第3話 乙女ゲームじゃないのは確かだ

 このあたりから不穏になります。

 コメディ表記がないのは、不愉快な話が混じるからです。

 あと主人公はサイコパス系犯罪者ですので、悪魔に魂を売る前から、最低です(>ω<)ゴメンナサイ


 ***






 さて、虐待問題は、食事面に関しては一応理由が判明。

 貧しい食事内容は、病気療養メニューならぬ、料理人達も病気で潰れていたからだ。

 大人のおたふく風邪は、死亡率もあがるのである。

 お高いポーションを使えない一般庶民の場合、雇われている貴族まわりに感染するとまずいので一斉にお休み。

 侍女や下女達もお休み。

 子供の頃に感染して経験済みの使用人たちだけで動いていたようだ。

 まぁ、もちろん、堅パンと塩スープのメニューは無い。

 どうやら、アネットの使用人が作ったモノだったらしい。

 毒が入って無くてよかった。

 さて、このおたふく風邪の原因は、私ではない。

 アネットの子供が最初の患者だ。

 どうやらアネットとでかけた先、お茶会で感染ってきたようだ。

 私が感染原因でなくてよかったと思う。

 なにしろ、このヘルベルトの屋敷の使用人、ほぼすべてアネットの実家から来ている。

 ヘイトが更に爆上がりして、今後の食事内容が更に酷い事になっただろう。

 まぁ元々食事は鑑定してから食べるけどね。


 さて、一応、床上げして寝ていた部屋から移動。

 本館の本来の私の部屋へと移る事になったのだが、ここで、また、テンプレが発動した。

 物置部屋に公爵令嬢を突っ込みやがりました。

 びっくりである。

 ルイーズ的には、少し狭い部屋で薄暗いとか思っていたようだ。

 モノホンのお嬢様って、頭が悪いのだろうか?

 いや、悪意がわからないという令嬢病なのだろう。

 普通に物置部屋に、小さな寝台と小さな机に衣装箪笥と、そりゃもうあれだ。

 ワンルームアパートである。

 住心地は悪くないが、これはあかんやろが。

 で、ある意味、何も感じない鈍感系少女のルイーズたん。

 普通にここで寝起きしていた模様。

 ちなみに、ご飯の回数も減らされている模様。


 もうツッコミ待ちなの?

 単に悲劇のヒロインレベル高すぎたの?

 私だったら、とっくに井戸に毒を投げ入れてたわ。

 皆、死んじゃえぇ!(犯罪です)

 毒物の入手はお幾らかしら?


『殺鼠剤が薪小屋にあるから、深夜なら入手可能、コストゼロだね』


 あら、素敵。(犯罪です)


 ここで一旦お着替え。

 お着替えはやっぱり一人だ。

 ルイーズたん、十一歳にしては、小柄でやせ細っている。

 顔つきは頬がふっくらとしているので気が付かれないが、典型的な虐待児、餓死スレスレの栄養状態のようだ。

 まだ腹部が膨らんでいないのと、殴られたり火傷の痕は見る限り無い。

 死んだ時、疑われないようにしているのだろうか。

 だったら、きちんとご飯を与えろよ、しみったれ共が。

 衣服は重苦しいデザインの古着、つまり型落ちの古風なドレスが三枚。

 どうして型落ちとわかるのか?

 いや、多分、門外漢でもわかるよ、擦り切れた絨毯みたいだもの。

 もしくは古いピアノカバーみたい。

 女の子が着るような色じゃないし、オバちゃんの臙脂色のスリッパみたいだもの。

 下着は古くなった木綿のランニングみたいなの。

 これもありえない無惨さだ。

 いやいや、下女より貧相な物持ちである。

 母親の形見なんぞは無いし、令嬢が持つべき品々なんぞは、どこを探してもなかった。

 あの離れは、外部の医者を呼ぶための偽装のようだ。

 ここまでくるとルイーズたんが、呪いの三点セットを大事にしている気持ちがちょっとわかる。

 何にしろ、自分だけの物なのだ。

 ...

 ...

 ...

 節くれだった古い箪笥を見つめて、私は笑った。


 私ね、自分の子供を持つことができなかった。

 信用ならない血族に囲まれていたのもある。

 けれど最大の理由は、自分自身を信じられなかったからよ。

 そのかわり、辛い立場の子供たちに援助をしていたの。

 子供限定でね。

 もちろん、税金対策でもあったわよ。

 罪滅ぼしかしら?

 生まれや環境に阻まれて、苦労している子供には、惜しまずお金を援助した。

 だって、どうせ死んだらお金なんて使えないでしょう?

 食糧援助、学資援助、海外の子供たちへの援助。

 ともかく、可能性のある子供たちへの投資はしていたの。

 こんな私でもね。

 私と私の周りにいた奴らとの違いは一つだけ。

 私は自覚していたの。

 悪い事をしたら、善いこともしなきゃね。

 助けを求める子供には、惜しまず手を差し伸べる。

 どんな親の子でも、外国の子でも、どんな信仰をもっていたとしても、そして病気でも身が不自由でもよ。

 ただし、根性の曲がった嘘つきは除外だし、私と敵対するなら、子供でも容赦しないけどね。


 そうね、今生、演技しなくていいのなら、とても楽でいいわ。

 選別する必要もないのなら、遠慮もいらないわよね。

 ひとりぼっちなんですもの、誰が味方だなんて考える必要もないし。


『僕っちがいるよ』


 あら、私の味方ですの?


『もちろんさ』


 じゃぁ、我が青春の一コマ、面白いお話を聞いてくれる?


『何?』


 私が小さい頃にお友達が二人いたの。

 ズッ友って約束したね。


 近所の幼馴染ね。

 一人は中学生になったら、口をきいてくれなくなったの。

 親から、私とは付き合うなっていわれたのね。

 まぁ仕方がないわよね。

 私の家族って、所謂、まっとうな家業じゃなかったから。

 で、もう一人はね。

 私の私物を盗むようになったの。

 中学にあがるまでは、そんな事をしなかったのよ。

 まぁいじめの標的になりたくなくて、苛めっ子のいいなりになってたのね。

 ただ、そういう悪い事をするなら、私も容赦しないのは、その頃も同じだった。

 ノートに、その子がいじめっ子達の悪口言ってるとか、変な男と援交してるとか色々書いておいたの。

 妄想日記ね。

 でも、盗まなきゃ問題ないし、盗んでも中身を見ればわかる話でしょ?

 友達やめるってメッセージだもの。

 そしたらね。

 性懲りもなく盗んで、読みもしないで、そいつらに渡したようで。

 笑わせてもらったわ。


『(´・ω・`)』


 私と付き合うなって言われて離れていった子は、結局、違う中学に移ったわ。


『(ヽ´ω`)なにしたの?』


 別に、自滅しただけよ。

 その子の親ってね、教師だったのよ。

 そいつモラハラ、パワハラでね。

 結局、生徒にも暴力ふるってクビ。


『口をきかなくなった原因ってさ』


 その子も体罰を受けていたの。

 面と向かって、そのクソ教師に追求したから。

 でも感謝はされなかったわね。

 結局、その子の家庭は崩壊しちゃったし。

 私が余計な口を出したっていわれたもの。


『るいるいは、悪くないじゃん』


 人間ってね、真実を指摘されたくない事ってあるのよ。

 良かれと思ってした事でも、迷惑ってこともあるの。

 体罰から逃れられても、体罰をされていた自分を認められないし、親を憎むことも苦しい。

 だから、余計な事をした私を嫌う方が楽なんでしょう。


『くるしかったね』


 そうでもないのが、私なのよ。

 そこで傷つくぐらいなら、元友達を笑っちゃうわけないでしょ?

 生徒に暴力振るってたのバレたの、私の所為だと文句言いに来た時よ。


 クソゴミ教師ざまぁ、私の親をゴミクズ呼ばわりしたけど、お前の親もゴミクズじゃねwww。

 ご立派なんだから、話しかけないでくれる?

 って何とも器の小さい事を言ってやったり?楽しかったわ。


『で、もうひとりは?』


 不幸な事故で消えたわね。


『\(^o^)/』


 殺してないわよ。

 その子ね、何か勘違いしてたみたい。

 私って気弱に見えるらしくて。


『気弱って、冗談だよね?』


 節穴よねぇ。

 大方の碌でもないのには、頭がオカシイ奴マジサイコパスって呼ばれてたのに。

 進級したら知らないで虐めようとしたのもいたけど。

 本当に皆、根性が無いんだから。

 付属だったのもいけなかったのね。

 大方の生徒には知れちゃって。

 楽しみにしてたのに。

 灯油とか色々準備してたのに、誰もイジメてくれないんですもの。


(゚∀゚)marvelous!


 ありがとう。

 結局、その子は社会から消えたわ、残念ね。


『また、省いてる』


 はいはい、私を騙して悪さをしようとしたの。

 まぁ売り飛ばしたって訳ね。

 ずっとこっちが被害者なのに、何か勘違いしたみたいで。

 バカにされたって逆恨みされちゃったみたい。

 適当に呼び出して男に売り飛ばそうとしたのよ。

 杜撰な計画よねぇ。

 で、売り飛ばした相手は犯罪者だった。

 けど、私の親もね、犯罪者なのよ。

 手広いタイプのね。

 意味、わかる?


『君がイジメの標的にならなかった理由だね』


 私を買おうとした相手がビビリちらして、責任をその子に押し付けたって訳。

 売り飛ばしたつもりが、その子が産廃になった。


 で、何が言いたいかっていうと。

 味方だよ、とか。

 友達だよ、とか。

 簡単に口にする輩は信じないのよね。

 リップサービスを信じるほど、私お安くないのよ。

 むしろ虫酸が走るの、オッケー?


『(´・ω・`)反省、わかった。

 無様で滑稽なお笑い生き様を提供してくれる限り味方だよ』


 それでいいわ。

 ルイーズたんは、どういう人間観だったのかしら。

 私のような、人間じゃなかったのは、確かでしょうね。

 さて、この小部屋がルイーズたんの人生だった。

 でも、私になったのだから、こんな小部屋で終わることだけは許さない。


 「許さないわ、覚えていなさい。」


 ねぇ天魔くん。


『何だい、るいるい』


 もしもよ、私が天魔くんを使う方法を見つけたら、手を貸してくれるかしら?


『僕っちの使い方ね、いーよー、わかるならね』


 じゃぁ、ちょっとだけ教えてほしいの。


『え〜どうしようかなぁ、無料の範囲ならねぇ』


 もちろんよ。

 そうね、天魔くんへのお願いは、適切な方法をとれば、子供のルイーズでもできるのかしら?


『不可能じゃないよぅ』


 ありがとう。


 ***


 部屋の前には、はすっぱな様子の下女が一人だ。

 どうみてもど庶民で行儀も何も習ってもいない様子の女だ。

 それが口元をクチャクチャいわせながら、煙草を吸っている。


「はやくしな、奥様がまってるんだよ。このグズが」


 はい、暴言いただきました。

 このクソアマ、抹殺ですノートの栄えある一人目にしてやろう。

 君に決定ですね。

 天魔くん、天魔くん。

 ちょっと実験していいかしら?


『なんのだい?』


 資産運用のですわ。

 この程度の脅威なら、リスクは少ないでしょう。

 手早く様々な可能性を探らねばなりませんもの。

 だって、ルイーズたんは、ひとりぼっちなんですもの。


『僕っちがいるよ』 


 えぇだから、その天魔くんの運用方法を掘り下げねばなりません。


『ふつうはぁ、鑑定とかで色々したほうがぁ』


 穏便ですわよね。

 でも、残念ながら、ルイーズたんの状況は、穏便な能力開発では補填できそうもありませんことよ。

 見てご覧なさい、この下女の様子を。

 公爵令嬢へのこれが正当な扱いと御思いですの?

 アシュトン伯爵の孫への扱いと御思いですの?


『...』


 それにしてもルイーズたんは、どうしてこんなお笑いみたいな状況になっているんでしょう?

 テンプレにしても自虐ネタを子供がしてはいけませんわ。

 ここはお優雅にお嬢様が注意をしてあげましょう。


「お黙り、駄犬が。

 誰が口を開いていいと言ったのかしら。

 野良犬以下を寄越すなんて、やっぱりクラルシェンの田舎貴族は、この程度なのね。

 いやだわぁ、獣臭くて。

 でもしょうがないわよね、人間の言葉が喋れないんですもの。

 無駄に吠えるか、臭い匂いをふりまくだけですもの。

 野良犬らしく残飯でも漁っていればいいのに、目障りだわ。

 この屑犬が。

 まぁ下賤な女の犬は野犬程度という事ね、ちょっと風上にいるんじゃないわよ、屑犬。

 酷い悪臭ね、汚くて醜いわ。

 あぁ犬だから意味がわからないかしら。

 ああごめんなさいね、まっとうな犬に失礼よね。

 野良犬以下のゴミクズだもの。

 鞭はどこかしら、素手で触りたくないですわ。」


 『\(^o^)/向こう見ずだね。

 るいるいを守るのは、命の危機だけなんだよ。

 あまり無茶すると、あっという間に使い切っちゃうよ。

 君はまだ、小さな女の子なんだからね。

 でも、お笑いの点数は加点。』


 天魔くん、大ウケですね。

 着替え終わったので、少々ご挨拶をしてみました。

 呆気にとられた後、下女らしき何かがみるみる顔を赤くする。

 あらあら、この程度で我を忘れるなんて。

 なんてお馬鹿さんなんでしょう。


「あら、殴りますの?嫌だわぁ野良犬らしいですけど」

「この糞餓鬼がぁ」

お祖父様アシュトンの孫である私を殴ろうとしているわ。

 ちなみにお祖父様の契約内容は?」


『ないしょ』


「コストパフォーマンスに優れた運用をなさっていましたの?」


『のぅこめんと』


 はい、肯定いただきました。

 さすが天魔くんですね。

 ニュアンスでわかります。

 多大なリターンをリスクダメージ管理しつつ得ているタイプと見ました。

 つまり?

 何となく、わかってきました。

 あら、わかりませんこと?


 だって悪魔への対価なんて一つでしょう?


 ちょっと母方のお祖父様をリスペクトしそうです。

 私も一般的な良心の持ち合わせはありませんので、お祖父様って素敵とか思っちゃうの。

 まぁ最後には地獄行きでしょうけど。

 ワクワクしてしまいました。

 方法が気になりますね。

 指定したからと言って、生贄になるわけではないでしょうし。

 捕まえて、半殺しにして捧げるとか、バイオレンスな方法でしょうか?

 かたつむりな私には、敷居が高い方法だと困ります。

 もちろん、人間、石ころ一つで死にますし、方法はいくらでもあるのですが。


『...るいるいってさぁ、本当にアシュトン坊やの孫なんだねぇ。びっくりするぐらい発言が一緒だよ』


 ありがとうございます。


「はん、今更、ひびってるのかい。

 急にだまりやがって、泣いて謝っても許さないよ。

 さぁ生意気な口を聞きやがって、仕置してやる」


 おや、本当に殴りましたね。

 病み上がりの子供を力いっぱい平手打ちです。

 耳の奥がキーンとなってます。

 でも、どうやら一度触れると鑑定ができるようです。


 ◎ソノラ◎


 所属:ヘルベルト家使用人。

 抵抗値:ー

 熟成度:7/10


 詳細な鑑定はでませんね、でも、熟成度とは何でしょうか?

 熟練度では無いでしょうし。

 ですが、鑑定様は無駄な表記をしないはず。


 熟成、食べ物?


 いりきたつ女を見上げて、不意に思いました。

 実に美味しくなさそうですが、悪魔的には美味しいのでしょうか?

 これ、食べ物って事ですわよね?

 安直ですけど、正解?


「天魔くん、天魔くん、食べる?」


 急に言い出した事に驚いたのか、女が動きを止めました。

 代わりに、天魔くんの笑い声が頭の中で聞こえます。

 大爆笑ですね。

 何も面白い事は言っていないのですが。


『るいるいはぁ、悪い子だなぁ。

 そうだねぇ、僕っちの大好きなアシュトン坊やの孫だ。

 ちょっとイライラしていたところだし、大サービスしちゃおうかなぁ。

 後で、ちょっとお話あいが必要だけどね』


「やったぁ!ありがとう」

「何を言ってんだ、薄気味悪い顔で笑いやがって。この糞餓鬼が、奥様を苦しめるような奴は」


 もう一度、振り上げた手、汚いわねぇ。

 化粧も髪の毛もベタベタしてる。

 鬼みたいな顔だ。

 ちいさなルイーズを力いっぱい殴ったら、死んじゃうことだってあるのにね。

 そんな大人はどうなるかな。

 悪い人はどうなるのかな、教えて天魔くん?


『そりゃぁ悪い人間は、僕っちのご飯さ』


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