第48話 空母

残りの中部屋は、獣人の子達がよく遊びに行ってる施設とかを追加しておこう。3Dのボーリングというかビリヤードというか、特定空間だけ重力発生装置を切って生み出す無重力空間にボール投げ込む遊び。


自分はルールすら知らないけど、あの子ら10㎏ぐらいはあるボーリングの球を普通に狙った空間へ投げ入れているから身体能力が化け物過ぎる。自分は1回だけ投げ入れようとして、肩痛めたので二度とやらないと決めた。


……これ自分が貧弱過ぎるのかなあ。というか絶対本来は投げ入れる側の空間も無重力状態で楽しむ遊びだろこれ。獣人との文化の違いというか、フィジカルの違いはどうしようもないな。


「イザベラやシルフィも何か希望あったら言えよ」

「あ、でしたら何か生き物飼いたいです」

「私は図書館が欲しいですね」

「……スペースはアホほどあるから植物園とかも作るか。生き物はなあ……まあ手のかからない生き物なら良いけど変な生物は持ち込むなよ。図書館は自分も欲しいから設置するわ」


中部屋の内装としては植物園やらペットを飼う部屋も作り、希望を纏めて建造所に提出。大部屋に関してはプールやら大浴場やら筋トレルームやらの内装を納品1週間前に追加発注したのに納品日が変わらなかったことから、よくあることらしいし、そもそも内装の締め切りが一週間前だからこれが平常運転だとかアリアーナに教えられる。そう言えば内装決めとけよという連絡が来たのは納品2週間前だったし、マジでこのスケジュールが普通なのか。というか既に箱自体は出来ているんだろうな。


そして先に追加で買っていた駆逐艦2隻の方が納品されたため、イチカとニノをそれぞれ駆逐艦の艦長に異動させて8機の戦闘機の指揮も取って貰う。採掘隊隊長の後釜はシーラとゴールディで良いか。となると追加の採掘人も必要と。またフィアがイントール星系に行ってるけどもう採掘隊の一般隊員ぐらいは孤児院側に選抜任せたら良いのに。


「……ねえ、護衛の駆逐艦の艦船情報の履歴を見たらマークが何回も変更登録されているんだけど」

「ああそれネルサイド協定襲う時にネルサイド協定のマークとほぼ同じマークに一々変更登録していたからその履歴だな」

「艦船情報の偽装はどこの勢力でも犯罪って知ってるわよね?」

「艦船情報の偽装はしてない。ただ登録マークを何度も変更しただけだ。ちゃんと登録変更の料金は支払っている」


しばらくはレントール星系で採掘の日々だなと思って輸送船に乗っていると、アリアーナに艦船情報の履歴を見られて一悶着起こる。元査察官の性がそうさせるのか。もうアリアーナも一応うちの社員の一員なんだけど。


この世界では企業登録の際にロゴみたいなのを登録出来るし、ヒノマルサイクツはヒノマルにツルハシのマークで登録をしている。そしてこれ、変更すること自体は特別違法ではない。


駆逐艦や戦闘機などの艦体にはこのマークがデカデカとホログラムで表示されるのが一般的なんだけど、要するにネルサイド協定に極めて似たマークに変更登録すれば、ネルサイド協定所属の艦船に見える。


で、あれだけネルサイド協定がザルだった最大の理由がこのマークと船体番号だろう。船体番号は変更が出来ず、最初の何桁かまでは希望の番号を付けられるが、残りの番号は自動的に決まる。


そしてネルサイド協定の艦船番号は2304から始まる船が多く、自分が拿捕した駆逐艦や巡洋艦は全て2304から始まっていた。……あいつらたぶん艦船情報を見て最初の4桁とマークしか見てなかったんだろうな。艦船情報の詐欺は重罪だし誤魔化そうとして来る存在があまりいなかったんだろう。


「この船も、この船も元ネルサイド協定の船。もしかして、駆逐艦以上は全部?」

「いや新しく買った2隻の駆逐艦に関しては自力で購入した艦船だぞ。それ以外はまあ……奪った」

「………………」

「移乗攻撃用のポッドと移乗攻撃用の人員が輸送船に乗り込んでいる段階で察せないの?」

「フィアさん貴方も染まってるわよ……」


テラニドカンパニーの元査察官で超エリート人間が絶句しているところを見るに、自分達は異常な道のりを歩んできたんだろうな。


「ところでアリアーナに聞きたかったんだけど星系を保有する一勢力として独立を果たした場合はネルサイド協定との停戦無くなるよな?」

「……ラドン連邦の外交関係を引き継がない場合はそうなるわね。と言っても、ラドン連邦の判断次第だと思うけども」

「……ラドン連邦との関係さえ保っていればラドン連邦の外交関係って引き継がない方が良くね?」

「それをテラニドカンパニー所属の私に言われても答えようがないわよ。

一応、ヒノマルサイクツはテラニドカンパニーの『有力な提携企業』にまで成長しているから、少なくともテラニドカンパニーとの関係は安泰よ。私のような高度人材まで派遣されてるしね」

「つまり、ネルサイド協定との停戦は切れると」

「……上手く行けばね」


星系を保有し独立勢力になってしまえば、ネルサイド協定との停戦も無くなる可能性があるそうなのでそれには期待しておこう。ラドン連邦との関係についてはまあ……アリアーナが頑張るでしょ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る