第30話 領有権
現在ネルサイド協定から駆逐艦の強奪を繰り返しているマレーヌ星系は、一応ラドン連邦の領域内ということになっている。これは星系毎にある領有主張のための星系基地というものを、ラドン連邦が作っているからだ。
この世界では星系の領有権の主張のため、中央付近には必ずこの星系基地というのがある。シールド値は高く、生半可な攻撃では壊れない上、星系基地の防衛プラットフォームが滅茶苦茶強いからこれを破壊しようと思ったら真面目に駆逐艦が複数隻、出来れば10隻は欲しいレベル。
ただ、攻撃可能な範囲は狭いから中央だけ避けていれば宙賊だろうが犯罪組織だろうがその宙域には留まれる。防衛艦隊が付随していることも珍しくはないけど流石に全星系にそんな艦隊を置くのは非現実的だな。
そしてこの領有権主張のための星系基地は、設計図さえ持っていれば5億クレジット程度で作れるらしい。たった50億円で星系丸々持てるってマジ?ただ当然、先に星系基地を建てている所があればまずはその星系基地を破壊しないといけないし、そうなればその勢力丸々と敵対することになる。
……ネルサイド協定の本拠地があるシレーネ星系には、ネルサイド協定がこの星系基地を建てている。要するに星系基地を建てられるだけの財力があり、その星系基地を守るだけの戦力もあり、規模としては滅茶苦茶大きい。だからまあ、駆逐艦はわりとポンポン買えるんだろうな。
「4隻目と5隻目の駆逐艦確保は同時進行になるなこれ。
今回は宙賊基地も破壊するし回収するものは多そうだ」
「駆逐艦2隻、戦闘機20機の艦隊から駆逐艦を強奪しに行くのはもう相手の想定を超えているだろうね」
「戦闘機の降伏が増えきたのは僥倖。それにしてもフタエちゃん凄いな。2隻目の駆逐艦の艦長はフタエちゃんで正解だったわ」
「……修理がまだの3隻目に加えて、これで4隻目と5隻目も修理しなきゃいけないんだけどお金あるの?」
「ないから3隻目は売り払うよ。テラニドカンパニーに聞いたら1隻2000万クレジットで買い取ってくれるってさ。
今晩は全員に10万クレジット配るわ」
「……その売り払った駆逐艦を、またネルサイド協定が買うなら良いサイクルになりそうだね」
最近の駆逐艦狩りの成功っぷりにフィアですらドン引きしているんだけど個人的にはネルサイド協定側の対応が雑。1隻だと狩られるから2隻にして護衛の戦闘機も増やしましたってあまり意味のない対策だと思う。
ちなみに今回の襲撃では無事に駆逐艦を2隻拿捕し、戦闘機も逃げ遅れた3機が投降してくれた。戦闘機は基本的に売却方針で結構良い値段になるから美味しい。宙賊基地には宇宙大麻の他に船体部品やらわりと高値で取引される香辛料や修理ドローンの類を溜め込んでいたので非常に戦果が美味しい。……香辛料の方は真面目な商売しているんだからこっちだけやれば良いのに。
というわけでヒノマルサイクツの戦力としては駆逐艦が4隻、戦闘機も追加発注を繰り返して60機と膨れ上がった。どう見ても一介の採掘業者が保有して良い戦力を超えていると思うけどこういう企業もそこまで珍しくないようなので2度目の査察官はまだ来ていない。
しばらくは修理待ちの日にするかとエレーヌ星系で氷の採掘をしていたら隣のマレーヌ星系にネルサイド協定の本軍が襲来。巡洋艦4隻に駆逐艦20隻ってマジ?伊達に殺戮機械のレプリコンやシンカー共同体やシンカー解放戦線相手にドンバチしてチョークポイント確保してないわこの勢力。
しかも宙賊の数も異常。前の戦争の時に宙賊の戦闘機が1000機いたから1000機なら驚かないけど2000機ってマジかよ。本拠地の防御は本当に出来ているのかこいつ等。
「不味い。ネルサイド協定の本軍っぽいのが来た。シルフィは休みにした戦闘機隊の面子を全員集めてくれ。一旦レントール星系に逃げるけどレントール星系の駐屯軍でも持ちこたえるか怪しいぞこれ」
「……相手は駆逐艦何隻です?」
「巡洋艦4隻と駆逐艦が20隻。その上コルベット含む戦闘機が大小合わせて2000以上」
確かレントール星系の駐屯軍は巡洋艦2隻と駆逐艦6隻。ああいや、今確認したら駆逐艦は8隻に増えているな。これ交易ステーションや酒場ステーションの防衛プラットフォームも含めたら何とか相手出来る……?
「向こうも駆逐艦が更に2隻拿捕されたと知ったら動きは慎重になると思うから何とかなると思うけど……レントール星系で迎撃するの?」
「いやレントール星系からは逃げる。ハストール星系から逃げたら修理している駆逐艦が回収されるから迎え撃つならハストール星系だな」
レントール星系の駐屯軍相手にネルサイド協定の巡洋艦4隻、駆逐艦20隻が攻めて来ますと伝えても良いんだけど信用されるかは別問題。まあまずはレントール星系にまで移動してから考えるか。
恐らくエレーヌ星系の交易ステーションはまた落ちる。まあ2回目だし職員さんももう慣れてるでしょ。一応ネルサイド協定側は、交易ステーションの人員をある程度そのまま働かせていたそうだし外道達の巣窟って感じではないのかな。
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