第9話 四つの署名(コナン・ドイル作)

書かせていただきます。


【簡単な作品紹介】

シャーロック・ホームズシリーズの、長編二作目、

一作目の『緋色の研究』が地味目な内容だったせいか、一転して財宝あり、美女との恋愛あり、チェイスありの派手な展開が並ぶ。

娯楽要素が増したため、面白く、ファンの間でも評価の高い作品。

『名探偵コナン』の江戸川コナン君が、好きな作品として挙げていたりする。


【数行で読める、あらすじ】

ホームズとワトソンの前に、メアリー・モースタンという女性が現れる。

メアリーが言う。6年前から年1回,メアリーの元に真珠が送られてくるようになったというのだ。なぜなのか、ホームズ達に調べてほしいと。

メアリーの依頼を受けたホームズとワトソンは、真珠の送り主のところにいくと、メアリーの父親にまつわる因縁や死体のそばに残された「4人の署名」といった謎にぶち当たる。果たしてホームズ一行は、謎を解決できるのか。


【作品の特徴】

本作も『緋色の研究』と同じく、二部構成になっている。

第一部で殺人事件とホームズ達の活躍が描かれて、二部からは、犯人の動機に関する過去編が始まる。


二部の過去編は、これだけで一つの短編として成立していて、完成度の高い作品となっている。


非常に面白く、読めば犯人に感情移入ができるので、作品の深みが増すのだけれど、無理に読まなくても問題はなかったりする。


長たらしい長編が苦手な人は、第一部でホームズ達の活躍を読んだ後、そこで本を閉じてもいいかもしれない。


二部も読んだ方が、満足感は高いけどね。


【作品の見どころ】

ネタバレになっちゃうけど、ヒロインのメアリーは、第一部のラストでワトソンと結婚する。


『緋色の研究』は、ホームズとワトソンの出逢いを書いた話だったけれども、『4つの署名』はワトソンとメアリーとの馴れ初め話を書いているわけだ。


シャーロック・ホームズの活躍を描く一方で、きちんと脇役のワトソンにも、見せ場を作る辺りに、作者のコナン・ドイルの行き届いた手腕が光っている。

探偵の活躍を書くので手一杯なミステリ作品も多い中で、これは地味ながら素晴らしい点と言えるかな。



個人的におすすめしたいシーンとしては、ホームズの麻薬癖が判明する件。


冒頭からいきなり、七パーセントのコカインを注射する場面から始まり、事件を解決した後も、手柄が全て警察が持って行ったことに対して、「僕にはこれがあるさ」とコメントしながら、ホームズが麻薬をやったりする。


現代人の感覚だと、ホームズ何やってんの! と文句を言いたくなる場面だけど、これには事情があったりする。


 当時のヴィクトリア朝のイギリスでは、コカインやモルヒネといった麻薬は、非合法ではなかった。自由に買えたらしいね。


一応、麻薬を乱用すると、健康に問題があることはわかっていたらしい(作中でもワトソンが皮肉混じりに苦言を呈している)ものの、不法行為ではなかったわけだ。


この麻薬癖は、ホームズの変人っぽさを演出すると同時に、当時の文化的な事情が伺えて、面白い。


当時の文化がわかるところは、古典作品を読む楽しさだと思うので、ぜひご堪能あれ。


【豆知識】

『四つの署名』が初めて掲載されたのは、1890年の「リピンコッツ・マンスリー・マガジン」の2月号なのだけれど、当初の題名は「The Sign of the Four」と書かれていた。


後に「the」が削除されて、「The Sign of Four」となったそうな。


この場合、現在知られている『四つの署名』という意味になるのだけれど、「the」が存在する文章だと、英語としては 「四人組」 といった意味に変わるらしい。


些細な違いだけれども、面白い裏話であります。


【終わりに】

今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。


ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。


それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。

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