第70話 タタール人の砂漠(ブッツァーティ作)
書かせていただきます。
【簡単な作品紹介】
イタリアを代表する作家、ブッツァーティの代表作。彼は幻想的、不条理な作風が特徴で、イタリアのカフカと呼ばれている。
【数行で読める、あらすじ】
主人公のジョヴァンニ・ドローゴは、士官学校を卒業した軍人で、タタール人の砂漠と呼ばれる場所にあるバスティアーニ砦に勤務することになる。
この砦とその周辺で起こる騒動を書いた話。
【作品の特徴】
三人称の神の視点。
エンタメではなくて純文学なので派手な事件とかはあまりない。
特に序盤は砦に着くまでに時間がかかったり、砦や砂漠の情報の説明にページをさいているので、やや退屈だ。
物語的には退屈なものの、文学的な小技が多く使われていて、その点が面白味になっている。
例えば物語の時代背景や砦の具体的な位置はぼやかされていて、これが物語を幻想的なものにしている。
10章では「〇〇も習慣になってしまった」などと同じ言葉を繰り返して語りのテンポを作り、詩を読んでいるような心地よさを文章に生んでいる。
他にも合言葉とかの伏線を仕込んでいたりして、興味深く読める。
総じて、波瀾万丈な物語展開よりも、文学特有の技法を楽しむ作品といった感じになっている。
純文学を書きたい人は、参考になるはずだ。
【作品の見どころ】
砂漠ばかりで周囲に何もない砦という世界観が見どころ。
例えば、何もない砦だからこそ、水の音とかの些細な出来事が小説の中では事件性を持っていて、登場人物が動かないぶん舞台を活かして見せ場を作っている。
他にも、中盤からは登場人物が動き出し、死人も出てタタール人も出てくるものの、すわ戦闘かと緊張を高めたところで何も起きない展開は、アンチノベル的な期待の外し方でよい。
エンタメとしてはまずいやり方だけれども、純文学としてはよいやり方だ。
本作は1940年に刊行されていて、文学理論や小説の技法が体系化されていない時代に、これほど技巧を凝らした小説を書けるのは見事と言わざるを得ない。
下手すると、現代のそこら辺にある小説より、はるかに完成度が高くて、読み応えがある。
さすが、二十世紀を代表する作家の一人といったところか。
【終わりに】
今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。
ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。
それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。
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