スペース炭鉱夫による成り上がり
インスタント脳味噌汁
第1話 見知らぬ世界で身元無し
ある日、眼が覚めるとそこは広大な宇宙ステーションだった。
どこまでも広がる夜空には無数の星々があり、何故今自分が呼吸を出来ているのか不思議なぐらいには宇宙が間近にあった。後で知ったことだが、ステーションには重力のお蔭で一定濃度の酸素を含む大気があり、よく分からない技術で膜みたいなのも張っているから基本的にステーション上は安全らしい。
周囲をキョロキョロと見渡すと、明らかに人間じゃない生物も歩いている。トカゲっぽい顔の人間とかはあまり直視したくないな。本当、何でこんなことになっているんだろう。
夢かなと思いつつも、歩き始めるとここはステーションの中でもかなり広い空間で、色んな船がドッグに着陸しては人が行き来をする、ステーションの玄関口であることを把握する。なんというかSF感がすげえ。1人乗りの宇宙船とか憧れる部分はある。だって男の子だもの。
……そう思った瞬間、一瞬股間の方へ意識を向けるけどちゃんとついていることを確認。異世界に転生する作品ってTSするのも珍しくはないんだけど、ちゃんとあるのはホッとする。
そして挙動不審な態度から、警察みたいな服を着た人達に囲まれて小部屋へ連行される。体格の大きいおっさんに囲まれてプルプル震えていたのは内緒。身分証明できるもの?そんなもの自分にはないよ。
「凄いな。乗って来た宇宙船もなく、生体コードの登録はなし。市民登録さえされていないとは……どこから来た?」
「惑星の名前は地球で、国名は日本ですけどここでの名前が地球かは分からないです」
「惑星チキュウね……登録名では無し。現地民族の言葉か?」
「はい。おそらく、たぶん……そうかと」
ついでにいうとお金もないし食糧もない。乗って来た宇宙船なんかあるわけがない。気が付いたらここに居たんだから。……日本では一般男子大学生だったけど、体格とか何も変わらなかったし鏡見ても顔が変わってなかったからたぶん何も変わってない。
質問が終わり、これからどうなるのだろうと狭い取り調べ室の中で絶望していたら、職員さんはニッコリ笑って「間違いなく稀人だな!」と言う。どうやら自分のような存在は数十年に1回、もしくは数百年に1回現れるようで、非常に珍しい存在とのこと。稀人を騙る人間もたまにいるが、ここまでの本物は見たことがないとのこと。
これは保護ルートがあるんじゃないかと期待したところで「じゃあ身分証明書の発行のために1ヵ月働け」との通達を受ける。……え、この近未来感溢れる世界でも労働ってあるんですか……?
しばらく職業について説明を受けていたけど、とりあえず自分に向いてそう……というかやりたいのは炭鉱夫かなと思ったのでそれを志望する。あの最初に見た宇宙船を貸して貰えるようで、小惑星帯へ行って小惑星を破砕し各種資源を回収するお仕事らしい。
正直、かなり難しそうな気もするけど……何か自分に特殊能力がないか色々と試していたらマップ画面を開けたんだよね。ステータス画面ならぬマップ画面が眼前に浮いていて、今いる星系についての情報が載っている。
もしかしたらこの世界の住民の標準装備なのかもしれないけど、このステーションの周りには小惑星帯があり、なんか資源の埋蔵量も多いっぽい。
政府の保護下での採掘だから宙賊にも襲われにくいとのことだけどやっぱりいるのか宇宙海賊。……まあこのステーションの周囲を飛び回るだけだから大丈夫だろう。
初心者でも操作しやすいようで、ちょっとシミュレーターを借りたら良い感じに上下左右は動けたけど戦闘機動とかは無理だな。少しバレルロールを試してみて普通に酔った。自分には宙賊を倒してお金がっぽりなんて芸当は無理だろう。
あと普通に武器撃つのが難しい。シミュレーターでも動く敵相手に当てるのは難しいのだから命がかかった実戦ならなおさらだろう。出来ることならずっと政府の保護下で採掘をやっていきたいな。
「おう、おめえさんが今日から働くアキラか。採掘船の操縦は特に問題ないが戦闘機動は不可と。まあ採掘船の操縦が出来るなら問題あるめえ」
「いやあのシミュレーターで動かしただけなんですが……」
「それで可が出ているなら問題ねえな。
そんでもって船の貸与だが、小型採掘船なら1日当たり600クレジット、中型採掘船なら2400クレジットだがどうする?」
「その……お金ないんですけど」
「……今日の儲けから天引きという形にするが、後払いで借りることになるから貸与代は2割増しで考えろ。で、どっちにする?」
「小型でお願いします」
クレジットはこの宇宙の共通の通貨で日本円に換算すると1クレジット10円ぐらい、かなあ。船のレンタル代が600クレジット、じゃなくて720クレジットということは、借金7200円からのスタートだな。
「……あと何か食べるものあります?」
「……船の中には水と簡易糧食があるから好きに食って良いぞ。1個1クレジットの安物だし。というか本当に一文無しの保護人なんだな……」
この世界で水と簡易食糧は両方1クレジットだから、生きていくだけなら最低限の稼ぎだけでも相当長く暮らすことは出来そう。でもまあ、お金を稼いで早く自前の船を持ちたい。夢じゃないことは理解したし、何か色々と技術が発展しているこの世界は楽しそうだし、採掘頑張るか。
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