第138話 スイッチ
開戦直後、ハイパーレーン投石機から射出された小惑星がゲートウェイを通過し、ラドン連邦の首都星系にある稼働していなかったゲートウェイから射出された。そこからラドンⅠまでの距離は、僅かに210万キロ。
秒速10万キロ以上の速度を出す小惑星がラドンⅠを直撃するまで20秒もかからないな。スクリーンを今のラドンⅠの様子を映すカメラに切り替えると、かなりの大きさの隕石が一瞬でラドンⅠへ接近し、シールドを貫通した。
そのままラドンⅠの惑星を貫通するかのように、しかし中央付近で止まった小惑星は、ラドンⅠの地表を大きく捲って着弾地点からどんどん死の惑星へと変えていく。……生き残る人間は、皆無かな。
当然、戦艦群は突如として稼働を始めたゲートウェイを警戒するけど誰も撃てない。そりゃそうだ。この小惑星がヒノマルサイクツからのお届け物とは確定していない以上、変に稼働を始めたゲートウェイを壊すわけにもいかない。それに、既に事は起こってしまった。今更どうこうすることも出来ないだろう。
そもそも、軍隊は上からの命令が無ければ動けない。そうこう迷っている間に、二投目が射出。今度は戦艦群へ向け、先ほどよりかは小さい小惑星を幾つか投擲する。
……そしてこれが、戦艦を幾つか沈める。何隻かが迎撃して砕いたけど、そのせいで細かくなった小惑星の破片が悉く戦艦を貫くんだからどうしようもないなこれ。
結局、ラドン連邦の戦艦達が意図的にゲートウェイを攻撃したのは6投目が終わった後。防衛プラットフォームを全て破壊されてからだ。指示系統が完全に麻痺してるというか、ラドンⅠが火の球へと変貌する様をただ眺めていたというか……。
ここでようやく、ヒノマルサイクツの艦隊が突入して戦闘を開始するんだけどかなり一方的だな。一応2艦隊だけに抑えたんだけど、ラドン連邦の戦艦を次々と落としている。
「まあ、向こうは茫然自失としていたし当然か」
「……そりゃ、守るべき人々が一瞬にして消え去ったんだから士気なんてなくなるでしょ」
「そりゃそうだ。
お、投降も早かったな」
「たぶんもう誰も指示出来ないんじゃない?議員も官僚も参謀本部も全滅してると思う」
僅か3時間ほどで、首都星系の残存戦力は降伏。あとは残ったセクター軍を悉く潰していくだけだな。
……そしてラドン連邦以外の勢力も、大抵は母星というか故郷の地がゲートウェイで繋がっているため、同じ戦法が使用出来る。そのことに他勢力が気付いた時は絶望しかないだろうな。地球とラドン星系みたいに稼働が止まって切断されているならまだしも、シンカー共同体やテラニド帝国は母星近くのゲートウェイが稼働している。つまり、現在進行形で経済の大動脈だ。
「まあ流石に全種族皆殺しするつもりもないから後は適当に戦うけど」
「ラドンⅠを破壊した時点で取り繕っても無意味じゃない?」
「無意味じゃないな。いつでも破壊出来るぞと脅す人間と、破壊したぞと脅す人間なら後者の言葉の方が通じるでしょ」
「……ラドンⅠだけで100億人以上殺した人なら脅しも通じやすいと思うよ」
この映像は、さっさと戦争状態に入った各種勢力に配って、テラニド帝国の母星やシンカー共同体の母星近くのゲートウェイから艦隊の出し入れを行う。すると即座に降伏の申し入れがこの2勢力から入ったので受諾。和平案については今後話して行こうか。
「サイゴート共和国も母星近くにゲートウェイがあるんだよな。
……ヴォート帝国だけ母星の隣の星系にゲートウェイがあるから、まともに戦闘するのはヴォート帝国だけにしようか。戦力的に正面から戦うのに丁度良いし」
「……最終的には銀河統一?」
「もちろん。一応銀河統一した方が研究開発速度上がるし、別宇宙探索も心置きなく出来るからメリット多いぞ」
その後、サイゴート共和国やパラディ社からの降伏も認めたため、残る敵はヴォート帝国のみ。ここからも降伏するとか停戦したいとか言ってるけど大規模な艦隊と大規模な艦隊での艦隊戦したいから却下。そもそもお前らがラドン連邦からヒノマルサイクツを独立させた結果が今だろ。
とりあえず降伏時に、星系基地の所属を全てヒノマルサイクツへと変更して貰ったので凄まじく勢力としては拡大した。……この星系基地、高いだけあってそれなりの規模の艦隊を派遣しないと破壊出来ないし、星系がその勢力の所有物であるという証のため、これを全て手放したということは併合すらやむを得ないと相手側は考えたということだな。
……それだけ首都星系全破壊は大きかったのかな。個人的には100億人と言われてもピンと来ないし、惑星同士の衝突の方が衝撃としては大きかったから何とも言えない気分。1人を包丁とかで刺して殺すことと、核兵器というかそれ以上の兵器のボタン押すこと。自分は前者の方が辛いと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます