第78話 迎合
エレーザ星系からシレーネ星系まで、レプリコンの領域を通過してネルサイド協定を迎えに行くと「何だこいつ等」みたいな顔をされたけど無事に大型輸送船にネルサイド協定の住民達を全員乗せられたのでネルサイド協定の吸収は比較的上手く行った。
今まで持っていたステーションやら基地やらは全て廃棄して貰うが、そもそもこのステーションはもうまともに機能してないな。艦隊に関してはそのまま吸収できるため、戦艦を自由に使えるのが非常にありがたい。しかも結構良い戦艦だからネルサイド協定が保有する赤字額=戦艦の価値って感じ。
……それにしてもテラニドカンパニー相手に40億クレジット程度の借金があったということは大麻製造モジュール辺りが相当高かったんだろうか。それ全部燃やした相手によく吸収されようってなったな。だから離脱者が多数出たんだろうけど。
最終的にネルサイド協定に残った人口は1万6000人程度で、大体は宙賊上がりの男だからヒノマルサイクツの男女比は逆転する。まあ空母内に元ネルサイド協定の人は乗せない予定だし空母内の男女比率は変わらないだろうけど。
「ネルサイド協定を吸収することについて、不安に思う人もいるかもしれない。宙賊の親玉達だった連中相手に仲良くしろとまでは言わない。だけど、彼らの持つ戦闘力や知識を」
「いやみんな今更そこを突っ込みたいわけじゃないと思うよ?どちらかと言うと、女の園に男を入れて良いのかなって」
「……だから別に自分は従業員が女だけの企業を目指してたわけじゃないし。そもそも女性限定なんかにしたら勢力拡大速度が半減するだろ」
「……もしかして男の娘とかも好みなんじゃ」
「それはない。ついでに言うと男を性的対象として見るのは自分は無理だ」
ネルサイド協定を吸収することについてヒノマルサイクツの従業員からは反発があるかなと思ったけど、案外すんなり受け入れられた感じ。一番難色を示していたのがイザベラさんだったけど彼女自身も直接的に恨みを持っている相手がネルサイド協定というわけじゃなかったのでセーフだった。
早速1万6000人の中から成績優秀な戦闘機乗りを抽出し、そいつ等には将来的に戦闘機を与える。……寝首を搔かれても困るし、常にネルサイド協定の戦闘機乗りは全体の1割以下に抑えておこう。そして元ネルサイド協定の人達を纏め上げるのは、ネルサイド協定のトップだったランタンさん。この人元々は戦艦乗りの軍人だったみたいで指揮能力もそれなりに高そうだし重宝しそう。
まあラドン連邦相手に侵攻を任された軍のトップだったみたいだし、ラドン連邦軍相手に優位に戦闘を進めていた時点でたぶん軍人としての能力は高い。大麻製造ステーションが破壊された一報を聞いて、一早く奪還に動いたのも評価は出来る。その後、ラドン連邦相手に継戦不能を覚られず和平まで結んでいるんだから有能だ。……どちらかといえば、元リーダーの方が色々と下手を打ったらしい。
「巡洋艦1隻、駆逐艦6隻でまた新しく作る第3戦闘部隊はランタンさんに任せようか。戦闘機は合計で60機だし……100人ぐらいは軍人雇用だね」
「……賃金の方はこれで向こう納得したの?」
「してるね。全員一律日給1000クレジットだから獣人達の1/5だ。まあこれでも一般企業並みには貰えてるらしいから良いんじゃない?」
どう足掻いてもネルサイド協定を吸収すれば元ネルサイド協定の派閥というのは出来るし、現時点で既にシルフィとイザベラさんとアリアーナがそれぞれ派閥みたいなのを形成しちゃってるのでヒノマルサイクツ内でもそろそろ派閥争いとか起きるかもしれない。ただまあ自分の独裁政治が通るので今のところは何ら問題はないな。
「ネルサイド協定が持っていた船はどうするの?」
「ネルサイド協定からの船は巡洋艦が8隻あったけど内5隻が大破済みで型式も古かったから売却したよ。残りの3隻の内、1隻は第1戦闘部隊に与えて、残り2隻で第3戦闘部隊と第4戦闘部隊を作る」
「……戦艦は?」
「シルフィが乗る。シルフィとイザベラさんがジャンケンしてシルフィが勝ったから第1戦闘部隊を拡張してるんだよ。将来的には戦艦1、巡洋艦2、駆逐艦12の編成にする。リネームが面倒だったから戦闘隊の数字は連番で使ってない数字を優先して使ってくれ」
戦艦はジャンケンの結果、シルフィが艦長を務めることになったので第1戦闘部隊は規模を拡張。たぶん戦艦乗りとしての適性はシルフィより上って人が少なからずいるだろうし、そういう人を戦艦の乗組員として集めようか。
孤児だけで戦闘員を集めるのもいつか限界は来るだろうし、男を招き入れる必要はあった。なるべく獣人の子達と交わらないように配置するけど、従業員は全員自分の女だとか言うつもりもないのでぶっちゃけフィア以外は誰とくっつこうがどうでも良い。
フィアがこれで他の男の女になったら流石にちょっと悲しくなって泣くかもしれないけど。……そう思うならもうちょっとフィアとの関係は前に進めていこうか。そろそろ我慢の限界でもある。むしろよく今まで理性が働いていたなと思うぐらいには我慢した気がするわ。
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