第108話 スポーツジム

学術惑星から無事に戻り、しばらくはインバー星系の人間を真人間に戻すという作業を繰り返す。帰り道に遺棄されていた宇宙船を2つほど開封したが、どちらも新暦になってからの宇宙船だったので大した利益は得られず。


そして住民達に予防接種はさせたかったけど、全員に施しを与えたらありえないほど高額になるとアリアーナに言われたので渋々諦める。まあ今まで大丈夫だったわけだし、検問が仕事すればウイルスとかも持ち込まれないでしょ。ラドン連邦から買うと一つ一つは安くても高額になるから、ワクチン系統や薬関係も自力で生産出来るようになろう。


学術惑星に行って大体の事を把握し、ある程度気持ちの整理も出来た。暇になったので今日は空母内のスポーツジム的な場所に行って、筋トレ代わりにVRゲームを行う。手に持つのは、この世界だと骨董品となっている大きなマシンガン。重さは大体10㎏ぐらいかな。


自分はガンマニアとかじゃないのでこれがどういうマシンガンかは知らないけど、専用の眼鏡をかけたら銃弾が撃てるようになり、反動も体感できる。……フルダイブ型のVRゲームは存在するんだけど、今は実際の身体を動かしている方が良いや。


「ぜー。はー。つっら」

「流石にこれで疲れるのは筋力足りなくない……?」

「1時間マシンガンを撃ち続けたら人間は誰だって腕がパンパンになるんだよ!」

「アリアーナは前にこれ5時間ぐらいやってたけど」

「……管理量増えたからストレス溜まってるのかなあ」


専用の眼鏡の中の映像は共有され、複数人でもプレイ出来るので敵を延々と倒すモードとか戦場を駆け回るモードとか色々と遊べるけど一般人は1時間遊ぶと相当疲れる。アリアーナとかいうゴリラでも5時間も遊べばクタクタにはなるそうだ。


ちなみにフィアが付き合ってくれているのは出産後のお腹周りを戻すため。加速出産をしたのにやっぱり妊娠出産後は太っていたみたいで本人は気にしているみたいだ。……前までは全然掴めなかったのに、今は少し掴めるからなあ。あと上に乗られた時にちょっと重くなったなとは思った。


少し休憩をしていると、護衛の子で今日は非番のセンシちゃんが空母の戦闘機乗りの子達に囲まれて芸をしていた。バク転からのバク宙をマットもない場所で披露するんじゃないよ。何でそのまま空中を3回転ぐらいしてるんだよ。


「結構活用されているんだな」

「一応、トレーニング機材は一式買い揃えているからね。

……肉体改造した方が早いけど」

「でも肉体改造してる人が少ないってことは抵抗ある人も多いんでしょ?」

「そもそも獣人だと改造してもあまり効果ないから……元々が改造種族だし」

「えっ」

「えっ」


やっぱり獣人の肉体能力はおかしいなと思っていたらフィアから飛んでもない発言が飛び出る。……どうやら獣人の祖は元々は人間に近い種族で、宇宙進出する前の段階で、宇宙進出するために人間から一段階上の存在になるために獣の遺伝子を取り込んだとか何とか。


正直、何で人間と獣人の間で子供が出来るのかは謎だったけど、ベースはただの人間なのか。というか、今の話から察するにシンカー共同体が成立する前の辺りで獣人の勢力は盛大な人体実験を行ったということになる。


……それで今の獣人達がフィジカルお化けになっているならまあ成功だろう。頭も別に悪くないし、普通の人間より五感まで優れているなら大成功である。正直、耳が良いのとかめっちゃ羨ましい。


というか元々改造された種族なのに、更に優生学推し進めているから異常に軍が強いのか。勢力的にはそこまで大きくないのに、過去あらゆる戦争でシンカー共同体は活躍してるし。


今はシンカー解放戦線との内戦で疲弊はしているけど、軍はまだまだ健在だし、ここにも睨まれたくないんだけど既に睨まれている事実。まあシンカー解放戦線側に武器弾薬戦闘機の提供をしていたら仕方ない。


……シンカー共同体とはあまり戦いたくないんだよな。下手すりゃフィアの両親とご対面する可能性が高い。というかフィアが追い出された時点で巡洋艦の艦長クラスなら、今は艦隊を率いている立場の可能性すらある。


確か、弟が追放された数年前の時点で大佐だっけ?じゃあ今准将や少将になっててもおかしくないし、フィアの両親なら戦艦とか乗ってそうだ。


「……ちなみにフィアの両親にアラフィアを見せるという選択肢はある?」

「ない。斬り捨てられた側の存在で子孫残すなとすら考えてそうだから嫌になるよ」

「あー……思想が先鋭化してるなあ」


フィアの両親には優秀な子供が沢山いるから、わざわざ斬り捨てた側の孫を見たいとも思わなさそう。……自分ですらちょっとイラっとする両親なので、フィアの内心は相当複雑だろうな。


「だー!」

「お、立った。……立った!?」

「うーん、私の子だけあって立つの遅いなあ」

「はあ!?まだ生後1週間だぞ!?」


まだ小さい身体で、立ってパタンとこけるアラフィア。可愛らしさと共にちょっとした恐怖も感じたのだが、これで発育が遅いってどういう基準なんだ。

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