第117話 サイクル
艦隊同士の戦いは、妨害電波で位置を偽装することから始まると言っても過言ではない。相手に艦船の位置がバレてしまえば、即座にレーザー光線が降って来る戦場だと相手から姿を隠し続ける利点は多い。
で、この妨害電波は艦隊の規模が大きくなるほど強度が強くなるから最近だと相手が相当近くまで来ないと相手側は攻撃して来ないようになった。……だだっ広い宇宙空間の中で、勘だけで当てるのは相当苦しい。
しかしこちら側からは、ある程度一方的に攻撃出来る。マップのお蔭で自分は全てを見通せるし、自分のマップの情報を適時伝えることである程度の共有は出来る。
……そしてこの自分のマップ情報は、必ずしも全部を伝えられるわけじゃないというか、実際リアルタイムの戦場の動きが激し過ぎて伝えられない。だけど、断片的な情報から実際の戦場をイチカが想定するようになり、その正確性が異常なため、空母の攻撃が大体全弾的中する。あとは戦場で戦闘機達が優位なポジションで戦えているので、これも大きい。
この空母は対シールド特化の兵装であることも功を奏し、早々にシールドが剥げた戦艦から拿捕していく作業。なんかヴォート帝国が遭遇する度に逃げの一手を打つようになったんだけど、大体逃げ切るまでに戦艦1隻か2隻は確保出来るから襲撃の度に戦艦増えるよ。
逃げる艦隊も先回りして補足したり、修理しているところを襲撃することできっちり確保。……本命の大規模艦隊は流石に戦艦が10隻以上いるので、大規模艦隊を襲うのはこちらの戦艦が10隻を超えた辺りからだな。
「……4回の襲撃で戦艦6、巡洋艦19を拿捕かあ」
「駆逐艦を省かない。駆逐艦30隻以上奪ってるでしょ。ヴォート帝国視点だと艦隊2個分ぐらい消えてるね」
「この先は完全に待ち伏せされてるからもう帰るぞ。
それにしても儲かったなあ」
「ボロボロの戦艦が1隻20億クレジット換算でも……合計で100億クレジットは余裕で超えたね」
損害の激しいものとか旧式のものもあるので、そういうのは売却することになるだろうけど、それ以外は丸々ヒノマルサイクツの戦力強化に使うこととなる。実質戦力は倍増したことになるし、もうちょっと早く略奪経済始めても良かったかな。
……いや、地盤固めてなかったら全宇宙の敵認定されて詰むか。最低限、基板となる居住可能惑星や拠点となる星系は必要だったし懇意になる勢力も必要だった。
「第1から第4戦闘部隊まで均等に戦力振り分けたら戦艦2、巡洋艦6、駆逐艦24ぐらいの艦隊になるか」
「その規模の戦力の艦隊を4つ動かせる企業って何……?」
「ヴォート帝国相手にもう1回これするから最終的には今言った規模の倍にするつもりだぞ。それでもラドン連邦相手だと緒戦から苦しいだろうけど」
「……本気でラドン連邦攻略する気なんだ」
途中、相手も移乗攻撃を仕掛けて来た時は焦ったけどほとんどはこちらの戦闘機がすぐに気付いて撃ち落とせたためにこちらの戦艦にまで辿り着いたのは射出ポッド1つだけで、そこから乗り込んで来た兵士達も全員戦艦の乗組員達が捕らえたのでやっぱり白兵戦用の兵を各艦船に乗せておくのは大事。
というか戦闘機で撃ち落とされるレベルだから移乗攻撃って超危険なんだよなあ。うちの子達軽々とそれやるけど、一応これもマップで最高のタイミングを見計らって突撃しているから成功率高いだけで、5回射出して1回辿り着けば良いのが本来の基準か。
……人員の再教育の手間とか考えたらまあわりに合わないな。白兵戦用の兵をパンパンに積み込まれていたら射出ポッドでの突入が上手く行っても中が制圧出来ないし、かなりリスキー。まあマップで敵艦船の情報が分かる=敵艦船内の人数まで分かるということで安全に勝てる船にしか移乗攻撃仕掛けてないけど。
「後方のタレットの操縦代わるぞ。
……よっし命中」
「……あれ?戦闘機に弾を当てるの苦手じゃなかった?」
「マップで正確な位置の分かる敵戦闘機が、一直線に自分達を追いかけていたら流石に当てられるわ。
あとこのシチュエーションだけは練習しまくった」
「戦闘機にケツ追いかけまわされるシチュエーションだけ想定して練習するのはおかしいよ……」
ヴォート帝国から抜け出す際は、遠距離攻撃で哨戒部隊を気付かれない距離から一方的にぶっ潰して行きと同様にゲートウェイから去る。まだパラディ社のゲートウェイ使ったとはヴォート帝国も思ってない……はず。気付いてたら速攻でパラディ社には連絡入れそうだし。
これで良い感じにラドン連邦とヴォート帝国が敵対してくれたら、こちらとしては万々歳。逆にヒノマルサイクツの悪行が全てバレてヴォート帝国だけじゃなくてパラディ社やヴォート帝国まで敵に回ると……引き籠るしか選択肢がなくなるか?まあ最悪想定で即潰されなくなった辺り、組織は本当に巨大化したな。
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