イギリス文学
第8話 緋色の研究(コナン・ドイル作)
書かせていただきます。
【簡単な作品紹介】
推理小説の古典『シャーロック・ホームズ』の第一作。
ホームズシリーズは短編が有名だけれども、最初の一作は長編だった。偉大なる名作の始まりを告げる作品であるものの、あまり人気はなかったりする。理由は分からんでもないけれど、筆者は評価の低さを悲しく思うので、ここでは作品の魅力を語りたい。
【数行で読める、あらすじ】
十九世紀のイギリスが舞台。戦場帰りの医師、ワトソンは、金がなかったので、ルームシェアの相手を探していた。
ワトソンは友人の紹介で、ホームズなる変人と出会い、意気投合。ベイカー街221Bの下宿で同居し始める。
1881年、ドレッバー毒殺事件がイギリスで発生。被害者のそばには,血で「RACHE」(ドイツ語で復讐)と書かれていた(タイトルの緋色はこの血文字が由来)。
謎めいた状況にホームズは興味を抱き、警察の依頼を受けたこともあって、ワトソンと共に犯人逮捕に向けて動き出す。
【作品の特徴】
あらすじでは省いたけども、『緋色の研究』は二部構成になっていたりする。
第一部で殺人事件とホームズ達の活躍が描かれて、二部からは唐突に、過去編が始まる。
過去編の内容は、一部で捕まった犯人の動機に関わる話だ。詳細は長くなるので省くけど、なかなかに感動的で、涙腺の緩い人は感動するかもしれない。
アメリカを舞台にした歴史小説のようなお話は、よく出来ている。
作者であるドイルは、歴史小説家としても、それなりにやっていけたのではないかと、思わされるかな。
【作品の見どころ】
なんといっても、ホームズの変人っぷりと、優れた推理力で事件を解決する過程が見所。
事件は、地味。
事件の謎は興味深いけど、あっさり解かれるので拍子抜け感がないでもない。捜査も淡々としていて、波乱の展開とかも少なく、決着もあっさり着くから、どうしても地味に見える。
ホームズの変人ぶりや奇行も、後々の作品群に比べると控えめで、キャラ立ちしきっているとは言い難いかも。
当時のイギリス人読者も、地味と思ったのか、『緋色の研究』はあまり人気がなかったそうな。
分からんでもない。
まして現代ミステリのように、クローズド・サークルとか、幽霊が見えるとかの特殊設定があるわけではない。
現代のミステリに慣れた読者が今更読んでも、物足りなさを覚えるかもね。
ただし! では駄作かと言うと違う。
「相手に触れることなく、毒を飲ませる」
「町中で警戒されず、ターゲットを好きなところへ連れていく方法」
といった謎は、現代ミステリの水準で考えても、魅力的だろう。
犯人がどこにいるかわからないのに、ホームズが居場所を突き止めて見事に逮捕する、という件も、ホームズの推理力なんかが発揮されていて、探偵小説のお手本のようだ。
ただ、当時はまだミステリが成熟していなかったので、それらの描写を劇的に演出する手法が確立していなかったため、結果的に地味になったのだと思う。
作品の品質は文句なく良く、作品の発表から百年以上経っても、読み継がれるだけはあると思うよ。
なにより、シャーロック・ホームズという名キャラクターを生み出したというだけでも、価値があるしね。
ホームズのキャラクター性は、創作の参考にもなるし、今でも読む価値はあると思う。
特にミステリを書く人は、読んで損はないかな。原典をあたってみるのは、大事だしね。
【今読むなら、これがおすすめ】
実はネットでも、無料で日本語訳を公開しているサイトがあったりするけど、個人的にはちょっと読み難いかな。
筆者の個人的なおすすめは、創元推理文庫。軽いタッチの文章で読み易いし、誤訳とかもないから、初心者の方ほど良いと思う。
古本屋とかにあったら、買っておいて損はないよ。
【豆知識】
題名の 「緋色の研究 A Study in Scarlet」 の 「Study」 とは、美術用語だと“習作”の意味であるらしい。
なので題名は、「緋色の習作」 とすべきという意見もあったりする。
【終わりに】
今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。
ここのところ、こってりした文芸作品ばかり取り上げてきたので、今回は息抜きも兼ねて娯楽一辺倒の作品を解説してみましたよ。
シャーロック・ホームズシリーズは有名だから、様々なメディア展開がされているけれども、意外と小説を読んでいる人は少ない気がする。小説も魅力的だから、良ければ読んでみてくださいな。
特に『緋色の研究』は、有名なドラマであるグラナダ版でも、映像化されていない作品だし、小説で触れてみるのも良きかなと思う。
しばらくはホームズシリーズを中心に取り上げていくつもりなので、よければ記事を追っていってくださいな。よろしくお願いします。
ちなみに、記事の内容や、私の独断と偏見が強いので、あしからず。
それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。
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