第70話 言語
「………………」
「めっちゃ口をパクパクさせているんだけど何言ってるか分かる?」
「たぶん機械で操られてたから言葉の概念自体ないんじゃないかな……。だから拾うの乗り気じゃなかったんだよ……」
「おおう……学習装置的なのってある?」
「言語の取得なら結構あるけど言語の概念から取得となると……首都星系か南東第二セクターにある学術惑星に行けばあるとは思うけど高いよ」
レプリコンから解放された女の子は、言葉すら話せない存在だった。正直に言って、レプリコン舐めてたわ。これレプリコンと戦いたくなかったラドン連邦の気持ち分かるなあ。万が一捕らえられたら自分達もこうなるってことでしょ?
機械に頭を洗脳されて、死ぬまで何の感情も持たずに働き続けるのはちょっと勘弁して欲しい。とりあえずこの世界に学習装置みたいなのがあるのか聞いてみたら一応あるようだけど本人への負担が大きいらしいし性格が変わることもよくあるとか。
自分に使ってみるのは怖いし嫌だけど、今この女の子に使うならピッタリだろう。ただ、俗に言う未開惑星の未文明人とかに使用することを想定している一から全てを学べるような学習装置は首都惑星かそれより遠い学術惑星にしかないようなので首都星系に行く必要性が出て来た。
……まあ一度ぐらいは首都星系行ってみたかったし、戦闘機や駆逐艦を建造するための艦船製造モジュールも建築が始まった。インバー星系まで周遊して、インバー星系の更に先の星系まで大規模艦隊がいなかったのは確認したので首都星系に行って帰って来ることぐらいは出来る。
それに、首都星系にあるというゲートウェイを一度は見てみたい。シレーネ星系のゲートウェイはパラディ社がガッチリ確保していたため、自分達は近づくことすら出来なかったけど、首都星系にあるゲートウェイなら近づいても大丈夫だろう。そもそも稼働を停止しているし。
でもゲートウェイを管理しているAIとは一応話せる状態らしい。ほぼ定型文しか返って来ない状況らしいけど……自分が行ったら何か反応がある可能性はある。軍の大将にまで上り詰めた前稀人は、よくステーションの管理AIと話をしていたらしいし。
あとは首都星系にレプリコンの悪逆非道さを広めておこう。もう既に知ってる人が多いのかもしれないけど、生きた状態で救出できたのは今回が初めての事例らしいし、ラドン連邦の民衆達から何らかの世論が発生するかもしれない。
「……市民、貴方は幸福ですかって聞いてくれるコンピューターって滅茶苦茶優しかったんだな」
「……何の話か分からないけど、機械が人間を支配した領域で、人間が自由意志を持つことは不可能だよ。反乱されるだけだしね」
「電気信号与えたらとりあえず身体は動くしな。……今更だけどレプリコン勢力との最前線にいるのヤバイな」
「冷静に考えたら知名度上がる理由は沢山あるね……」
よくある管理AIに反逆する人間達という創作ものは、支配が行き届いてしまっている場合もあるんだけど、支配がちゃんと行き届いてしまうと実際には反逆不可能ということを見せつけられた気がする。
首都星系に行くとしても、とりあえずはこの子の身体面を回復させてからだな。ガリガリ過ぎるし栄養あるものをどんどん食べさせよう。
「とりあえず健康的な身体になるまでは回復に専念させるか。色んなもの食べさせよう」
「食べさせて太らせるのは非効率的だし、あまり急激に体脂肪増やすのは良くないんだけど、そんなこと言ってられなさそうだから良い感じの体型にするよう医療班には言っておくよ」
「……あれ、食べて太らせる的なことはしないの?」
「もう整形した方が良いレベルらしいから整形で対応するよ。アキラってぽっちゃりしてる体型の方がもしかして好み?」
「そんなことはないけど胸と尻は大きい方が好き」
どうやらこの世界で太る方法として最もメジャーな方法は整形らしく、再度医療用ポッド入らされて眠らされた女の子に幾つかのチューブ的な物が繋がれる。別に針が刺さっているわけじゃないみたいだけど、あれでどんどん栄養的なものを送っているのかな。それかもうダイレクトに脂肪を入れてるか。
電気刺激的なものを与えて筋肉も鍛えているようなので、ポッドから出てすぐに自重のせいで動かなくなるということもないだろう。ただし流石に30㎏の身体を50㎏にまで増やすのはそれなりに時間をかけた方が良いようで、このまま1週間ぐらいは医療用ポッドの中で眠って貰うとか。何というか技術力が凄い。
身長は160センチ前後で、フィアより背が高いし外観での年齢は18才前後かな。……髪の毛がないのは可哀想なのでストレートのロングヘアにしてと頼むとこれも1週間程度で生えるそうなので恐らくこの世界にハゲはいない。
……父方の祖父も母方の祖父もハゲだった自分にとって、この情報はわりと朗報だった。何だかんだで色んな技術が発展しているんだな。というか女の子は髪型の自由度高いし、全員髪型を自分で決められるから全員可愛いのだろうか。
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