第20話 襲撃
今日も今日とてエレーヌ星系に入り込んできた宙賊を指定して倒そうとしたところで、赤点が増え続けることに気付く。……大規模な宙賊だなこれ。100隻以上いるんじゃないか?
流石に自分達だけで何とか出来る勢力じゃないので今日は交易ステーション内でじっとしておこう。……えー、この星系の駐屯軍は駆逐艦1隻、コルベット2隻、大型戦闘機16機、中型というか普通の戦闘機が68機。
……これ駐屯軍だけだと宙賊の対処は難しくないか?いや、今この交易ステーションにいる冒険者の数が342人いるから何とかなるか。と思ったらネルサイド協定所属というマークが付いた船も100隻以上入って来たので一刻も早くこの星系内から出る決意をする。絶対前回の宙賊基地で薬物奪って売り捌いたのバレてるなこれ。
「いきなり全員で移動って……私達、物じゃないんだけど」
「宙賊の船が150隻以上、ネルサイド協定の船も100隻以上来ている。どんどん増えているし、ネルサイド協定に至っては駆逐艦すら出て来てるぞ」
「ええ……?
……すぐに北東第四セクターに向かって移動した方が良いね。特にレントール星系なら1000人以上の冒険者もいるし、大型船を保有している冒険者も多いから」
「この星系の交易ステーションにもある程度は戦力あるはずだからそんなに心配しなくても良いです」
「この星系の交易ステーションの保持戦力は駆逐艦1隻、コルベット2隻、大型戦闘機16機、中型戦闘機68機しかないから真面目に壊滅する恐れあるぞ」
「ええ……?
何で交易ステーションの防衛戦力が分かるです……?」
明らかにヤベー連中らに目を付けられたっぽいので全速力で逃走を開始。幸い、向こうはまだこのエレーヌ星系の隅っこで宙賊達の集結を待っているような状況だったのでバレてないと思っているのかな。
その間にレントール星系へ向けて移動を開始し、全員が交易ステーションのドッグから発艦した辺りで300近い赤点が星系の中心にある交易ステーションに向かって移動を開始するけどもう遅い。
しばらくして、彼らが交易ステーションを包囲したけどその時既にレントール星系方面のハイパーレーン手前まで移動しているのでその包囲は無意味である。
「ルノー宙賊団リーダーのルノーだ。ヒノマルサイクツのリーダー、アキラという者を差し出せ」
「ちょっと待て。
……そのような者はこのステーションにいない」
「何?
隠す気なら容赦はせんぞ」
星系内全域への通信チャンネルで会話をする自称ルノーさんと交易ステーションの通信役だけど、これもしかして公務員がヤクザと通じているやつか?もし交易ステーション内に居たら、引き渡されていたのだろうか。ちょっと色々と怖すぎるわこの世界。
そしてしばらくやり取りがあった後、宙賊側の船が交易ステーションへの攻撃を開始し、交易ステーションの防衛プラットフォームが火を噴く。遠くから眺めている分には面白いなこれ。交易ステーションの配信されている監視カメラから艦隊同士の戦争映像が見れる宇宙世紀最高。
「ちょっと、早く移動しないと!」
「いやー、どっちが勝つかは見ておいた方が良いんじゃない?あ、冒険者達も出て来た」
フィアに移動を急かされるけど、どちらがどう勝つかまでは把握しておいた方が良いだろう。マップは逐一見ているから、本当にヤバくなる前に自分は逃げれる。それなら観戦してても良いよね。
……ネルサイド協定とマップでは表示されているけど、交易ステーション側は宙賊が襲ってきたとしか認識していない。交易ステーションと宙賊で通じているわけでもないのか。まあ本格的に通じていたのなら戦争はしていないだろう。
……それにしてもネルサイド協定の駆逐艦はでかいな。たぶん全長で1キロ近い大きさはある。中型戦闘機を6機、大型戦闘機を1機格納できるみたいでカタログスペックを聞いただけでも欲しくなるわ。たぶん自称ルノーさんがあの駆逐艦に乗っているんだと思うけど、ネルサイド協定内で結構偉い立場の人間と予想。でもリーダーではなさそうかな。
お、駆逐艦から戦闘機が出て来た。本格的な空母だと200機格納出来ることも珍しくないこの世界。艦船事情はもうちょっと調べておこう。
……やがてネルサイド協定側が優勢となり、冒険者達が逃げ始めた。一部は包囲を抜け出してこっちに来るだろうから自分達も移動しよう。これでこのエレーヌ星系はステーションのない宙域になったから……たぶん自分達が来る前よりも治安は悪くなるだろうな。
この星系を通れないと色々と不便そうだし、ラドン連邦も動くとは思うけどそれまでの間は被害者が大量に出そう。あの規模の宙賊を纏め上げるネルサイド協定は、何者なんだろうと思ったけどたぶん薬物の生産者だろうし儲けている宇宙ヤクザってイメージで良いかな。
……あれでテラニドカンパニーの有力な提携企業ってマジかよ。というかこの宙域のチョークポイントを抑えている勢力があれか。恐らく全方位に喧嘩売りながら、援助を受けるムーブを繰り返す、一番厄介な存在。
「たぶん厄介な連中に目を付けられたっぽいけど……これからどうするの?」
「え?どうせ交易ステーションが落ちたらすぐにエレーヌ星系内から多くの艦船が撤退するだろうし、そうしたら絶好の狩場になるから戦闘機増やして狩る」
「……それって安全?」
「ハイパーレーンの先で待ち伏せしているか否かまで分かるから安全だとは思うよ」
ただ隣の星系であるレントール星系までは出しゃばって来ないことも分かっているので、こちらから適度に仕掛けて宙賊を狩るムーブは楽に出来そうだ。挑発になっているかは分からないけど、挑発になっていたら良いなあ。
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