第7話 神様とは
ユグドラシルの話に、ナスタは驚いた。
「ユグドラシルって神様?に会ったことあるの?」
「もちろんあるわよ。神様は聖竜がこの地にわたしを蒔いたときにも一緒にいたし、わたしがうまく成長しているかどうか、見に来てたりしてたわ。…わたしの話はいいとして、とにかく人間には神様の存在を伏せて、聖獣達がその役割を担ってるの。そして聖竜はその神様と一緒に、神様の聖域に暮らしているわ」
ふうん、とナスタは頷いた。そして少ししょんぼりし、
「僕はエルフと人間が半分ずつだけど、神様って僕みたいなのは嫌いなのかな…」
と思ったことを言ってみた。ユグドラシルは、そうねぇ…と頭を巡らし
「エルフと人間の混血というのは、ナスタだけじゃないわよ。まぁ、あまり数はいないけど。神様が混血を除け者にはしないわ。人間が混血をどうにかしようものなら、神様が聖獣に指示を出すもの。もちろん、エルフ側も同じよ。混じってるからって優劣をつけて争い事になるのは、愚かなことだわ」
ユグドラシルは、ナスタに分かりやすいように説明する。
「混血って何もエルフと人間だけじゃないのよ。他にもいるけど、話すと長くなりそうね。これは今度にして、とりあえずこの星は聖獣の存在が不可欠なの。争い事が嫌いな神様が調和のためにそれぞれの聖獣を各地に置いて、共に助け合い、共に生きていくにはどうしたらいいか、これをそこにいる民にゆっくり根付かせたから、争わずそれぞれの聖獣を崇拝しているのよ」
「それでもたまーに悪くて強いヤツが出てくるから、聖獣がこらしめてるよ」
ラースが間に割って入った。
「へぇ、聖獣って強いんだね」
「冒険者っていうのがいて、大抵はその人達が未然に防いでくれるけど、対処しきれないモノはボクたち眷属や聖獣がやるんだよ。神様が出てこないようにね」
と、ラースが最後に気になることを話した。
「神様が出てこないようにって、どういう?」
「神様は、この星ガルドを創ったって話したわよね。創ったなら、壊すこともできるの。もちろんそんなことは絶対させないけど。それくらい力が規格外だから、えーと、前にうっかり出てきちゃったことがあったわよね?」
ユグドラシルはラースに尋ねた。ラースは、あぁ、あれのこと?と応えて
「どの聖獣の土地だったかな?猪だったかな。暴れん坊のクマが聖猪の土地を荒らしまくったんだよね、群れで。だいたいクマは単独か母と子どもが多いけど、若グマ数頭で野山や畑や田んぼを荒らして、ついに聖猪の住む山まで侵入しそうになったんだって」
「ふんふん、それで?」
「聖猪と眷属で迎え撃つはずだったんだけど、ちょうどそこにたまたま用事があった神様が現れて、聖猪の土地の惨状を見てキレちゃってね。神様と知らず襲ってきたクマ達は、神様の怒りの鉄拳で一瞬でボコボコにされたらしいよ。そのあと、そのクマ達は荒らした土地を自分たちで直してた、って手伝いに行った父さんが話してた」
神様って武闘派なの?と思いながら、ナスタは聞いた。
「聖猪もあんなに怒った神様は久しぶりだって言ってたわね。聖猪の土地はね、棚田っていう田んぼがあるんだけどね、それが夕日に照らされてキラキラ輝くのよ。それが神様もお気に入りでね。多分それを壊されたからもあると思うのよ」
ユグドラシルもきっとお気に入りなのだろう。嬉しそうな顔をしている。
「ナスタも行ってみればいいんじゃない?聖獣たちを巡る旅なんて面白そうだと思うけど」
「そうね、今はまだ無理だけど、5年10年魔法や格闘術の稽古をしてライラックの許しが出たら、外に出てみるのもいいかもしれないわね」
ラースやユグドラシルの提案にナスタはビックリした。
「え、僕って強くなれるの?」
「当たり前でしょ。エルフの血をひいているのよ。魔法は得意中の得意。格闘術も他の種族にも引けをとらないわ。ライラックだってあんなだけど結構強いのよ」
「そうだよ、あんなだけど父さんに乗っても全然落ちないし、弓術で獲物を百発百中だよ」
「そうなんだ」
2人にあんなだけど、と言われている伯父も自分からしたら頼るべき相手だ。これから外に出ていくなら、自分も強くならなきゃ。
「でもまだ僕はこんなにひょろひょろなんだよ。大丈夫かなぁ」
「ここの空気や食べ物で栄養も力もつくから、心配しなくてもいいんじゃない?ボクも一緒に訓練するよー」
と、もう決定事項になりつつある。
「あとは、ライラックにうんと言わせるまでね」
ユグドラシルは少し意地悪そうな顔をして笑った。ちゃんと許可が出るかなぁとナスタは苦笑いした。
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