第10話 シャーロック・ホームズの冒険(コナン・ドイル作)

書かせていただきます。


【簡単な作品紹介】

シャーロック・ホームズシリーズには、短編と長編がある。

この『シャーロック・ホームズの冒険』は1つ目の短編集だ。

時系列的には、長編の『緋色の研究』や『四つの署名』の後だけれど、別に短編から読み始めても、特に問題はないかな。ワトソンとホームズの関係性とかは、ご存知の方も多いだろうしね。


【数行で読める、解説】

収録されている短編は12編。

・ボヘミアの醜聞

・赤毛組合

・花婿の正体

・ボスコム谷の惨劇

・五つのオレンジの種

・くちびるのねじれた男

・青い柘榴石

・まだらの紐

・技師の親指

・独身の貴族

・緑柱石の宝冠

・撫の木屋敷の怪


基本的なプロットとしては、事件発生→ワトソンとホームズが調査→見事解決。という手順を踏む。短編なのもあって、長編ほどの複雑な構成はなく、読みやすくて理解し易いかな。


全部の短編を一つ一つ取り上げると、助長なので、短編集全体の解説をしていこうと思う。


【作品の特徴】

事件のバラエティが豊富。殺人事件以外にも、様々な犯罪と謎を扱っている。


・お偉いさんのスキャンダル(ボヘミアの醜聞)


・銀行強盗未遂(赤毛組合)


・結婚詐欺(花婿の正体)


・行方不明の人物を探す(くちびるのねじれた男)


・宝石の行方を探す(青い柘榴石)


・怪談チックな未解決事件(技師の親指 )


・王冠の盗難事件(緑柱石の宝冠)


というような感じで、実に半分ほどの短編は、殺人が絡んでいない。多種多様で、新鮮さがあり、飽き難い。

マンネリにならないように工夫がなされていて、コナン・ドイルの引き出しの多さに驚かされるだろう。


加えて、探偵のホームズを必ずしも完璧超人に書いていないのも、面白いところかな。


具体的には、犯人が逃げてしまったり(技師の親指)、ホームズが出し抜かれたり(ボヘミアの醜聞)、依頼人を殺されてしまったり(5つのオレンジの種)といった感じで、ホームズがヘマをしている(でも間抜けには見えない)のは、ホームズに人間味と親しみを与えていて、良いキャラの書き方だと思うよ。


【作品の見どころ】

初期の短編集だけあって、有名かつ名作が多い。


事件の謎や解決も魅力的だけれども、個人的なおすすめは、ホームズの名言集かな。


・「君はたしかに見ている、だが観察はしていない」(ボヘミアの醜聞)


・「これはたっぷりパイプ三服分はかかる問題だからね」(赤毛組合)


・「ぼくのやりかたはわかっているだろう。すべては些細な点を観察することから始まっているものさ」(ボスコム谷の惨劇)


・「私はシャーロック・ホームズという者です。ひとの知らないことを知るのが、私の商売なのでしてね」(青い柘榴石)


・「6マイル行って6マイル戻った。これほど簡単なことはないだろう」(技師の親指)


・「ありうべからざる事をすべて除去してしまえば、あとに残ったものが、いかにありそうもないと思えても、すなわち真実である」(緑柱石の宝冠)


・「もしこれが僕の妹だったら,承諾しろとすすめるのはためらいが伴いますがね」(撫の木屋敷の怪)


台詞が印象に残る上に、ホームズの思想や人間性を短い文章で表現していて、見事。なかなかできることではないと思う。


創作をする人なら、キャラ立ての参考になるはずだ。キャラ文芸を志す人ほど、ぜひ読んでみてほしい。


ホームズのかっこよさを堪能するだけでも、満足できるかもね。


【豆知識】

シャーロック・ホームズの冒険に収録されてる短編は、一編あたり三五ポンドで出版社が買い取ったという(緋色の研究は二五ポンド)。

ちなみに、当時の一ポンドは、日本円で役二万円と言われていたりする。

この短編集から人気に火がついて、作品あたりのお値段が釣り上がっていく。詳しい話は次回。


【終わりに】

今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。


ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。


それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る