第97話 ベレーザ星系

ヘルメットを付ける機械に、外す機能があると通信で連絡が入ったのはベレーザ星系の地上要塞を粗方破壊し、ベレーザ星系にあるレプリコンの司令塔を破壊し終えた後だった。


……ベレーザ星系の司令塔を破壊したら、ヘルメットを付けている人達が全員息絶えるんじゃないかと不安になり、司令塔の指示をこちら側で解析してこちらから呼吸や基本的な活動指示が出せるようになるまで準備は行った。


しかしながら実際には指示が途切れても基本的な活動は続けるようだし、手間があまりにもかからない。現地にヘルメットを外す機械すらあるなら、後の作業は凄く楽だな。しかもちょっと改良するだけで学習装置にもなったのでもう何というかさっさとレプリコンは未来帰って欲しい。


「全部で幾つあるんだこれ」

「この星全体で6万カ所あるみたいだね。

……数か月で全員真人間に出来るみたいだよ」

「はー。今までの準備は何だったんだ。もう一回ゲートウェイ行って情報収集する方がたぶん有意義だったな」


前回レプリコンの大規模艦隊をシンカー解放戦線と共同で叩いた時、一応その後にシレーネ星系にあるゲートウェイと通信が可能な時間はあったんだけどAIは事務的な返答しかしなかったので一旦放置している。ただ恐らく、核心を突くような質問をすれば相手も反応はしてくるんじゃないかな。


戦闘自体はあっけなく終わり、敵の艦隊もそれほど多くは来なかったので全戦闘部隊+傭兵団ヘルキャットは過剰戦力だった。こちら側は一機も落ちなかったけど空対地ならそんなものか。まあ全体的に要塞群の武装が貧弱だったし、マップでどこが厄介かも分かるから占領は非常に楽だった。


「じゃあしばらくは第一戦闘部隊と一緒にヘルキャットの艦隊をベレーザ星系に置いておくつもりなのでレプリコンの艦隊が来たら迎撃をお願いします」

『依頼内容承知いたしました。

スクラップ工場も増設してるの凄いですね。無駄がない』

「正直なところ、スクラップ溶鉱炉はそこまで利益上げてないですけどね」


ヘルキャットについては基本賃金に加えて、駆逐艦1隻毎に50万クレジット、戦闘機1機毎に5万クレジットの討伐報酬を渡す契約にしているけどスクラップはこちら側が全て回収するため、実際のところスクラップを買い取ってるのと同じだ。


というかネルサイド協定から買い取ってた戦闘機、駆逐艦の方が高い値段なのでむしろ安く感じるという。もっと早くに傭兵雇うべきだったなこれ。やっぱり金で動く連中は扱いやすいわ。それなりに戦力もあるし、ヒノマルサイクツの戦力が整うまでは頼ることになりそう。


「……さっきの戦闘、やっぱりヘルキャットはあまり前に出なかったけどね」

「まあ前でて無駄に被害食らうのを避けたいだけで攻撃してるなら問題ないでしょ。

指定した場所の攻撃すらしないなら契約金回収して打ち切るけど」

「回収なんてどうやってするの」

「そこに艦隊があるじゃないか」


傭兵団ヘルキャットの持つ戦艦は、ネルサイド協定が持って来たシュパードと同型艦だけど、シュパードよりも長射程のエネルギー兵器が多い。威力も高いので当たれば戦闘機ならワンパンは出来る。装甲の薄いシンカー解放戦線の戦闘機だとシールドがあっても冗談抜きで一発で沈むだろう。


これがテラニドカンパニーの戦闘機だと1発耐えるのでシールドは超重要。1発耐えるか耐えないかの差は超大きい。なお鈍足低火力。……基本的にはエンジンの出力がシールド分に食われて足りてないからレーザー兵器の出力を落とすしかないのが辛い。


「星系基地は破壊しない、で良いんだよね?」

「破壊して自分達で星系基地建てても良いんだけどな。2星系持ちになったら面倒増えるだろうしベレーザ星系の居住可能惑星を確保したのはもうしばらく隠しておく」

「……公表はいつ頃するの?」

「最適解はラドン連邦の選挙戦が始まってからだけどあと3年どころか1年すら隠し通せ無さそうだから半年後ぐらいかなー」


ベレーザ星系は現状、レプリコンの支配下にあるけどベレーザⅠはヒノマルサイクツが確保したという状況。星系まで確保する必要性が薄いから星系基地は放置安定。まず複数星系持ちになる利点がない。資源ならエレーザ星系だけで事足りるレベルだし、居住可能惑星以外に価値あるものはあんまりない。


星系基地自体が戦闘能力を持っているから近くを通ると攻撃を受けるけど、武装だけ破壊するのも難しいししばらくは遠回りするしかない。


しかしまあ、人口9億の惑星を保有出来るとなると色々と悪い事出来そうだな。これだけの人がいるなら何人か、ではなく何万人という単位で戦闘機乗り達が出てきそうだし、本格的に勢力対勢力となった時に、敵惑星へ侵攻するための地上軍まで組織出来る。


……これ惑星の住民全員ヒノマルサイクツ所属ということで良いんだろうか?惑星全体を管理、運営するつもりなのでたぶん思想的には真っ赤っか。人員が潤沢となったため、各所にスパイを大量に送り込めるようになったのは夢が広がる。全員人間っぽいから、獣人がいないのは少し残念だけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る