第31話 星系基地
レントール星系に移動したころ、マレーヌ星系の星系基地が破壊されたという報告が入る。たぶんネルサイド協定が破壊して本格的にラドン連邦との戦争を開始したな。同時にマレーヌ星系の更に北、イレーヌ星系とディレーネ星系の星系基地も破壊されたようで、3つぐらい艦隊を持っていることも把握。たぶんマレーヌ星系に来た艦隊と同戦力を3つ持っているということで良いかな。何だこのマフィア達。まあそのぐらいの戦力が無かったら4つの勢力が戦っていた宙域の確保は出来ないか。
当然マレーヌ星系の星系基地を破壊した艦隊は、エレーヌ星系にやって来るのでさっさとレントール星系にまで脱出。そこから更にハストール星系にまで逃げるけどもうなりふり構わずレントール星系の駐屯軍とハストール星系の駐屯軍にマレーヌ星系で見たネルサイド協定の艦隊規模を連絡。
「……で、何で自分達が軍に拘束されないといけないんですか?」
「ネルサイド協定に対して、挑発行為を繰り返しラドン連邦の軍を隠れ蓑にしていたお前達にも戦争原因があると判断したからだ。……つい先ほどネルサイド協定からの宣戦布告もあったが、お前の名前を挙げているところを見るに随分と好き勝手やったそうだな?」
「ラドン連邦の模範的な国民として、禁制品を扱う悪い宙賊達を撃退し続けただけです」
「……まあ安心しろ。既に首都星にも北西第四セクターで起きた戦争については連絡が入っているはずだ。すぐに即応艦隊がやってくるさ」
そしてハストール星系の駐屯軍に敵戦力の情報を伝えて逃げようとしたところで軽く軍人さん達から拘束を受ける。というか宇宙港の職員達に2ヵ月ぶり2度目の取り押さえを食らった。最初の時もここハストール星系だったので既に顔馴染みの面子でもある。
自分を初めに保護して色々と説明をしてくれたおっさんも採掘ギルドの面々を集めて戦える面子を選出しているようで、色々と忙しそうだった。……うん、5隻も駆逐艦を奪ったのはやり過ぎだったと思ってるんだ。ネルサイド協定がキレるのは仕方ない。
でもそれはそれとして、このラドン連邦への攻勢は元から予定していたものだろう。前回、宙賊達を使って威力偵察をした結果、ここら一帯の星系を確保出来るとネルサイド協定は踏んだようだ。想定外なのは駆逐艦が5隻も奪われたことだけだろうな。
せっかくハストール星系に逃げ帰ったのに、3隻目を売り払ったことで修理が出来た4隻目と5隻目の駆逐艦を引き連れてレントール星系の駐屯軍に加わる。ハストール星系の駐屯軍と、壊滅していたエレーヌ星系の駐屯軍の補充艦隊も集まっているから結構な大戦力だ。
「……エレーヌ星系には向こうの3艦隊が揃うだろうから、規模としては巡洋艦10隻以上、駆逐艦は60隻程度だろうな。明らかにこちらの方が数少ないぞ」
「エレーヌ星系はともかくレントール星系の星系基地まで破壊されたらラドン連邦は相当不味いからラドン連邦も必死に対応する、と思いたいけど即応艦隊が来てない時点で相当不味いかも」
「……?ラドン連邦って結構死に体なのか。南からも攻撃受けているんだよな?」
「パラディ社に攻撃を受けてるね。そっちもかなり苦戦はしているみたいだけど、星系基地が陥落はしてなかった……と思う」
フィアと話ながら、状況を整理。ラドン連邦は結構敵も多い。というかこの宇宙、わりと戦争が多いようだし小勢力が援助を受けて大勢力相手に宣戦布告することもそこまで珍しいことじゃないとか。シンカー解放戦線なんかも元は超弱小勢力だったけど、パラディ社という南にある勢力に援助を受けて何とかシンカー共同体相手に戦っている感じ。
……テラニドカンパニーがこのネルサイド協定に援助を続けているのは、ネルサイド協定が暴れれば暴れるほどラドン連邦で艦船が売れるからだろうな。死の商人は戦争が起こらないと死んでしまうから戦争を煽るしかないとはいえ、友好国に敵対的な組織を作ってそれを援助するのはえげつない。
あとはネルサイド協定が略奪で収益を上げれば、そのお金も艦船の売買を通じて全てテラニドカンパニーへ入って行く。……武器を売って勝手に争えって言う立場は儲かるだろうなあ。両方の勢力に武器を売れる状態なら相当美味しい商売だろう。
これを大規模にやっているんだからラドン連邦の企業ランキングもテラニドカンパニーが1位に来るわけだ。……冷静に考えて、他国を運営している会社が自国の中でも一番規模の大きい会社とか色々と不味い気がする。
「ヒノマルサイクツは傭兵団登録をしていないようだが……駆逐艦4隻に戦闘機60機だと!?一介の採掘業者が持ってる戦力じゃないだろ!?」
「本当に一介の採掘業者なので一番端の戦列にポツンと置いてくれませんかね」
前に見た軍のお偉いさんにお願いして戦列では一番端を希望したら希望が通って右端に布陣することになった。よっしゃこれでいつでも逃げられる。……まあ本当にここで逃げたら自分の立場が非常に不味いことになるのは理解してるから逃げないけど。あとついでに駆逐艦や巡洋艦の拿捕チャンスがあったらちゃんと拿捕しに行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます