第57話 溶鉱炉

巨大空母の施設が充実し過ぎていてもうちょっとダラダラと過ごしたかったが、ステーションと同時に建設している溶鉱炉に火が灯り、稼働を始めた。これでようやく、スクラップの残骸が減っていくことだろう。ネルサイド協定から送られてくるスクラップの量がちょっと想定より多かったし、自分達も結構な頻度……というか両隣の星系に艦隊が入る度に狩っていたのでスクラップの山がもう惑星のようになっている。


「ようやく貯蓄が目減りする日々から抜け出せる……」

「採掘の方で結構稼いでいたと思うんだけど足りてなかった?」

「空母の戦闘機乗り200人が増えたせいでランニングコストは跳ね上がってるんだよ。これからは採掘隊の方もどんどん拡張して、大型輸送船も複数保有しないとだな」

「……大型輸送船を複数か。いよいよ大企業って感じがするね」


スクラップで得た利益を採掘隊につぎ込み、採掘隊で得た利益をステーションの拡張につぎ込み、余裕が出来たら艦船建造ステーションの着手も行いたい。……結局レプリコンが利用していた各種製造モジュールは無事に機能しているのでこれだけで十数億クレジットは浮いているんだよな。


「ひたすら艦隊を増やして……どうするつもり?」

「まあまずはレプリコンの領域の奪取だな。隣のベレーザ星系には居住可能惑星もあるし」

「ちょっと覗いてみたら人間達が家畜になっていたあそこね……」

「早く助けたいなと思ってしまったけどよく考えたらあの星系が分捕られたの結構昔だしもう完全に家畜化してるんだよな」

「……人間が実作業やる方がコスパ良いことって結構あるしね」


レプリコンの艦船をスクラップに買える作業を行っている最中、ベレーザ星系にある居住可能惑星を覗いてみたんだけど人間が機械の奴隷になっていた。星系基地の射程範囲内にあるので助けに行くのは星系基地を壊してからになるだろうけど、何かもう既に自我が無い状態っぽいから助けるのも違う気がする。


「これ以上人を増やす前に聞いておきたいんだけど、別の孤児院から雇っても良い?」

「あ、そろそろ優秀な12歳の層がいなくなりそうなのか。

別の孤児院でも良いけど当てはあるの?」

「テスミィに紹介状貰った。

あとあそこの孤児院、軍にも人員を毎年出しているからこれ以上今年の卒業生を採られるのは勘弁だって」


フィアとこれからの事を話すけど、これ以上あのイントール星系の孤児院から雇うのは難しそうなので別の獣人の孤児院から採用をするとのこと。まあもう500人以上雇ってるし、12歳の子達はほぼ全員……いや、1万人以上は居たはずだから12歳の層の約半分ってところかな。


軍に毎年一定数の人員を輩出していて、今年だけ無しというのは難しいだろうしこれ以上雇えないならしょうがない。それはそれとして『獣人の孤児院』というのは続行するのか。


「母星の外の男の獣人って完全に0なの?」

「探せばいるだろうけど見つけて母星に送るだけで数百万クレジットという結構な額のお金になるし、もしも送った男が優秀な男なら子種代の上がりを受け取るだけで一生遊んで暮らせるよ。……一応、シンカー解放戦線には多少なりともいるかな」

「そう言えば孤児院も優秀な男の子種を買ってるって言ってたしマジでそういう世界か。もし優秀な男じゃなかったら殺されるとか?」

「優秀な男じゃないだけで即座に殺されるようなことはないよ。……犯罪を犯した場合の係数が悲惨だから清廉潔白じゃないと生き残れないとは思うけど」

「犯罪の係数という存在が怖いんだよな……いや意味は分かるけどさ……」


獣人の男は、母星の外にはほぼ完全に0のようだし追加の孤児も女性率100%は維持しそう。というか遺伝子的に優秀か否かだけで犯罪を犯した場合の罪の係数が変わるって恐ろしい社会だな。


そう言えば、優秀じゃない男は子供の数が制限されているんだっけか。ということはそれを超えて子供が出来た場合は即懲罰もあり得そうで非常に殺伐としていそう。そりゃシンカー解放戦線なんて出来るわけだよ。その上この制度、普通に女性にも適用されるから優秀じゃないと地獄。


「溶鉱炉にスクラップ船を入れるわね」

「おー。船をそのまま入れるわけだからやっぱり滅茶苦茶デカいな。

……ちゃんと中にスクラップ船しかないことを確認してから稼働させてる?」

「そこら辺は生体反応がないかちゃんと確認してから稼働するわよ。

一応、スクラップじゃない船が入ってないか目視でも確認させるけど」


ステーションの管理運営のために雇ったアリアーナは、これからステーションの管理者として色々と仕事が増えそうである。太陽光パネルみたいな発電施設でエネルギーの供給が始まったからステーション本体は完成してないけど各種モジュールは1個ずつ稼働を始めた。……採掘部門から得た資源の精製や船体部品の製造も一括してアリアーナに管理させるから、たぶん滅茶苦茶忙しくなると思う。


何人か部下も付ける予定だし、採掘部門、戦闘部門に追加で製造部門がヒノマルサイクツには設立されることとなる。……たぶん一番大変な管理職になるだろうけどアリアーナは頑張れ。


いくら頑張って巨額の利益を生み出してもテラニドカンパニーとの契約上、定額使い放題状態なのは可哀想な気もするけど最低1年はこのままなんだよな。まあこの調子で頑張ってくれるならテラニドカンパニーからの引き抜きも考えておくか。

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