第7話 宙賊
「たった2時間で800Pまで埋まったんだけど……本当に凄いよ。一回戻って、もう一回来る?」
「こっちも1000Pまで埋まったからもう一回頑張るかあ」
レントール星系に来て採掘を始めたけど、自分が作業に慣れたこともあり僅か2時間で1000Pまでチタンを回収することが出来た。……これで5万クレジットとか本当に美味しい職業だなあ。
ただ一時的採掘領有権は保護期間中の定額100クレジットから跳ね上がっているので、今回は1回で900クレジット取られた。10時間しか効果がないので、一回交易ステーションまで戻って、また同じ小惑星帯の場所に戻って来て採掘をしているとコンテナの中身をスキャンされて通信が入る。……スキャンで岩石の中身は分からないけど、コンテナの中身ならこちらの画面で管理しているからそれを読み取られた形だね。
「チタンが大量じゃねえか。さっさと出しな」
「アキラ!100Pを射出してすぐ逃げて!」
唐突にチタンを出せと言って来るのは、右前にいる宇宙船。この世界のヤクザというか、宇宙の迷惑者である宙賊だった。威嚇でレーザー光線を撃って来るのマジで怖い。宙賊はマップだと赤い点で表示されるし、資源を掘りながら、適度にマップも見るべきなんだろうけどちょっと掘るのに集中し過ぎていて無理だった。
まだ2回目の採掘は129Pしか掘ってなかったけど、その内の100Pを射出して、自分は反対方向に逃げる。採掘船で宙賊と遭遇した時は、必ず戦うなと採掘ギルドのおっさんから教えられてる。
彼ら宙賊の宇宙船は重武装化をしていることもあり、一介の採掘船が敵う相手ではない。ドローンとかいっぱい積んでいる分、コンテナが大きくて速度が遅い分、戦闘では超弱いし武装も貧弱。よほどのベテランでも撃退するのは難しいから逃げるのが吉。
今回の敵が1隻なら2対1で僅かに勝利も期待出来たけど、2対2じゃ手も足も出ないだろう。そもそも自分の機動戦の評価はシミュレーターでF判定である。下から2番目でド素人と大差はない。というかド素人だ。
「すぐにフライトモードを起動して全速力で逃げるよ!」
「了解!」
フィアさんも同様に80Pを射出して、即座に反転。海賊たちは舌打ちをした後、放出された資材の方へと向かった。まあ自分達を追いかけていたら射出した資材が延々と宇宙の果てまで飛んで行くし、自分達を爆発四散させて回収する資材よりも放出した資材の方が多ければ宙賊はそちらを追いかける。
というか普通の小型戦闘機はコンテナを拡張してないと100Pしか積めないし。これで自分達を追ってくるような宙賊は基本いない。十分な距離を取れて安心したところで、ちょっとイラっとしたけどまあ宙賊に襲われるのは不運だからしょうがない。
「あー!もう最悪!2回目の稼ぎ0だよ!」
「まあ1回目で襲われてなくて良かったんじゃない……?
でも宙賊が現れたならしばらくあそこで採掘出来ないの困るな」
「それに関しては冒険者ギルドに護衛の依頼出しに行くよ。……小規模な宙賊なら、あの子に依頼出したら大丈夫だから」
交易ステーションにまで逃げ帰って、宙賊が居たという報告だけして今日の採掘業務は終了。結局1回目の稼ぎしかなかったけどそれでも1日で5万クレジットは大きい。お金はどんどん溜まるし、大型採掘船も結構すぐ手に入りそうかも。
そう思ってイライラしているフィアさんに大型採掘船の値段を聞いたら500万クレジットと言われたので当分は先になりそう。この上に特大型採掘船があるんだけど映像で見るだけでも超大きい。ステーションが小さく見えるレベル。
この日はフィアさんが酒場ステーションまで行ってくると言って別れたけど、たぶん明日から冒険者に護衛の依頼を出すのかな。……酒場に冒険者って、この世界の中世時代の名残なのかな?凄く違和感ある名前だ。
とりあえずこのレントール星系での宿を確保して、自分も通信用の端末で冒険者ギルドについて調べてみる。えっと……一番上の階級は大将で、一番下は三等兵。
……?
あ、この冒険者って戦争とか有事の時には自分の戦闘機で従軍しないといけないんだ!?冒険者ギルドでの階級が、そのまま従軍時の階級になるから冒険者ギルドのランクはそれに合わせている、と。
あれでも冒険者ギルドの階級が少佐だからと言って、いきなり有事の際に少佐になれるの?元々の軍人とかどうするの?
そう思って色々と検索した結果、冒険者ギルドで士官まで上がるような人は大抵化け物級の人だから戦局に影響を与えるほどの働きが個人で出来てしまうらしい。あと艦隊指揮については1つ下の階級の正式な軍人が副官として配属されるから、実際には艦隊指揮を行うのはその副官の人だ。
というか冒険者ギルドで佐官の人が全宇宙に12人しかいないし将官に至っては1人しかいないからそんなに簡単に士官以上にはなれない感じか。あ、でも尉官は結構いるな。名前は全部書いてあるんだけど数えきれないぐらいにいる。
冒険者ギルドは何というか、輸送から護衛まで、宙賊狩りやら宇宙怪獣狩りやら何でもやる感じで、三等兵が新人、二等兵で少し心許ない、一等兵で並みという評価。特等兵だとかなり腕の立つパイロットらしいので軍に交ぜても大丈夫な感じ。一般的に軍に招集されるのは一等兵以上とか何とか。
……護衛をフィアさんが雇うっぽいけど、口振りからして知り合いに依頼をする感じかな?どのぐらい腕の立つパイロットかは分からないけど、一等兵か特等兵ぐらい強かったら今日みたいなことは起こらなさそうだから安心出来そう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます