第104話 地球の歴史
この世界にも自分が居て、色々としでかしたというのは恐らく正しいので過去の地球の歴史を調べたいけどテロリストの名前までは分からないんだよなあ。一応年表では『全世界同時多発テロ事件』の名前はあるんだけど自分の名前まで書いてない。
データベースに全部保存しておけよと思うが、よく考えたらネットの世界で○○のサイトが消えてしまったとか見れなくなったということはよくあることなので数千年前の、今では二度と行けない惑星の歴史なんて消えない方がおかしいか。
個人個人で保管していたデータというのも、恐らくは残っていない。パソコンなんて下手すりゃ数年でデータが消えたりするし、そもそも全てを記録しようと思ったら莫大な容量が必要となる。
というか遥か昔、まだゲートウェイが生きていた頃にそういうデータベースはゲートウェイ越しに地球で保存していたらしいから、接続切れたら全部無くなるか。……地球専門で調べていた考古学者の親を持つイザベラさんを最初の頃に確保出来ているのがわりと奇跡に近いレベル。この人のお蔭で最低限の調べものは捗っている。
「地球のことを知ろうと思ったらやっぱり学術惑星まで行かないといけない?」
「行くしかないと思いますよ。親も時々立ち寄っていましたし」
「んー、ハイパーリレイ使っても1週間かかるんだよなあ……」
「もう十分レプリコンの勢力は削りましたし、ヒノマルサイクツの戦力も増えたので数週間程度離れるのは問題ないと思いますが……」
首都星より良い学習装置も置いてあるという学術惑星は、南西第二セクターにあり、ハイパーリレイ沿いでもないためぶっちゃけかなり遠い。でもまあハイパーリレイを途中まで使えば片道6日ぐらい、かな。ハイパーレーンだけだと相当かかりそう。
護衛艦隊も一緒に行くなら交通費がかなりかかるなと思いつつ、AIに聞いた相転移エンジンの進捗についても分かるかもしれないので学術惑星には行くことにする。相転移エンジンについては、フィアの補講のお蔭でだいぶ理解は進んだ。
あのAIは相転移エンジンで新しい宇宙を既存の宇宙の中に作ると言っていたが、要するにこれ、ビッグバンを起こせるってことだね。そりゃ無限に等しいエネルギーを得られるわけだ。で、既存の宇宙は新しい宇宙にどんどん変換されて、理論上では塵も残らないらしい。
ここからはフィアの仮定だけど、1週目の世界は恐らくこの新しい宇宙を起こすためのビッグバンを互いの宇宙で撃ち合ったようでそりゃ早期に共倒れで滅亡するなと思った。……自分達の宇宙でこんなことは出来ないから他所の宇宙でやろうという思考自体がはた迷惑過ぎる。
ちなみに、宇宙の外には別の宇宙があるというのは特段変な考え方じゃないらしい。まあ自分も元居た西暦2023年段階でそういう話を聞いたことがあるので、それが一般的になったのだろう。
……宇宙間を行き来するのは現段階で理論上可能かもって感じだし、タイムトラベルもまだ実現不可能。光速を超えられたのに、タイムマシンが出来ていないというのはちょっと不思議な気持ちにもなるな。
「学術惑星行くかー。面子はフィアと第二戦闘部隊の面々で」
「レイは連れて行かないの?」
「レプリコンに囚われていたというだけで何か解剖されそうだし連れて行くならベレーザ星系の住民の誰かにするよ。
あ、それを言うなら自分が最大の研究対象か」
「宇宙間移動してるのが確定してるからね……」
学術惑星はマッドサイエンティストな人達が多いらしいけど、稀人がどういう存在なのか知っているなら少なくともタイムトラベルを経験した人間ということになるので間違いなく研究対象。宇宙間を移動していると知られたら徹底的に調べられそうだな。
下手すればDNAの構造自体が違ったりするかもしれないし……っと、それはフィアが身籠っているからあり得ないのか。歴史もほぼ一緒とか言ってたから生命としてこの世界の住民との違いは少なそう。
「私の両親がよく依頼を受けていた研究機関への連絡は入れてあります」
「……考古学者って過去に地球とよく関わっていた惑星を調査したりすると思うんだけど、基本的には首都星系の周りになる感じ?」
「いえ、地球と連絡が取れていた時はとにかく星図を作るために四方八方へ散らばっていたため、案外辺境の方が良い遺物を見つけられたりするそうです。今では別の国の領土とかから、過去の地球の宇宙船が発見されたりもしますし」
この後でイザベラさんから考古学者の生き様について聞いたけど、宇宙空間で放置されている宇宙船とかは案外多いようでそういうのを調べるのが多かったそうだ。
流行り病とかで宇宙船の中は全滅。でも宇宙船自体は特に異常がないってパターンはよくあるとか。小惑星に衝突し、突き刺さったままの宇宙船とかを回収出来たら結構なお金になるとか。
……たまにマップに遺棄された宇宙船とか表示されるけど、全部見に行った方が良いなこれ。今まで見て来たのは大抵新しいタイプの宇宙船で、大抵破損しているからスクラップにしかならなかったけど、もしかしたらこのスクラップの山の中に過去の地球についてが分かるものもあるかもしれない。
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