第2話 小惑星帯での採掘

安全講習とかも凄く手短に伝えられ、いよいよ実践で船を動かすわけだけどある程度は自動操縦が可能なので勝手に目的地である採掘地までは移動できる。その間に、自分がやることを確認しておこう。


今回は同じ星系内にある小惑星帯へ行って、シリコンを掘るそうだ。まあメインがシリコンなだけであって、他の鉱物やら資源を持ち帰っても特に問題はない。この採掘船には簡易的な自動精製装置までついているし、纏めて資源は国に買い取って貰える。


目安はシリコンをこの船のコンテナいっぱいまで入れて、容量は100パック。価格は容量いっぱいで500クレジットということは1P(パック)で5クレジットかい。あまり高くない資源だな。2往復はしないと船の貸与代だけで赤字になる。


あれでもおかしいな?このマップだと結構高額で買い取られるというチタンやプラチナ、あとはガスでメタンやヘリウムとかも資源の欄にはある。シリコンが一番埋蔵量多いと言うか桁違いに多いけどそれ以外も結構あるんじゃないのこれ……?


そしていざ現場につくと、モニターで見ただけでは岩がゴロゴロあるだけの空間が広がる。シミュレーターでは適当にレーザーを照射して破砕して、それを回収するだけだったけど……。


……ここで目の前に浮いているマップを、資源モードに切り替えてから目の前にかざすと、どれを壊せば何がどれぐらい出て来るのかが分かる。しかも埋蔵量が多い岩は色が付く便利機能まであるから一目でどれを壊せば良いかは分かる。


とりあえず、この一帯が一番希少資源の埋蔵量は多そうだからここで一時的採掘領有権を主張して、政府にお金を100クレジット払うけどこれも給与から天引きかよお。そして紫色での表示がされているプラチナから採掘を開始。こいつら1P100クレジットする高額鉱石だし、3往復分ぐらいならここにはある。


ひたすら採掘レーダーを当て、小惑星を破砕し、ドローンで自動精製装置に突っ込む作業を繰り返すこと2時間。コンテナがプラチナでいっぱいになったので引き返そう。


「戻りましたー」

「おお、早いな。シリコンがいっぱい出る当たりの宙域でも引き当てたか?」

「プラチナ100パック、10000クレジットでお願いします」

「……はあ?」


最初に説明してくれたおっさんは、プラチナを満タンまで積載した自分を見て驚愕しているけどこれで判断はついた。たぶんこのマップ自体が自分のチートであると。ゲームだとよくあるような画面だったから感覚は麻痺していたが、当てずっぽうで掘ってるのが平常ならこの戦果はおかしいだろう。


……何でこれだけ技術が発展しているのにも関わらず、事前にセンサーとかで調査出来ないんだろう。まあ岩石を破壊しないと中に入っているものまでは分からない、というのは分からなくもないけど。調査するよりガンガン破砕した方が早そうだし。


小型採掘船は1隻10万クレジットで購入が出来る。それまではこれで稼ぐか。いや、30万クレジットまで貯めて中型採掘船の方が良いかな。コンテナが10倍の1000パックまで入るし、往復に結構時間がかかるからそれを短縮出来るのは大きい。


とりあえず今日はこの後3往復して、30000クレジットを受け取る。日給30万円とか宇宙のお仕事楽しいなあ。周囲の人は大体1000クレジットしか稼げてないのはもう見ないことにする。


……ランニングコストは貸与代600クレジットに含まれているそうなのでかなり良心的だな。採掘領有権と合算しても700クレジット。流石は保護した人を働かせる施設だ。自分の場合は今日だけ840クレジットだけど、明日からはちゃんと事前に払えるから700クレジットで済む。事前に金ないと2割増し、というのは高いような気もするけどむしろ安いぐらいだな。


そんな生活を5日間も続ければ、15万クレジットまでお金が貯まった。これは中型採掘船を買うまで貯めた方が良さそうだなと思ったところで、声をかけられる。


「ねえ、貴方が最近噂のラッキーディッガー?」

「誰だそれ。知らん。というか誰?」

「昨日貴方の隣で採掘していたフィアだよ。……貴方の行動を見ていたけど、もしかして埋蔵されている資源が一目で分かるの?」

「……いや、偶然だろ。たまたまじゃないか?」


……猫耳が生えている美少女から声をかけられるとは自分も偉くなったなあと浮かれていた時間はほんの僅か。直後に自分の持つスキルというか特権を言い当てられ、誤魔化すもぐいと顔を近づけて来るフィアさん。勘弁して。


「偶然かあ……。ねえ、良い領有権を売って?1万クレジット出すよ」

「……持ってるのは中型採掘船か?」

「うん。私は保護期間の素人じゃないから、国に結構な額のお金を払って採掘もしている。だけど、貴方の今週の稼ぎが私の今月の稼ぎを抜いていてるのは流石におかしいよ?」


自分だけの優位性を、他人に売り渡す気にはなれない。というか保護期間中に国から買った一時的領有権って売れないようになってるから売ったら犯罪者じゃねえか。騙す気満々だなこの女。


「え、騙すつもりはないというかそれだけお金を稼げるなら早く自前の小型採掘船を買って1人で掘る方が楽だよ?保護期間中は買い取り価格が半額になってるの知ってる?」

「何も知らない素人で悪かったな。そうか、あの価格は半額なのか」

「……あなたってもしかして稀人?」

「そうだけど?」


会話をしていると重大事項として、保護期間中の買取価格は半額になっているという。こりゃ早めに船は買った方が良いな。そしてフィアさんが稀人かと聞いてきて、そうだと答えたらぱあっと笑顔になる。うわ美少女の笑顔眩しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る