第139話 ゲートウェイ
一斉に宣戦布告して来た銀河の勢力の大半は、母星近くにゲートウェイがある状態だったため、一瞬で敵がヴォート帝国のみとなったヒノマルサイクツ。……よく考えれば、各種族の母星近くにゲートウェイがあって、日本語が宇宙共通語として普及されたんだからどの勢力もゲートウェイを支配している勢力に手出しなんてできないな。簡単に経済の大動脈を切ったり繋げたりできるし。
「……この後のラドン連邦の統治どうするの?」
「一般国民は大して生活変わらんだろ。親族からは恨まれるだろうけど。……それにしても、あっさりと終わったな」
『ヴォート帝国の全戦力が集結して旧パラディ社のゲートウェイに進軍していますが……』
「こちらも全艦隊で迎え撃つぞ。せっかく再生金属で作った巨大戦艦、使わないと勿体ないだろ」
レイが空中に映像を映し出すと、こちらの巨大な戦艦が4隻、既にゲートウェイから進軍を開始しており、ヴォート帝国の全艦隊の攻撃を受け切って耐えている姿が流される。
……シールドを偏重させて付けており、装甲の厚い部分は再生金属に任せるという構成なため、頑健というか、スペック差が酷い。レイが3年の間に開発したシールド関連の技術のせいで余計に差が出来ている。
やりすぎると未来からストップがかかるかなと思っていたが、そんなことはなかったのでこうなることが望ましいという説もあるけど……たぶん、そうじゃない。タイムパラドックスを考えると、過去改変なんて出来ない。
だから恐らく、この世界はこの世界でどういうことをしても続いていくんじゃないかな。例えレイを過去に送らなくても、世界は変わらない。例えば今が9週目の世界だとして、元々ゲートウェイに居たレイは8週目のレイで、9週目の過去にやって来たんだと思う。
そして自分が将来、過去にレイを送る場合は、10週目の世界の過去の自分に送るということだな。……これ、10週目では別の宇宙で自分の追放って起きるのか?そこら辺どうなっているんだろう。
過去のゲートウェイの管理AIの話し方的に、宇宙というものが複数あるのは確定だし、別の宇宙との技術開発に勝つために過去改変に手を出し始めたのもたぶん確定。自分がドックとドッグで実験をしたため、世界線が変わる現象というのが起きることも確定しているか。
……この考え方だと、ゲートウェイは1週目に作られたものになる。確か過去の管理AIも1巡目の方々からの接触が云々って言ってたし、何らかの回答はゲートウェイから得られる可能性がある。その回答は、自分じゃなくてレイの方へ行きそう。過去に行くのレイだし。
タイムマシン的な役割も、ゲートウェイが担っていそうだ。……これ、ゲートウェイが勝手に起動するパターンじゃないか?レイがゲートウェイを掌握してからも、旧管理AIが眠っているとされるエリアには接続できないみたいだけど……。
ゲートウェイの複製は、早めた方が良いな。下手すりゃゲートウェイが全部無くなるから、自分達の持つ優位性は全て失われるし、そうなった瞬間ヒノマルサイクツはすり潰されて終わる。マップが無ければ、戦力差数倍をひっくり返すようなことは出来ないし、出来る内にさっさとやっておく方が良いだろう。
「……すぐにゲートウェイの複製を開始しようか。
各勢力から資材をかき集めたら、現行のゲートウェイの複製は可能なんだろ?たぶん近いうちに、というか自分の予想だとあと10年もしない内に、現存する全てのゲートウェイが勝手に別世界の過去に行く」
『……どういう思考でそこに至りましたか?』
「レイが前に、記録で見た製造年とかは恐らく偽造されている。稼働が新暦2034年からで、新暦2037年から西暦2037年に飛んでいるのはこの世界の進歩に合わせた簡易的な予測でしかない」
『今から全力で複製を行えば……資源は揃うので複製品の稼働は新暦2033年からとなるでしょう。なるほど、辻褄が合いませんね』
レイがデータをゲートウェイ以外にも保管しているから、現存するゲートウェイが勝手に過去へ行っても複製自体は出来る。しかしながら、一時的でもゲートウェイという距離概念を無くすワープ手段がなくなれば、ヒノマルサイクツは瓦解を始めるだろう。それを回避するためにも、ゲートウェイの複製は急がないといけない。
……それと同時に、レイを分離させて新しいゲートウェイを管理するレイと、現存するゲートウェイを管理するレイに分けないとゲートウェイの管理が難しそう。レイ以外に、脳を代替脳へ切り替えるのを受け入れられるのは……まあいないだろうな。適性が無かったら暴走を始めて手が付けられなくなるだろうし。
ただこの人格のコピー、アデラさんによると成功しそうって前に連絡貰ってたんだよね。どちらも自分が本物だと主張することでアイデンティティが崩壊するかもしれないとか言って敬遠していたんだけど……将来的なことを考えたら必要っぽい。
そんなことを考えていたらヴォート帝国の艦隊がいつの間にか壊滅していた。うーん、一方的過ぎてもはや虐殺レベルだった。丁度良いぐらいの戦力にしようとするとこっちにも被害出るから圧勝になるのは仕方ないんだけど……。
でもまあ、ずらっと並んだ戦艦が一斉射撃で敵艦隊を次々と落とす勇姿はしっかり録画も出来たし満足。レイの操作するドローンカメラが頑張っていて、空母から次々と戦闘機が出ていく姿が見れる艦橋付近からの光景や、敵の攻撃をものともしない再生金属で作った巨大戦艦の姿は非常に良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます