第106話 出産
この学術惑星では、他の惑星よりも技術が進んでいると言われており、今回来た目的の1つとして加速出産というものがある。
そろそろフィアのお腹が大きくなってきて日々の活動に障害が出て来たため、もう出産してしまうということだね。機械での代理出産とは違い、あくまで妊娠の期間を極端に短くするタイプの技術。
……正直まだ父親になる実感は持ってないんだよなあ。フィアが最新鋭の医療用ポッドに入って行ったけど、どうやらこのポッドでお腹の中の胎児を急成長させて、出産まで済ませてしまうらしい。
そんなことして大丈夫なのかと不安にもなるけど、まあこの未来世界で技術の粋が集まっているからたぶん大丈夫。遺伝子をちょっと弄って賢い子にするとか、運動能力の高い子とかに出来るそうだけど学習装置で後天的に天才にも出来るそうだし今回はノープラン。
ただ、障害とか早期の癌は回避するようにお願いはした。あとはこの時代でも原因不明だったり回復し辛い難病の類を回避するようにも。流石に子供には長生きして欲しいからね。親より先に死んでほしくはない。寿命がどんどん伸びているせいで子に先立たれるケースというのは増えているらしいけど。
というかこの辺の先天的なマイナスを避けることは大体の人が付け加えるオプションらしいし、自然出産よりも加速出産の方がこの手の遺伝子改造リスクが低いそうなのでやらない方がおかしいレベル。
……どうしてもそういうことに抵抗のある人はいるそうだけど、もしそれで回避出来る難病の子供が生まれたら後悔してもし切れないだろう。ってよく見たら拒否したの過去1年で生まれたラドン連邦の赤ちゃん98億人の内の1万3000人だから率で見たらかなり低いか。
そして、医療用ポッドに入って僅か30分でフィアは出産を完了した。あまりにも早すぎる出産で逆にびっくりしたわ。母子共に無事だったけど、この世界で死産なんて99.9999%無いそうなのであまり心配はしてなかった。それでも少し震えていたのは内緒。
「名前は結局アラフィアにするの?」
「良いだろアラフィア。
アキラからキの字を抜いてフィア足した形だし」
「……2人目とか出来たらどうするの?」
「……その時はその時で考える」
名前は、アキラ+フィアでアラフィアと単純なものにした。アキラからキの字を抜いた理由は単純で自分の気が狂っているというか気が違っている部分を受け継いで欲しくないから。
生まれて来たのは、この世界の法則が無事働いて獣人の女の子。黒髪なのでまあ間違いなく自分の子供だな。一応この子のアレルギーやら血液型やら調べる過程で親子鑑定はするつもりだけど。
「……パパ?」
「えっ、喋るの!?」
「言語オプション頼んだでしょ!?」
「いや……初日で喋るとは思わないじゃん。
一瞬転生者とか疑ったわ」
「どういう思考でそうなったの……」
フィアにせかされて抱っこするとまあ可愛い。フィアの猫耳に似ているけど、若干虎っぽい耳になってるかこれ?尻尾も黄色と黒が混ざってるし、フィアの先祖にそういうタイプがいたのかな。
そして唐突に喋ったのでビビってアラフィアを落としそうになる。いや確かに言語オプションは付けたけどあれ言葉喋るのが早くなるって説明しかなかったぞ。生まれて初日は流石に想定外だわ。
……すぐに眠ったアラフィアの小さいお手てに人差し指を握られて、微笑ましい光景なのに人差し指が若干痛いのでこの段階でフィジカルお化けなことは確定した。生まれて初日なのに握力あるなこいつ。下手すりゃ10㎏……いや15㎏はある。これもたぶん加速出産のせいかな?そうであってくれ。
頭の方はまあ……自分がアレだけどフィアから良いの受け継いでいるはずだから賢くなって欲しいなあ。せめて、自分よりかは賢くなって欲しい。
「可愛い顔してるし将来が楽しみだね」
「……この子が将来お嫁に行くとなるとすげえ嫌な気持ちになるから全国の娘を持つお父さんの気持ちが分かったわ」
「じゃあ嫁には行かせないで良いんじゃない?将来的にはヒノマルサイクツの社長だし」
「……いやまあそうなるのが自然なんだけど自分は死ぬ間際まで社長辞める気はないぞ」
自分が地球にいる時は「自分が末代で良いだろ」とか考えていたけど、やっぱり子供を持つと子供って良いものだと思える。ここ日本じゃないし。……そんな子供を何千人何万人と殺していたであろう別世界の未来の自分は末恐ろしい存在だな。
まあ子供に対する考えが変わってもラドン連邦と開戦するのは変わらないんだけど。インバー星系まで星系基地を奪取し、居住可能惑星まで手に入れたことを公表したせいで、本格的にラドン連邦の仮想敵国としてヒノマルサイクツが見据えられた感ある。
一応まだラドン連邦の一企業なんだけどね。従業員数38億人のごく普通な一般採掘企業です。戦闘機なんて日産120機しかないからラドン連邦の1/10ぐらいの生産力しかない。敵対するならあと3年待って下さい。
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