第78話 雪のひとひら(ポール・ギャリコ作)

書かせていただきます。


【簡単な作品紹介】

アメリカの小説家、ポール・ギャリコの代表作。

キリスト教的な影響が強い作品で、アメリカ人の宗教観が垣間見れる。オスカーワイルドの作品と雰囲気が似ていると言えば、なんとなく伝わるかもしれない。


【数行で読める、あらすじ】

空から雪のひとひら(♀)が降ってきた。

雪は雨のしずく(♂)と出会って子供を四人作る。

ある日、雨のしずくは火を倒すために戦い、なんとか勝つものの、雨のしずくも死んでしまう。

それから時が経ち、雪のひとひらの子供たちはそれぞれの進路を選んで別れて、雪のひとひらは一人になる。

旅に出た雪のひとひらは、海で嵐にあったあと体力が衰えて瀕死の状態となる。臨終の間際に創造主について考えて、自分の生涯が創造主の計画への奉仕を目指していたのだと悟り、死ぬ。


と言う話。



【作品の特徴】

三人称。雪のひとひらを擬人化して女性にみたてて、童話風のですます調で展開する形式。


7ページで「このわたしと、あたりいちめんのおびただしい兄弟姉妹たちをつくったのは、はたして何者だろう。そしてまた、なぜそんなことをしたのだろう?」という文章が出てくるのだが、この辺りは、一神教らしい考え方で、キリスト教の宗教感がよくわかる。


天地創造をした神の計画に奉仕するために生きて、それで満足するというお話の内容になっているのも、キリスト教的。


この辺りは、キリスト教に馴染みのない日本人には、理解し難いかもしれない。キリスト教を少し齧った人が読むと、面白いと感じられると思う。



【作品の見どころ】

擬人化された雪や水滴達の様子が見どころ。


作中には普通に人間がでてくるし、雪や水滴ならではの独自の思考があるわけでもないので、擬人化した意味はあまりないように見える。


ぶっちゃけ、登場人物を普通の人間にしても問題はない。


ではなぜ、あえて擬人化したのかと言うと、おそらく人間から個性を取り除いて抽象化するためで、さらには周りの水に流されるだけの無力で小さな存在として主人公達を強調するためだろう。


その試みは上手くいっていると思う。作者のやろうとしたことが成功していると言う点では、良い小説だと思う。


個人的には、キリスト教的な価値観が強すぎて、バタ臭いから好みではない作品だけど、キリスト教に馴染みのある人なら、読んでも損はないかな。



【終わりに】

今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。


ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。


それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。







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