第15話
双子に挟まれながらゲームを楽しみ尽くしたらすっかりと日が暮れていた。
「やばい。もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと」
「えー。まだいいじゃない。せっかく盛り上がって来たところなのに」
「三佳。拓海くんにも都合があるんだから引きとめないでよ」
「ふーん。双葉は拓海に早く帰ってほしいんだ」
「べ、別にそういう意味で言った訳じゃないから。私だって本当はもう少し居て欲しいとは思っているのに……」
双葉のデレが顔に出ていた。
こういう女の子らしいところは可愛いと思う。
「あんまり人の家で長居するのは悪いからぼちぼち帰らせてもらうよ。今度は時間があるときに来ていいかな?」
「是非」とデレ全開で双葉は答えた。
「じゃ、私が近くまで拓海を送っていくから」
と、三佳は当然のように名乗り出た。
「え? それなら私が行くから!」
「双葉は病み上がりでしょ? 無理はダメだよ」
「無理していないし。ちょうど夜風に当たりたいと思っていたところだから」
「普段、外に出たがらないくせにこういう時だけでじゃばりなんだから」
「三佳を野放しにできないのよ」
「いいから双葉はこそに居て」
「い・や・だ」
些細なことで双子は言い争う。原因は俺だと思うと悪い気がしてならない。
「あ、あの。俺は一人で帰れるから。気持ちだけで嬉しいよ。本当、ありがとう」
俺の一言で双子は納得してくれた。
玄関先まで賢明なお見送りで嬉しいのだが、少し疲れてしまう。
ようやく家を出て一人になれたことにホッとする。
俺が振り切らなかったら最後まで口論が続いていたかもしれない。
「今日の双葉、可愛かったな」
グッと伸びをして夜空を見上げる。
パサッと何かが落ちる音が耳に響く。
俺の足元には茶封筒が落ちていた。
「あ、あの。落としましたよ?」
すれ違った女性に向けて俺は発した。
女性はイヤフォンで耳が塞がれていた為、俺の声が届いて居なかった。
俺は茶封筒を片手に女性に向かって走った。
「あの、すみません。すみません!」
「ん?」
ようやく俺に気付いた女性は振り返った。
俺はその女性を見た瞬間、動きを止めてしまう。
凛とした顔立ちに透き通ったサラサラした単発の茶髪。キラリと光る耳元のピアス。
女子大生と思われるその女性はどことなく双葉と三佳の顔立ちとよく似ていた。
会ったことはないが、どことなく二人の雰囲気が似ていたことで驚いてしまったのだ。
「あの、何か?」
「あ、えっと。これ、落としましたよ」
茶封筒を差し出すと女性はハッとした顔を浮かべた。
「あら、拾ってくれたの。わざわざありがとう。生活費だったから落としたら大変なところだった」
「歩きとは言え、イヤフォンは気をつけて下さいね」
「うん。そうだね。えっと、お礼は一割でいいかな?」
「いえ、お礼なんてとんでもない。結構ですよ。当然のことをしたまでなので」
「そっかぁ。じゃ、別の方法でお礼をさせてもらってもいいかな?」
「別の方法……」
すると、唐突に女性は俺の頬に口付けをした。
不意打ちな出来事に俺は何が起こったのか、理解をするのに時間を要した。
「これくらいしかできないけど、ありがとう。それじゃ」
そう、言い残して名前も知らないその女性は去って行く。
「今のってキ、キ、キ……」
それ以上、言えずに女性の後ろ姿を見届けていた。
落し物のお礼にキスって普通なのだろうか。
それは美少女だけに許されたお礼であって普通はありえない。
しかし、その女性は間違いなく双葉似の美少女だ。
お礼というよりご褒美に分類する。こんなことがあってもいいのだろうか。
いや、双葉という彼女が居てあってはならない。
俺はとんでもない過ちを犯してしまったのだ。
「ウオォォォォ! ごめんよ。双葉! 俺は浮気をしてしまったようだ!」
それは後の祭り。
悔いても終わってしまったものに時間は戻せない。
そのまま気持ちがモヤモヤしたまま、家に帰って泣いた。
あの、名も知らない女性のことは忘れよう。
そう、彼女とは何もなかった。そう決め込むことを心に誓った。
□□□□□
中途半端ですが、一旦完結します。
双子の姉・長女を登場させて波乱になる展開を考えていましたが、
私の力量が足りておらず申し訳ないです。
面白い次回作を書きますのでそれまでお待ち下さい。
目指せ、★1000以上の作品!
ご期待下さい。
会う度に記憶がリセットされる彼女は双子でローテーションしていた。気付かれないと思っていたらしく暴いた瞬間、どっちが【俺の彼女】かで姉妹間の関係が拗れた。これって俺のせいなの? タキテル @takiteru
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