第71話 再分配党
この世界では基本的に、戦時中に略奪したものは返さなくて良い。これは地球でも当然のことだったし、略奪したものを返す必要があるならイギリスからは価値あるものがなくなるだろう。
だけど再分配党は、返すべきだと主張している。ラドン連邦と過去戦争をして、今も領土を保っている強国は西のテラニドカンパニーと南のヴォート帝国の2つ。このどちらかからは援助を貰っているんだろうなと思うが、もしかしたら両方かもしれない。
一応、ラドン連邦では思想の自由が保障されている。赤い思想とか真面目に国家反逆罪で裁かれても文句言えないと思うんだけど、主張するのは自由だし政党が掲げる思想は何でもOKだ。たまに領土売ろうぜとか言う人も出て来るしな。まあ地球でもロシアとか過去にアラスカを売り払っているけど。
で、今回議席数が3から4に増えた分配党はわりと本気でこの『略奪したものを返す』という法案を通そうとしている。当然ながら乗り気の政党は他にないので普通に否決されるんじゃないかな。
こんな奴らと今後も関わることになるのだけど、早速お金が欲しいと言って来たので「支援金の使用履歴を全部見せてくれたらOK」という条件で小規模ながら融資を開始。こいつら頭お花畑の素敵なところは、真面目に社会の底辺にお金を配ってくれるところだ。
……ラドン連邦は、幾つかの星系にあるステーションの治安がすこぶる悪い。その理由の大半は宇宙大麻を始めとした麻薬類の流行と、ラドン連邦自体が治安の悪い地域というものをわざと作っているからだ。
俗に言う隔離政策だな。○○星系の○○ステーションに行けば覚醒剤が手に入る、という状況を作り上げて、救えない人を特定のステーションに押し込んでいる形。更生できない人間は、出来ないと判断しているのか。
あとはまあ、どうしてもヤクザというかギャングというのは発生するようなので、監視しやすいように隔離しているのかな。
そして、再分配党は自分からの支援をきちんとこの貧しい人達に配ってくれたけど頭足りてないから現物支給ではなく現金支給である。まあこの辺は「現金で配れ」と言った自分の要望もあるけど。
当然この社会の底辺層は、支援金を麻薬の追加購入に使う。となると麻薬を売るような組織が儲かるわけだけど……表に出て来ないようなギャングやマフィア達の資金源になってくれる。再分配党への融資は、実質的に地元のマフィア達への支援と一緒だね。
もちろん、こんなことでラドン連邦は揺るがないだろうけど反社会的勢力が力を付けるのはこちらにとって良い事だ。あと、当然ながらヒノマルサイクツがお金配ったことはニュースになるし、受け取れるような層からのヒノマルサイクツと再分配党への支持は集まりやすい。……一応、ラドン連邦の国民に対して印象良い企業というのはキープ出来ているっぽい。
「首都星系行くついでに、再分配党へもう1回1億クレジット渡して来るか」
「……念のために聞いておくけど、最終的な目標ってラドン連邦の解体?目的は?」
「勢力拡大のためだよ。どう頑張ってもラドン連邦が壊れないとヒノマルサイクツは大きくなれないしね」
「んー……『レプリコンの勢力圏の確保をラドン連邦がごたついている間に行うなら文句は言われない』っていうの、一応分かるんだけど……ちょっとこれ以上大きくなるのは怖くなってきたな」
「あ、念のため聞いておくけどシンカー解放戦線をラドン連邦に宣戦布告させるための動きしたら外患誘致罪って適用される?」
「むしろ何で適用されないと思ったの」
再分配党は、ちゃんと治安の悪い惑星の所得の低い人にお金を配っている様子を映像で送って来てくれたので実地調査も兼ねてその星系と、首都星系にも行って来よう。……そろそろ拾って来た女の子が女らしい体つきになって容体も安定して来たし、医療用ポッドからは出したけど言語の存在すら分からないのは色々とキツイ。
あとフィアに外患誘致罪について確認したけど自分の認識と一致していたのでバレたら死刑よりも酷い目に会いそう。……傍から見ればネルサイド協定をラドン連邦にけしかけたとしか見えないテラニドカンパニーが裁かれていないし、バレなきゃどうにでも出来そうだけどね。
艦船製造モジュールの建築も始まったので、もうしばらくすれば戦闘機や駆逐艦の量産体制に入れる。と言っても船体部品だけじゃ組み合がらないからその他のパーツはテラニドカンパニー辺りから買い付けるしかない。
……それでも船体部品というか装甲部分が一番費用も使う量も多いので、普通に買うよりも相当なコストダウンとなる。その内、ICチップやら精製流動冷媒やら超伝導体やらは作れるようになっておかないといけないだろうな。
「……各種パーツは少しずつ買い溜めしていくしかないな。テラニドカンパニー以外からも集めておこう」
「船体部品だけは凄まじい勢いで作れるけど、それ以外は買い集めるしかないから……それでも戦闘機1機20万クレジットぐらいで作れちゃうんだけど」
「元々ぼったくり価格だったというのがよく分かる。あとICチップとか冷媒とかは戦闘機や駆逐艦以外にも、ありとあらゆる場所で使われるし、量産し過ぎていて単価は安い」
「どれも少量で事足りるしね」
そろそろテラニドカンパニー以外の企業との取引も増やして、戦闘機の量産体制を整え始める。まずは軽く2000機ぐらい作っておくか。
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