第6話 アンナ・カレーニナ(トルストイ作)

書かせていただきます。


【簡単な作品紹介】

ロシアの文豪トルストイの代表作。

映画にもなっているから、そちらを先に視聴してから、小説を読むのがおすすめか。


【数行でわかる、あらすじ】

アンナ・カレーニナ夫人が、不倫の末に自殺するまでの過程と、夫人の周辺にいるロシア貴族社会の人達がてんやわんやする偶像劇。



【作品の特徴】


まず、物語の中心はアンナの恋路になるわけだが、これが普遍性のある物語にしている。


いつの時代、どの世代の人が読んでも、共感と反感を呼ぶテーマとして、魅力があるだろう。


普遍性のあるテーマは、簡単なようで意外と書くのが難しい(だから長く語り継がれる物語は少ない)。それが出来ている時点で、アンナ・カレーニナは名作と言って良いんじゃないかな。


キャラクターの書き方も良い。たくさんのキャラクターが登場するけど、どの人物も、まるで実在の人物であるかのような、リアリティがあり、魅力的な人物像が描かれている。


キャラの書き分けとはどういうものか、参考になるところが多い。凄いよこれは。


キャラクターのリアリティという点では、トルストイはドストエフスキーの上をいくと思う。(だからといって、ドストエフスキーが悪いってわけではないけどね)


ドストエフスキーのキャラは、個性的でキャラ立ちしていて、誇張された漫画っぽい人物造形(その分強烈な印象を受ける)なのに対して、トルストイのキャラはリアリティがあって、実在の人物と錯覚するような人物描写になっている(そのため、感情移入や共感がし易い)。と言えば、わかっていただけるかもしれない。


純文学を描く人なら、トルストイが参考になる。娯楽小説を書きたい人なら、ドストエフスキーが良い参考になるだろうね。


個人的には、犬の思考まで書いているところが、個性的で好き。

犬の思考が書かれた作品なんて、小説界広しといえど、あまり例がない。

筆者の知る限りだと、ジャック・ロンドンの『野生の呼び声』くらいですな。

漫画界まで含めると、『銀牙』とかがあるけど、それくらいだ。

貴重なシーンを見られるというだけでも、アンナ・カレーニナを読む価値があるよ。筆者おすすめのシーン。



あと、政治に関する議論がアンナ・カレーニナの作中にあるのだけど、これも当時の世相をよく反映していて、当時の雰囲気を知る記録としても希少性が高いかな。

この希少性が、アンナ・カレーニナを単なる娯楽小説では終わらない価値を生んでいる。


総じて、名作古典の名に相応しい、完成度の作品と言えるかな。


難点としては、物語が長いことと、政治の話が興味のない人には退屈に感じ易いところだろうか。それ以外は、満点と言って良い作品(我ながら偉そうな言い方だな。反省)


長さにうんざりするようなら、アンナの恋路に絞って読み進めて、それ以外の人の動向は読み飛ばす方針で読めば、なんとか読み切れると思うよ。


兎にも角にも、読んでみて、損はないかな。

おすすめ。



【作品の見どころ】

アンナ・カレーニナには、有名な書き出しがある。


「幸福な家庭は皆同じように似ているが、不幸な家庭はそれぞれにその不幸の様を異にしているものだ。」


という文章だけど、これはつまり、幸せな家庭は相性が合うからこそ幸せで、相性が合うという一つのパターンしかないから、夫婦は何処も似通って幸せになる。

一方、不幸な家庭は相性が合わないのだけれど、何処の相性が合わないかということが家庭によって違っているから、不幸の様相が違っている、という意味な訳だ。


この文章は、作品を象徴するというか、作品のテーマみたいなものが詰まっている。


作品を通して読み終わった後、冒頭の文章を振り返ってみると、もの凄く感慨深い気分になるので、覚えておいてね。


【今読むなら、これがおすすめ】


光文社古典新訳文庫で、全四冊が出ている。読み易い上に、四冊に凝縮されている分、感覚的に短い量に感じられるから、読み切れる可能性が高まるので、おすすめ。


【豆知識】

アンナ・カレーニナは、ドストエフスキーの『未成年』と、同時期に雑誌で連載されていたりする。


ドストエフスキーがトルストイを意識していたりするのは、この辺りに理由がありそうだ。


【終わりに】

今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。


ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。


それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。

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