思っていた以上にあっさりと銀河統一が済んだところでゲートウェイの管理AIを再度起こそうとするがレイいわく反応がないそうなのでたぶんレイを過去に送るまで起きるつもりないなこれ。

「アキラの話聞いて思ったけど、世界が分岐するなら過去改変する意味なくない？」

「恐らく、技術競争で勝った後の世界線に対して別の世界線も救う依頼を出すつもりじゃないか？自分は面倒だからやらないけど」

「……別の宇宙と行き来出来るようになって、相転移エンジンを別の宇宙で使った話聞いてると、その内別の世界線への移動というのも出来るようになりそうだよね」

「……ただこの『世界線が過去を変えた時点で分岐する』説が有力になると、ドックがドッグに書き変わった現象の方が説明付かないんだよな」

タイムパラドックスというのは、かなりめんどくさい。予期せぬ方向に分岐することもあるだろうし、鶏が先か卵が先かという話になってくる。

……自分がドックとドッグで世界を塗り替えたの、たぶん必要なことだったんだな。あれはたぶん鍵になってくる。あれの最大の問題点は、過去を変えたのに自分が過去を変える前の記憶を保持していること。たぶんこれを解決できるような何かがあれば、疑問は全部解消する。

「確かアキラが未来で宇宙共通語の辞書を書き換えてやる、って決意した時点で書き変わったんだっけ？……んー、ゲートウェイが行く過去は別の世界線っていう話も分かるけどそれもそれで矛盾が発生するし……私は今回の過去改変の結果、技術競争に勝ったからこの世界線で確定する、って言う方に賭けたいかな」

「あー……可能性としては高いな。ただどちらにせよ、レイを過去に送りだすのは確定か」

『……過去改変自体が非現実的な話ですけど、ゲートウェイが過去に移動していないと説明が付かない以上、ゲートウェイが過去に行くということは確定事項ではあると思います。私は最初ドッグをドックと間違えていれば良いんですか？』

「ドッグで良いと思うよ。……今回の世界線が、ラストの確定した世界線である可能性に賭けてみよう」

一番手っ取り早いのは、ゲートウェイの破壊のような気がして来たけどそれをやると世界が崩壊しそうなので流石に手は出さない。……銀河統一って今回の世界線が初めてってわけじゃないだろうけど、回数的に少なそうな気がする。

「とりあえず勢力が膨張したし、支持率100％にしとくか」

「……どういう手法で？」

「ヒノマルサイクツを支持するか支持しないか聞いて、支持しないって言った人の中で影響力ありそうな人から勢力圏外へ追放する。これを繰り返せば必然的に100％なるよ」

「またえげつない手を……」

『……推定では1000万人ずつ追放を繰り返すと、7回目で支持率100％になります』

「じゃあそれで。

7000万人程度の犠牲で国家が一丸となるならそれで良い」

一先ず、ゲートウェイ複製中に邪魔が入ったり反乱が起きると面倒なのでさっさと支持率は上げておく。今から過去改変が完了するまで、そして相転移エンジンが開発されるまで技術全振り国家に舵を振り切る。

支持率の上げ方は某共産主義国家を参考に、反体制派をどんどん処刑しないだけありがたいと思って欲しい。

『相転移エンジンについてですが、ラドン連邦で構想段階ですが研究には着手していましたね。極秘プロジェクト扱いされています』

「となると、稀人の誰かは伝えたのかな。

……新しい宇宙を創るって、ある意味夢だよな」

『新宇宙創成のコントロールが出来れば最高のリソースになるかと』

「エネルギーだけでも莫大っぽいからなあ」

ラドン連邦やシンカー共同体、テラニド帝国の各国の研究機関の統合も可能となったため、相転移エンジンについては大々的に研究を行い、予算も費やす。……何年かかるかは分からないけど、たぶんこれまでの世界線よりかは圧倒的に開発着手が早いはず。

これで良かったのかと、自問することもあるけれど何だかんだで独裁者楽しいし統治は安定してるから良いんじゃないかな。マップのお蔭で宙賊は全滅したし治安は良化した。一応ラドン連邦以外の文化は残す予定なので旧シンカー共同体の領域では今まで通りに王政して貰って良いし、旧テラニド帝国の領域もテラニドカンパニーが勝手に開発、支配して貰って良い。気に食わない部分は直すけど。

「よく考えたらアキラって5年で無一文から銀河統一したの？」

「……そういうことになるな。冷静に考えたら凄い事、か？マジで5年前無一文だったけど、マップはあったぞ？」

自分がこの世界に来たのは、新暦2023年10月20日。そしてヴォート帝国の艦隊を殲滅し、降伏を認めたのが2028年12月2日。……5年で銀河統一したってこと？一応ヴォート帝国の南にある国や、レプリコン相手に滅亡しかけているアイヴァン共和国といった雑多な勢力自体は残ってるけど、あとはもう消化試合だ。