第71話 むずかしい愛 (イタロ・カルヴィーノ作)
書かせていただきます。
【簡単な作品紹介】
20世紀イタリアの国民的作家、イタロ・カルヴィーノの短編集。作者は多彩な作風で知られている人物で、「文学の魔術師」の異名がある。本作はその名に相応しい多彩な内容となっている。
【数行で読める、あらすじ】
様々な愛の状況を書いた短編集。
「ある兵士の冒険」
トマーグラ歩兵が未亡人に痴漢する話。
「ある悪党の冒険」
ジムは警官に追われていて、娼婦アルマンダのところに逃げ込んだが、憲兵准尉アンジェロがやってきてどうしたものかと困る話。
「ある海水浴客の冒険」は、海水浴中に水着が脱げたことに気づいたイゾッタ・バルバリーノ夫人が、男に助けられるのを嫌がって逃げる話。
「ある会社員の冒険」は、会社員エンリコ・ニェーイが徹夜で情事した名残を留めつつすてきな朝に出社しようとしたら、十年ぶりに会った級友が結婚して老け込んだり、いろいろあって気がめいる話。
「ある写真家の冒険」
アントニーオ・パラッジが旧式の写真機を買い、女友達のビーチェをモデルにして写真を撮りまくるものの振られる話。
「ある旅行者の冒険」はフェデリーコ・Vがローマの恋人を訪ねるために列車に乗り、コンパートメントで苦労して寝ようとしたりする話。
「ある読者の冒険」は海岸で読書していたアメーデオ・オリーヴァが日光浴していた女と知り合い、女と読書の両方が気になって両方ともこなそうとする話。
「ある近視男の冒険」
近視のアミルカーレ・カッルーガが眼鏡をかけたところ、イーザ=マリーア・ビエッティは眼鏡のせいで彼だと気づかなくて、すれ違う話。
「ある妻の冒険」
ステファーニア・R夫人はカフェでいろんな男と話して、これは不倫なのかと悩む話。
「ある夫婦の冒険」
エルデは夫が仕事に出かけた後にベッドに入ると、夫の場所でなく自分の場所のほうに温もりがあって夫がいとおしくなる話。
「ある詩人の冒険」
ウズネッリがゴムボートでデーリアと小島へデートしに行くものの、彼女とはそりが合わずに終わる話。
「あるスキーヤーの冒険」
緑色のサングラスの若者がスキーが上手なブロンド娘を必死で追いかけるものの、ついていけない話。
【作品の特徴】
全て三人称で書かれている。
ある状況での主人公の心境の変化を書くという短編らしい短編。各短編が10-20ページほどで、それぞれの短編にユーモアとか哀愁とか違った面白さがあって読み応えがある。
リアリティを損なわない程度に非日常的な恋愛の状況を書いていて、文章もページにみっしり詰まっているのに読みやすい。平易な日常語で小説を書いているので読みにくさがなく、基本的な文章がうまくてどの短編も小ぶりながらもよくできている。
買って損はない佳作と言えるだろう。
【作品の見どころ】
個人的に気に入った作品は、「ある近視男の冒険」と「ある夫婦の冒険」だ。この二つはオチが効いていてよい。
「ある兵士の冒険」と「ある海水浴客の冒険」はユーモラスな状況設定が面白い。
欠点としては時代背景がわかりにくい点か。多分、書かれた当時のイタリアが舞台と思われるのだが、短編ということもあって描写や説明が簡潔なので、状況を想像しにくい。当時のイタリア人読者のために書かれた小説だから現代の日本人にわかりにくくてもしょうがないのだけれども。
まあそれを抜かしても、いい作品には違いない。読んでみて損はないと思うよ。
【終わりに】
今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。
ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。
それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。
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