スペイン文学
第58話 スペイン民話集(エスピノーサ作)
書かせていただきます。
【簡単な作品紹介】
スペイン系アメリカ人の口承文芸研究者のアウレリオ・エスピノーサが収集した280話の民話集から82編を選んで翻訳した本。
『グリム童話集』と似ているけども、あちらはグリム兄弟による手が加わって改変されているのに対して、エスピノーサは聞き取りした内容をそのまま記録したところに違いがある。
当時の方言などもそのまま残っているだめ、言語学的な価値が高い作品集となっている。
【作品の特徴】
謎話、笑い話、教訓話、メルヘン、悪者話、動物昔話、だんだん話など、多種多様な民話がごった煮状態で収録されている。
民話の内容は当時の価値観を前提に書かれているものなので、現代読者が首を傾げる話も多い。
例えば笑い話にカテゴリーされる民話の場合、殺人や誘拐の失敗談のブラックユーモア系の笑いが多く、中世人の倫理観では爆笑できたのかもしれないものの、現代人は笑えないと思う。
現代人の感覚だと、おいおいと、ツッコミたくなる要素が満載だ。
例えば「兵士のフアン」はキリストが死んだ娘をよみがえらせて父親から代金をもらうけれど、キリストが金とるんかい、と指摘したくなる。
他にも「乞食」という作品では、乞食の変装をして姉妹が留守番をする家に泊めてもらった男が窃盗をした挙句に妹を誘拐して逃げられたら殺害しようとする話だけれど、なぜ悪者話でなくて笑い話に分類されているのか、どこが笑えるのか謎。
このように、中世の価値観は現代とかけ離れているので、現代読者が楽しむのは難しいと思う。中世の人の価値観を知る資料としては価値があるので、娯楽目的ではなく、研究目的で読むのが良いだろう。
【作品の見どころ】
興味深いのは、「聖女カタリーナ」という作品。
実はこの作品は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の元ネタと言われている。
どういう内容かというと、天国に行った聖女カタリーナ(1347-1380、イタリアのシエナの修道女)が地獄に行った母親を天国に入れるように聖母マリアに頼んだら、母親につかまって地獄の亡者がついてきて、天国に上りたかったら聖女を娘に持てと母親が悪態をついたせいで天国に入れなくてまた地獄に落ちて、聖女カタリーナは一緒に地獄に行ったという教訓話だ。。
ヨーロッパだと聖ペテロの母が一度だけ乞食に恵んだ玉ねぎの葉を伝って天国に上がろうとする場合が多いそうな。
面白い話なので、これだけでも読んでみる価値はあると思う。
【終わりに】
今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。
ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。
それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。
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