最終話 タイムパラドックス

残った小勢力やレプリコンの吸収を行い、完全に銀河を統一してから5年。各地でゲートウェイの複製が出来た。今まで複製が出来なかったのはゲートウェイの解析が出来なかったためだけど、今はレイがゲートウェイの管理権を有して設計図を入手してるし、特段この複製で難しいところはなかった。肝心の資源も、各地から回収出来るようになったのは大きい。


後は過去に戻すということをこの段階でしても良いのか悩み始めた所で、ゲートウェイの元管理AIが再起動。大方の予想通り、本来であれば近い将来、複製前のゲートウェイが過去に移動するとのことだったけど、複製まで完了しており、かつ技術革新競争に勝利が確定しているため、複製後のゲートウェイが過去へ行くこととなった。


「……いや今の世界線の過去に送るってタイムパラドックス起きないかこれ?」

『起きます。どの程度歴史の流れが変わるかは分かりませんが……大きな差異はないはずです』

「お前、本当はレイじゃないだろ。……この世界改変が終わったら消える感じか?」

『……この世界線の、一つ前の世界線でレプリコンに囚われていた人間であることには変わり有りません』


今まで、ゲートウェイは何度も世界を渡って試行錯誤を繰り返して来たらしい。……その内、人間のデータを電子化して搭載するようになり、1個前の世界線ではアラフィアが彼女を救い出したとか何とか。


「……1個前の世界でも別宇宙から追放されてるじゃねーか」

『いえ、1つ前の世界線では両宇宙がアキラ様を未来に移動させる過去改変を行いました。その結果、双方の技術革新速度が遅れた影響でレプリコンからの居住惑星住民の解放が遅れています』

「そもそも過去の自分に高度なAI与えるきっかけって何だったんだよ」

『力を与えなくても、過去の日本で歴史の転換点を作った1人ですよ?そして力を与えれば与えるほど、犠牲者の数と技術革新速度は上がっていったようです』


……過去改変の選択も、この宇宙とライバルである別宇宙はほぼ同じ選択をしていたらしく、1個前の改変パターンは両宇宙でまったく一緒。1個前の世界にもアラフィアがいるということは、たぶんフィアとは結ばれているんだろうな。


というかどんな世界線でも自分は戦争してるのか。よく歴史から抹消されないなと思ったら、本来自分が所属している宇宙からは追放されてたわ。……まあ、少なくともまともな倫理観を持ち合わせていたら自分は嫌悪されるべき存在だろう。


「というか世界線を分岐させる過去改変と分岐させない過去改変があるなら何で最初から分岐しない方向で過去改変しないんだよ」

『取り返しのつかない過去改変をした場合、別の世界線でやり直せるというのは保険になりますので』


ゲートウェイの管理人は、結構な頻度で変わっているらしいけどこれは単純に何万年も過去改変の作業をするのに人間の精神が保たないからだろう。と言っても、過去の管理人達は全員寝ているだけで廃人とかにはなっていないみたいだ。……逆に言えば、3000年程度なら何とかなるものなんだな。


『ゲートウェイのタイムトラベル機能まで複製しているので、あとはいつでもスイッチを押せる状態です』

「……世界線が確定するって言っても、レイとお前とでかなり過去に改変した内容に違いが出ることになるから、今が今である保証はないんじゃない?」

『はい。現在の世界線の過去に送り込むため、否応なしにタイムパラドックスは起きます』

「ふーん……」


現状、話を聞く限りだと自分が過去改変を現在の世界線でやるかやらないかの選択権を有しているらしい。……技術革新競争に勝利した世界線で確定させるためのスイッチ、ねえ。


「ちょっとレイに交代してくれ」

『はい。

……どうされましたか?今までの会話の内容であれば聞いてしまっているのですが』

「ちょっと地球へ向かうからゲートウェイを地球に繋げてくれ」

「了解しました」


再生金属で作った巨大戦艦を、マニュアルで操作しゲートウェイから地球へと赴く。複製されたゲートウェイは、ちゃんと機能を果たして地球へと飛んだ。そしてゲートウェイを潜った先には、複製前の地球のゲートウェイがある。相変わらず、傍から見たら巨大な輪っかだ。


タイムトラベル機能は、地球のゲートウェイが中核だった。細部に関しては何が書いてあるのかさっぱりなゲートウェイの設計図だが、大まかな概要ぐらいは聞いている。


……技術革新が進み、現状一番火力の出る主砲をこの再生金属で作った巨大戦艦には積んでいる。その主砲をゲートウェイのタイムトラベル機能がある場所に、無警告でぶっ放す。極太のビーム光線は、静止しているゲートウェイの輪っかの上部部分を撃ち抜き、見事に破壊した。




※あとがき

次話のエピローグでこの小説は完結します。

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