第51話 ステーション
大きな空母、というかもう動くステーションである『エルダープライズ』に乗ること2日。マレーザ星系への突入を開始し、星系入り口でスタンバっていたレプリコンの艦隊2つと戦闘になる。どうやら前回の奇襲のせいで少し警戒度は上がっていた模様。
「……戦車で歩兵を轢いている気分だな」
「そんな経験あるの?」
「いやないけど。向こうの総攻撃でもシールドジェネレーターによるシールド再生成速度の方が早いとは思わないじゃん」
しかし巡洋艦が2隻と駆逐艦が12隻という構成のレプリコンの艦隊との戦闘は、向こうの攻撃がこちら側に通じず、一方的な虐殺となった。……向こうから主力艦隊が来る前に、マレーザ星系とエレーザ星系内を綺麗に掃除してエレーザ星系のハイパーレーンの入り口を封鎖しよう。
「次こっち」
「はーい。
『右へ旋回します。乗組員は注意して下さい』」
空母に搭載されている方のマップにピンを立てて行き、フィアに空母を動かしてもらうけど操縦が上手いわ。シンカー共同体の母星で一通り艦船の訓練を受けているのはぶっちゃけ滅茶苦茶ありがたい。
この空母の場合、ドリフトしながら曲がらないと再加速に時間がかかるからドリフトしているんだけどこの巨体を計算通り曲がらせることが出来るのは一種の才能。一応船内放送しているけど曲がることによるGの発生とかはほとんどない。そして新たに遭遇する敵艦隊を一瞬で粉砕する火力。戦闘機を発艦させる必要もないとかもう空母じゃないなこれ。
というかブラックホールエンジンを搭載する空母って大抵エネルギーをシールドに全振りするんだけどテラニドカンパニーの最新鋭のシールドジェネレーターが優秀だから余ったエネルギーで武装まで出来てしまった感じ。戦艦並みに殴れる空母とか駆逐艦や巡洋艦を格納する必要性が無いし、設計が色々と中途半端な気はする。
「マレーザ星系はこれでクリア。いよいよエレーザ星系だけど……戦艦来たか」
「敵艦隊の規模は?」
「ハイパーレーン先に戦艦1、巡洋艦7、駆逐艦42、戦闘機多数って感じ。戦闘部隊は後ろに回って貰った方が良いな」
当然向こうも無抵抗ではなく、エレーザ星系にはレプリコンの艦船が集まり迎撃の準備に入っている。レプリコンの艦船って人間が操縦する前提の船じゃないから移乗攻撃で奪えないんだよね。スクラップにするしかないのがちょっと残念。
ハイパーレーンからワープアウト直後に襲い掛かって来るレプリコンの艦隊。流石にシールド値が削られ始めたけど容量が大きすぎてあまり効いていない感じ。あとシールドの種類的に、レプリコンの艦船相手だとメタが張れてるっぽい。
一方のこちらは、ガウス砲というシールドを剥がすための武器が主武装となる。これがレプリコンの艦船のシールド相手にメタを張れているようで、あっという間にレプリコンの戦艦のシールドが溶け、後続の巡洋艦や駆逐艦によるミサイル攻撃により爆散。機械にも撤退の概念があるのか逃げ始めたけど逃がさねえよ。
「対シールド特化のガウス砲がメインの空母って、敵地に殴り込みに行く前提の武装だよね」
「戦闘機は船体値にダメージが入りやすいエネルギー兵器が多かったから明確に役割を分けていたんだろ。っと、サンゴの隊がまた突出しているから撤退命令出しとこ」
追撃戦になったら戦闘機を展開し、物量で押す。……妨害電波が飛び交う戦場でも、ポイントを指定して敵味方関係なく一定範囲にメッセージを伝えるという芸当は可能だ。レプリコンが相手の場合は、特に上手く機能するなこれ。
というかこれ、味方位置を完全に把握できるからこそ使える手段だな。結果、レプリコンの艦隊は全てスクラップにして、曳航を開始。ゴミは一か所に固めて配置しておこう。
……お、流石にまだあったか。前回逃げ回っていた時は直接目視で見ていたわけじゃないけど、稼働していることはマップで確認出来ていた。
「あれって……」
「昔、レプリコンがとある企業から占領した『船体部品製造ステーション』だな。当然『船体部品工場』の他にも、元パーツである『チタンシリコン合金工場』や『精製チタン工場』、『シリコンウェハー工場』も増設されている。ここら一帯は資源が豊富だからな」
「まさか、占領する気!?」
「当然。元々人間が管理していたステーションをレプリコンが乗っ取っているけど、内部構造を全て改造している雰囲気はない。防衛設備は全部破壊して、ステーションに対して移乗攻撃を開始する」
「下手したら中に突撃した子達全員死ぬよ!?」
「……まあ占領出来なさそうなら中央のステーション部分だけ破壊して、各種の工場部分となるモジュールだけ再利用しよう」
この世界のステーションの基本構造は、まず中核となるステーション部分とドッグ部分。それに居住部分も増設して、後は目的に応じてモジュールが作られ増設されていく形となる。
今回の船体パーツ製造ステーションの場合は、わりとキメラ的に大きくなったステーションだ。レプリコンは特に改造することもなく、そのまま活用している感じだろう。このステーションの存在こそが、自分がこの星系を選定した一番の理由でもある。
採掘した資源を買い叩かれるから自社で工場を持ちたい。でも工場を建設するのは高い。それなら、奪っても文句を言われ辛いところから工場を奪えば良い。幸い、レプリコンや宙賊に奪われた物資は、再強奪をしても元の持ち主に返還しなくて良い。
というか元の持ち主に返還する必要があるなら宙賊狩りをする冒険者がいなくなるわ。そしてレプリコンに奪われたステーションの再強奪ついて、ラドン連邦相手にアリアーナが確認したところ「ヒノマルサイクツの持ち物にして問題ない」との返答があった。
というわけで、レプリコンの保有する船体部品製造ステーションへ攻撃を開始。既にエレーザ星系にいるレプリコンの艦隊は壊滅しているから、冷静に1つずつ防衛設備を攻撃するだけだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます