第4話 悪霊(ドストエフスキー作)

書かせていただきます。


【簡単な作品紹介】

ドストエフスキーの長編。

哲学や思想性の高いドストエフスキー作品の中でも、特に哲学要素が色濃い話(と筆者は思っている)。その分、小難しいので、エンタメ性の強い他作品と異なり、読んでいる人(読み切った人)は少ないと思う。

読んでも途中で挫折する確率は高い。理由は後記。


【数行で読める、あらすじ】

十九世紀のロシアが舞台。

農奴解放令が出たことと、無神論や社会主義が広まったことで、新しい時代の幕開けが予感されていた。

ピョートル・ヴェルホーベンスキーは、古い価値観や秩序を破壊して、新しい時代を自らの手で作ろうと画策。「五人組」と呼ばれる秘密結社を作り、暗躍していた。

新時代を作るには、新しい時代にふさわしい象徴がいる。そう考えたピョートルは、ニコライ・スタヴローギンに目をつけ、ニコライを新時代の象徴に祭り上げようとする。


【作品の特徴】

ドストエフスキーの長編で、最も読み難い作品。


予備知識が無いまま読むと、話がわけわからなくて、挫折する可能性が高いんじゃないか。


読み難い理由は、いくつかありますな。


・登場人物の経歴を列記する序盤(カラマーゾフの兄弟も似たような序盤だったりするが)


・重要な事件が、登場人物のあずかり知らぬところで起こる湾曲的な構成(脳内補完が必須)


・長々と喋る割に、何を言いたいのか要点がはっきりしない会話。


・キリスト教(ロシア正教)の知識がないと、テーマが腑に落ちない。


・様々な登場人物の思惑が入り乱れるので、プロットがしっちゃかめっちゃかになっている。



というわけで、上級者向きの作品になっております。ドストエフスキー作品が好きな人でも、根をあげるんじゃないかな?


おまけに登場人物の性格が悪い。打算、弱さ、愚かさ、執着、欲望、といった、負の面ばかりが強調されて書かれている。

なので、好感を持てる人が少なかったりするかな。

話の展開も、暗くて救いがなくて、エンタメとして楽しめる所が乏しいのだ。


こうしてみると欠点だらけだけれども、欠点が多い作品が、必ずしも駄作とは限らないのが、創作の面白いところだったりする。


話の大枠が理解できると、確かに名作だ、と納得できたりするよ。


なので、当記事では、作品が理解しやすくなるような、要点を解説したいと思う。



【作品の見どころ】


「新世界の神を作る!(神になる、ではない」と意気込む登場人物の狂乱が楽しみ所。


つまり革命の物語として読めば、お話しが理解しやすくなるかな。


革命と言っても、政権を倒すのは主目的ではなかったりする。


キリスト教的な価値観を破壊して、神という古い偶像を否定し、新しい神を打ち立てよう、というのが主目的と考えれば、理解できるんじゃないかな?


つまり、思想的な変革を目指す物語と言えるかも。


その変革のために動くのがピョートルで、新しい神様候補に選ばれたのが、ニコライというわけ。


ピョートルの企みは成功するのか、という点に注目してお話を追いかければ、混乱せずに読破できると思う。


ちなみにピョートルは主人公じゃなくて脇役なんだけど(主人公はニコライ)、ピョートルを話の中心に置いた方が、物語の全体を理解できたりする。


脇役が主人公を喰っている作品と言えるかもね。


ドストエフスキー作品はキャラ立ちしている登場人物が多いから、印象的な脇役が多くて、主人公の影が薄くなりがちだったりする。その代表的な作品というわけだ。


【豆知識】

お話の元ネタは、1869年の実際の事件『ネシャーエフ事件』と言われている。


【終わりに】

今日の解説は、こんなところかな。


今のところ、ドストエフスキーの五大長編ばかり解説しているけど、残りはあと一つ、『未成年』だけか。


『未成年』の解説が終わったら、別の作者の作品も、解説してみようと思う。何を選ぶかは、まだ決めてないけど。


よければ、読んでやってくださいな。



異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。


それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。


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