第14話


「おーい。双葉! 帰ったよ。いる?」


 玄関先で三佳は中にいると思われる双葉に呼びかけた。

 しかし、双葉からの返事はない。


「あれ? 寝ているのかな。拓海。とりあえずリビングで寛いで。私、部屋を見てくるよ」


「うん。分かった」


 廊下を抜けてリビングへ向かう。

 ソファーや椅子はあるが、どこに座ろうか。

 他人の家で寛ぐって行為が俺には出来ない。とりあえず立ったまま部屋の中央にいた。


「三佳。帰ったの?」


 すると奥の扉が開いて双葉が入って来た。

 だが、その姿は風呂上がりで半裸の状態だった。


「ふ、ふたば?」


「え? いやややや。いやあああ! 拓海くん? どうしてうちに!」


 俺の存在にびっくりした双葉は慌てて逃げていく。


「あれ。双葉。もしかしてお風呂?」


 入れ違いになった三佳がリビングに現れる。


「ちょっと。三佳。どうして拓海くんがここにいるのよ」


「お見舞いに来てくれたんだよ。嬉しいでしょ?」


「嬉しいけどタイミングを考えてよ。私のイメージが壊れるでしょ。呼ぶなら呼ぶで事前に言ってよね」


「ビックリさせようと思って。サプライズ」


「ビックリしたわよ! サプライズじゃないし!」


 二人が口論になっている。


「あの、俺やっぱり帰ろうか? 迷惑だろうし」


「ち、違うの。迷惑とか思っていないから。せっかく来たんだし、ゆっくりしていってよ。ほら、座って。そうだ、お茶入れるね」


「お気遣いなく。それより双葉、体調はもう大丈夫なのか?」


「あ、うん。もうなんともないよ。結構楽になったから」


「そうか。それは良かった」


 ソファーに座らされた俺はキッチンでコソコソする二人の姿が気になった。

 遠目から見ると瓜二つ。全然見分けが付かない。双子なんだから当たり前だけど、ここまで似ていると不思議だった。


「そうだ。拓海くん。私の部屋で遊ばない? ゲームあるよ」


 双葉の呼びかけに俺は「来た!」と心の中で叫んだ。

 彼女の部屋に興味があった俺は胸が踊った。


「何を言っているのよ。私の部屋じゃなくて私たちの部屋でしょ。双葉」


「そうでした」


「へぇー。やっぱり部屋は一緒なんだ」


「そうだよ。一緒でも部屋は広いから個別のスペースはあるよ。三佳はしばらくここにいてね」


「何よ、それ。私も拓海と遊びたい」


「あのね。拓海くんは私の彼氏なの。三佳は変にくっつかないで」


「私、遠慮しないからって宣言したのを忘れた?」


 どうも双子間で俺の取り合いが勃発しているらしい。


「好きにすれば」


「だって。拓海。行こうか」


「え? え?」


 三佳に連れられる形で俺は二人の部屋にいく。

 部屋が広く見えたのは内装のせいで実際は狭い。

 しかし、内装工事が施されており、狭い部屋を見事に二つに割れた感じがして圧巻だった。

 三佳のエリアは漫画やゲームなど遊びに特化した空間になっている。

 反対に双葉のエリアはぬいぐるみやキャラクターもので癒しを感じる空間になっている。こうして見比べると双子でも趣味は違うらしい。


「拓海。これで遊ぼうよ」


 三佳はオセロを取り出した。


「ちょっと。三佳。それでは三人で遊べないじゃない」


「えー? 私と拓海で遊ぶんだけど?」


「何を言っているの。私もいるじゃないの」


「しょうがないな。三人で遊べるものと言えば……」


 次に三佳はUNOである。


「たまにはこういうのでも遊んで見る?」


「まぁ、それならいいけど」


「……俺、遊び方知らない」


「「え?」」と双葉と三佳は意外そうな反応をした。


「今時UNOを知らないってマジ?」


「まぁ、機会がなかったので」


「大丈夫だよ。私が教えてあげる」


 と、双葉は優しく俺の手に自分の手を重ねた。


「あぁ! 双葉が色気づいている! ヤラシー!」


「は、はぁ? そんなんじゃないし」


「していたもん! 目を離すとすぐそれ」


「ち、違うから。違うからね。拓海くん」


「俺は別にいいけど。相手が双葉だから」


「拓海くん……」


「私の前でイチャイチャしないでよ!」


 双葉と三佳に挟まれながら俺は楽しく部屋の中でゲームを楽しんだ。

 これはこれであり……なのか?

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