第105話 学術惑星
ラドン連邦の天才達が集う学術惑星について、それがあるのは南西第二セクターのラットル星系に存在している。ここは居住可能惑星が2つあり、ラットルⅠが軍事関係、ラットルⅡがその他とざっくり分かれている感じ。
軍事関係の研究機関がある場所だからか、治安は良いね。まあ新兵器の運用のために反社会的勢力の排除作戦とかを立案し、勝手に実行している感じだから組織として結構ヤバイ。
学術惑星のラットルⅠ、ラットルⅡにはそれぞれ巨大なデータベースも存在しており、ここでしか回覧出来ないような情報もある。例えば過去に販売されていた新聞について、データベースで可能な限り保管されている。
「……と言っても新暦以降のは全部あるけど、西暦の奴は歯抜け状態だな」
「昔のものはデータがどうしても壊れて見れなくなるから仕方ないけど……重要な奴はバックアップの数が相当多いみたいだし、大きな事件があった日とかは残ってるみたいだよ」
「あった。世界同時多発テロ事件は流石に残るか。
……事実かああれ」
「まあ再度嘘つく必要性もなかっただろうしね……」
そしてとうとう、お目当ての世界同時多発テロ事件の事が載っている新聞、及び50年後に書かれたという書籍を入手したけどページが幾つか落丁しているのはご愛敬。まあ知りたいこと全部把握出来たから落丁部分はどうでもいいわ。
「……パイロット不足が深刻化して、完全な自動運転が増えたって飛行機でそれやっちゃ駄目でしょ」
「ダメなの?」
「遠隔操作できそうだし……いやこれ全部遠隔操作で落としたのかよ。しかも各国に1機だけ墜落させたテロじゃないわ。飛んでる飛行機全部弾にしてるわ」
情報を集めた結果、どうやら自分は空を飛んでいる飛行機を全て遠隔で操作し、各国の主要政治家達のスケジュールを全て把握してピンポイントで落としまくったらしい。どう考えても普通の人間が、個人で行うのは無理な所業だけど……。
「あっ、こっちの記事だとこのテロは○○原理主義が決行したって主張しているみたいだけど」
「いやそれ他人のテロの手柄を自分のものにしようとしているだけ。
……AIの使用については何か書かれてないか?」
「AIがやった、とは書いてないけど……そもそもこんな昔にそんな高度なAI作れるの?」
「……ちょっと不思議だったんだけど、あのゲートウェイみたいなAIってこの世界に存在してないんだよな?」
「あまりにも高度なAIは人類文明を滅ぼすって結論が出ているから開発はされてないね。作ろうと思えば作れると思うけど……」
もしも高度なAIが、各国の政治家のスケジュールまで抜き取っていれば。AIが飛行機の遠隔操作に成功すれば、自分は指示を出すだけでテロが決行出来る。そんな夢みたいなAIが存在していたのかは不明だけど、可能性としては高いだろう。だって自分一人で世界中の飛んでいる飛行機を全てハイジャックして落とすとか、どう考えても不可能だよ。
あと流石に全自動とは言っても少なからず航空会社側の人は搭乗しているだろうし、何なら機長だけは配備していた可能性はある。そこら辺は新聞の記事から読み取れないけど……まあ遠隔操作に成功した時点で飛行機をシェイクして急速なG負荷をかけたり、機材に頭をぶつけさせるような操縦をすれば物理的な障害は無くなるか。
スクランブル発進して来た軍用機とかの対策としては、あのAIが言っていたミサイルドローンを活用して撃墜してるし、そもそも飛んでいる飛行機全てがハイジャックされ、地上施設向かって全速力で落下してくるんだから全てを防ぎようがない。……認めたくないけど、この性格の悪さは少なくとも自分に似ているなあ。
一度実施してしまえば対策は過剰なものとなるだろうから、その一度で全てを決めるためのテロがこれか。自分でゲロるまでバレなかったということは、本当に上手いこと計画立てて実行したんだろうな。
「もしも飛行機が垂直に、一直線に落ちて来るなら1分も経たずに地上に墜落する。飛行機の中は愉快なことになっていただろうな」
「……たぶん意識失ってた人の方が多いんじゃないかな。
それで、あのAIの言っていたことが事実だって認めるの?」
「……『自分が国を変える』とか思い上がった上で、もしも偶然何らかの形で高性能な何でも言うこと聞いてくれるAIを入手して、そいつを使ってこのテロを実行可能だと確信したら可能性はあるかもってところ」
「それもう答え出てない?」
学術惑星に来た甲斐というのはあったし、西暦の他の事件を眺めるのは中々に面白かった。と言っても21世紀の記事は本当に少なかったし、20世紀の新聞なんてもっと少なかったのでデータの保管というものは難しいんだな。
いや、むしろ事件から3000年近くが経った今でも当時の新聞記事が読めるというのは相当凄いことなんじゃないかな。途中で戦争も何回かあったみたいだし、全世界同時テロ事件の記事が消失しなかっただけでも幸運だったと思っておこう。
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