『るいるいは、考え過ぎだよ。

 それは逆も言えるんだよ。

 るいるいは、いずれ僕っちなんか必要じゃなくなるかもしれない。

 その時、僕っちをいじめないでほしいなぁってね。

 それにね、僕っちは、長く長く契約してきた。

 小さなを利用するだけに、ここにいるんじゃないのさ。

 ヘルベルトやアシュトンの魂と契約するのはね、利用するだけじゃぁないんだよ。

 まぁちびっこのるいるいは、あまり考えなくてもいいのさ。

 信じられないだろうけど、僕っちはこう言うだけだよ。

 生きて楽しむといいのさ。

 僕っちも楽しくやるのさぁ〜だ』


 ラジャー・ω・楽しく殺るのだぁ。


「じゃぁちょっくら、食べ物漁りつつ、お子様方のところへ行きましょうか」

「今日は何処にいるのかしら、もう元気になってるんでしょう?」

「ポーションがぶ飲みさせてましたからね。ったくクソ貴族の餓鬼は、これだから」

「あれって免疫つかないのよね。また、おたふく風邪になるんじゃない?」

「そうなんすか?」

「お医者様がポーション治療をしないのは、そのせいなのよ。

 騎士とか兵士になりたい子供は、ポーション治療をさせないのよ。」

「てっきり貧乏だからだと思ってましたよ」

「まぁ貧乏も理由かもしれないけど、ルイーズたんの知識的には、そうらしいわよ」

「はぁ、なるほどねぇ。貧乏育ちの冒険者もポーション治療はしたくないとか、よくいってましたが」

「何だかね、あれ、副作用がすごいらしいの。何でそこだけリアル基準なのかしら。この世界のファンタジー設定した人に、ちょっと文句を言いたいわ」

「まぁヒーラーで天下とれないだけいいんじゃないですか?教会勢力と錬金術協会の仲の悪さで飯がうまいっすからね」

「どういうこと?」

「医者ってのは錬金術協会じゃないっすか?」

「そうなの?知らなかったわ」

薬草師お嬢の言う調剤師っすと医師と錬金術師お嬢の言う研究職は同じ錬金術協会アルケミストギルドなんすがね、回復師ヒーラーとポーション薬師は教会所属お国の教団なんす。そうするとお互いの勢力同士が張り合って、下々には安い治療ってのが恩恵として施されるって訳です」

顧客と信者カモのとりあいね。価格競争の結果、奉仕活動も活発になると」

「まぁそういう事っす」

「何だかファンタジーが生臭い感じですわ。」

「人間生きてくって大変なんすよ。まぁアタシは解脱しちゃったんで、ヒーラーに回復かけられると、逆に腐りそうですけど」

「治療はどうするの?」

「もちろん、捕食で再生っす」

「エコね」

「お嬢様、好きっす(*´ω`*)」

「何でそうなるのかしら?」































 僕っちも、るいるいが好きだよぅ〜。

 まぁ〜るいるいなら、僕っちを何れ理解できると思うよ、ふふっ。

 それにね、眷属は従うものなのさ。

 ちっちゃくて非力な君だとしてもね。

 僕っちを消滅させるような相手以外、君から僕っちを奪うことはできないんだよん。

 に従うのは、当然なんだよぅ。

 人間とは違うからね、僕っち達は、るいるいが大好きなのさぁ〜。

 そして君が言う通り、約束こそが、僕っちたちを生かすのさ〜ヽ(´ー`)ノ


 ***


「げっ、ルイーズが来た」

「来なくていいんだよぉ」


 さっそくのご挨拶である。

 中庭のガゼボで、お勉強中の双子を発見する。

 ママ上に似た天使のように美しい糞餓鬼様がいた。

 別段、糞餓鬼を可愛がる趣味はない。

 でも、嫌がらせで両手を広げて駆け寄ってみる。


「ぎゃぁ、お前、抵抗できないからって絡んでくんな」

「僕は勉強中なんだよ、あっち行けよぅ」

「お嬢様、どうか離れてください」


 乳母やは、ちょっと小柄な御婦人。

 名前は覚えていない。

 私は双子に組み付き撫で回す。

 おぅサラサラの金髪。

 将来ハゲそう。

 あら、エリィは痩せすぎてるわね。


「ご飯食べてる?」

「うるせぇブス」

「あははは〜お仕置きぃ」

「ぎゃぁ痛いぃ」


 こめかみをグリグリ。

 初めての暴力ですね、貴族の子供の間では流行ってい無さそうです。


「お嬢様、あの、あの」

「何をしている!」


 あら、護衛、騎士には見えないですね。

 フツメンのちょっと髭が汚い感じの男です。

 鎧って臭そうって思うの。

 着ているのは胸当てだけですけどね。


「子供から離れろ、このクソが」


 何でしょうか、この塵は。

 塵の癖に、私の腕を掴もうとしました。

 おかしいですね、貴族の、それも主の娘に対して、なんて無礼なんでしょう。


「あ〜ごめんなさいねぇ」

「何だ、下女風情が、痛い目にあいたくなけれぎゃぁぁ..」


 と、その男の手首を、ソノラがヒョイと掴んだ。

 掴まれた男の表情がストンと抜ける。

 まだ、殺していませんよね?


「お嬢様にお触りは駄目ですよぅ、護衛の旦那ぁ」


 そうして野太い腕をぎりぎりとひねり上げる。

 ひねり上げている方はニヤニヤと笑いながら、火の点いていない煙草を咥えていますね。女性としては終わっています。

 でもまぁ人間じゃぁありませんしね。


「おや反省して黙っちゃいましたね、お嬢様」

「どうやって黙らせたのかしらないけれど、騒ぎにならないようにしてね」

「はぁい。ちょっと旦那ぁ。あっちで魔法の練習しましょうよ。

 アタシね、今日ね解脱したんですよ。

 人間を辞めちゃいましてね。

 どうです、的になってくれると嬉しいなぁ。

 私ね、火の魔法使えそうな気が」


 と、いいつつ大きな男をズルズルと引きずっていく。

 男は屍のように顔色だけ悪くなっていますね。

 何でしょう、うちの眷属はそういう属性なんでしょうか?

 魂吸っちゃう系なんでしょうか。


「なんだ、あれ」

「怖い」


 双子、ドン引きであるが、私的には無礼な塵が消えて嬉しい限り。

 そして何で糞餓鬼を触ったかと言うと、例のステータス鑑定である。


 ◎ロデリック・マルドゥ◎


 年齢 7歳

 性別 男

 魔法 土

 ギフト 剣術

 抵抗値 ー 

 熟成度 一


 ◎エリザベス・マルドゥ◎


 年齢 7歳

 性別 女

 魔法 風

 ギフト 魔力制御

 抵抗値 ー 

 熟成度 一



 ん?

 あれ、鑑定天魔さん、何か変ですよ。

 嫌な予感がしますねぇ。

 それと熟成度は1じゃなくて、無しですかね。


『普通の子供は無いよ』


 まぁそこはカルマ値と関係する部分でしょうからね。

 気になるのは、お名前と年齢です。

 パパ上もヘルベルトの血ではないからですかね。


『だといいね』


 わぁ闇が深い。

 つまり、この双子は、完全な赤の他人ですね。

 パパ上は知っているのでしょうか。

 知っていたとしても闇が深いわぁ。


「何みてるんだよ、気持ち悪いなぁ」

「何を習っているのですか?」


 宿題の紙束に向き合うロディ。


「今日は計算の練習です、お嬢様」


 とは、乳母やさん。

 彼女は良くできた使用人ですね。

 先程の、護衛?らしいゴロツキが消えた事はスルーのようです。

 そもそも、双子の護衛はいつもクラルシェンの騎士が一人ついていたはずです。

 あのようなゴロツキ野郎は、彼女としても少し怖かったのかも知れませんね。

 そして良くできた、つまり長く使用人として働く人程、ヘルベルトの中のお話は、知らない振りなのです。

 まぁ下手にかかわると命が無くなりそうですしね。

 なので、私に対してもフラットな対応です。

 見ぬふり知らぬふりを責める人もいるでしょうけど、私的には、こういう使用人は良い使用人ですね。

 その時の主の態度をかさにきて、威張り散らすような使用人はダメですが、程々に目を瞑り、従うのはオッケーなのです。

 妙な正義心や妙な義侠心で庇われると、それも実は裏切り者の演技ではないかと疑わねばならないからです。疲れますからね。


「わぁえらいですねぇ、でも、殆ど間違ってますね」

「う、うるさぁい」

「で、エリィは何を?」


 椅子に座って睨んでくる糞餓鬼を見る。

 顔は可愛いのにねぇ。

 どうしてこんなに刺々しいのでしょうか。

 カルシュウムでしょうか、成長期ですものね。


「書き取りを先生から言われているんですけど」


 フォローする乳母やさん。

 ちょっと困ったわぁという表情。

 この糞餓鬼、乳母やにまで我儘こいてやがるな。

 そういうおバカちゃんには、お姉ちゃんはこうです。

 必殺、クソバカにした表情をして鼻で笑ってやるのですよ。


「あぁできないと、ふっ。できないんですのね。あぁそう、ふふっ」

「できるわ!」


 なら、やれよ。

 勉強できるなんて贅沢だぞ。

 ルイーズたんは、家庭教師もつけられていないんだぞ。

 まぁこのチート頭脳の私なので、読み書き計算は大丈夫なのである。

 私がインストールされた時点で、ルイーズたんの知識と統合されている。

 淑女教育は、一応9歳まで受けていたようだしね。

 その後は、独学していたみたい。

 えらいねぇルイーズたん。


 徐ろに放り出していた書き取りの紙に向かうエリィ。

 腐れ親と祖父に囲まれて、未来は真っ暗だね。

 と、少しディスりましたが、彼らを嫌う理由はありません。

 ルイーズたんの人生をもぎ取ろうとする輩は許さないって話なだけですの。

 だから、彼ら双子に対しては、生意気なガキンチョですねぇぐらいの気持ちだ。

 本当のルイーズたんは、どう思っていたのでしょう?

 少なくとも母親がいる双子を羨んでいたのでしょうか?

 真面目に勉強をし始めた双子を頬杖をつきながら眺める。

 彼らと家族になりたかったのでしょうかねぇ。

 まぁ私は欠片も思わんが。


「何で外で勉強してるの?」

「やっと治ったからね、日光浴びろって先生が」


 意外にもロディが答えます。

 なるほどね、日光、これ大事。

 ポーションで無理やり体力回復させた反動を危ぶんだのでしょう。

 本来なら、薬で症状を押さえて自然治癒が一番なのでしょうに。

 きっとアネットかパパ上のリクエストでポーション治療になったのでしょう。

 ポーションの利点は、苦痛の軽減ですからね。

 怪我の治療、病の時も、苦痛の軽減が優先される時に使用しますから。

 お医者様も商売敵のポーションをリクエストされて、ちょっと文句言ったのかしら?

 まぁ常備薬としてポーションを使っちゃった後だったのかもしれません。

 もちろん、継子のルイーズたんは放置ですが。

 ちょっとどす黒い気分がふつふつとわきました。

 私も日光を浴びましょう。

 浄化しないと。

 浄化しすぎると消える?

 私はまだ、魔物じゃないのですが。

 等と、脳内オーディエンスとジョーク交わしながら、天を仰ぐ。

 良い天気ですね。

 成長期には、太陽と程よくお付き合いしないと大きくなれませんからね。

 と、ちょっと気になる事を聞いておこうかしら。

 使用人達も人数がいないし忙しそうなので、情報をとれそうな人なら誰でも良いので聞いておきたい。

 それにちょっと気になるのだ。

 何で今日はこの双子に、乳母やひとりと頭のわるそうな傭兵崩れっぽい護衛しかついていないのか。

 病気でそっちも少ない、訳が無い。


「今日、貴方達のママ上に聞いたんだけど」

「ママ上?」

「誰か新しい人が雇われるって、だから騎士のいる建物の方へは近づくなって。聞いてる?」

「知らない」


 とは、ロディ。

 少し考え込むように首を傾げた。


「オジィが言ってた事かしら」


 と、何か言いかけるエリィ。

 何でしょう、気になる。


「それにしても、さっきの屑男、騎士にはみえませんでしたわねぇ。護衛の質が下がっているのではなくて」


 と、乳母やに話題を振ったら、顔色が曇る。

 おや?

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