第2話 白痴(ドストエフスキー作)

書かせていただきます。


【簡単な作品紹介】

ドストエフスキーの長編小説。五大長編に含まれる代表作の一つだが、題名が放送禁止用語のせいか、メディアなどではあまり紹介されない。

恋愛要素の強い作品で、女性人気高し。


【数行で読める、あらすじ】

底抜けの善人で夢見がちなことを言う主人公、ムイシュキン公爵が、ヒロインのナスターシャとアグラーヤの間で板挟みになり、どちらと結婚すべきか悩む話。


【作品の特徴】

ドストエフスキーが耳にした噂話を小説にした、という体裁で書かれた作品。


伝聞調の文体にすることで、あたかも実際に起きた出来事であるかのような、リアリティを作品に与えている。映画で言うモキュメンタリーのような作品だ。


こういう文体は古典の小説ではよく使われていたりする(カミュが書いた『ペスト』という作品も、登場人物が見聞きした話という体裁だったりね)。


作品に臨場感が生まれるので、創作をする人は参考になるのではないかな?


面白い作品なのだけれど、長いのがネックになっております。


作品は四章に分けられるのだけど、最初の一章が長く、文庫本で三百ページもあったりするのだ。しかも一章で経過した作中時間は、たったの一日。濃密である。

第一章だけで長編小説並みの分量だから、お腹いっぱいになる人もいるかもしれない。


筋書き自体は単純なのだけど、個々の場面の描写が長いため、分量が多くなっている。

この点を面白味と取るか、助長で退屈と受け取るかで、作品の見る目が変わるかもしれない。


助長と判断した人向けに、アドバイスすると、作品は主人公のムイシュキンとヒロイン二人の三角関係を軸にした恋愛ものなので、主人公とヒロイン二人の動向だけを追って、他の場面や脇役の台詞を読み飛ばせば、だれることなく作品を楽しめると思う。


具体的には、四つの章の内、次の内容だけを追いかければ良し。


第一章:ムイシュキン公爵がナスターシャに結婚を申し込むが、ナスターシャはロゴージンという別の男を選んだので、ムイシュキンはフラれる。


第二章:丸々飛ばしても良し。


第三章:ムイシュキン公爵の親戚である、エパンチン将軍の娘、アグラーヤが公爵に告白する。


第四章:ムイシュキン公爵はアグラーヤと結婚しようとしたが、ナスターシャが現れる。ナスターシャとアグラーヤは喧嘩して、ヒロイン二人によるムイシュキンの奪い合いが起こった。ムイシュキン公爵はヒロインのどちらと結婚するのか。


という感じで、上で抜き出した部分だけを読めば、とりあえずお話は理解できる。


長編を読むなんて、かったりーよ、という横着な人に、おすすめの方法です。ぜひどうぞ。


【作品の見どころ】

ムイシュキンがヒロイン二人のどっちを選ぶのか、という葛藤と答えが面白いと思う。


ドストエフスキーの特徴として、キリスト教的な哲学が語られたりもするけど、物語のメインは恋愛なので、他の長編ほど哲学要素は濃くないと思う(あくまで比較の問題だけど)。


だから、難しい内容に興味が無い人でも、登場人物が恋愛で一喜一憂する姿を純粋に楽しめる作品ではないかな。

エンタメ要素が強いと思うから、文学が苦手な人も、けっこう楽しめるんじゃないかと。


ちなみに、題名の白痴とは主人公を指しているのだけれども、一種の比喩と考えれば、わかり易いかな。

ずる賢い人間達の前では、主人公のような善人は白痴のように無力なのです。みたいな意味合いと解釈すると、物語の構図が明確になると思う。


【豆知識】

青空文庫に同名の作品があるけど、そっちは坂口安吾っていう日本の作家が発表した別作品なので、間違えないようにご注意を。


紙の本をお求めの人は、光文社古典新訳文庫と新潮文庫版のどっちかがおすすめかな。


読み易さなら光文社一択。


新潮文庫版は言葉遣いが独特というか、特徴的な文体なので、好みが分かれるかも。



【終わりに】

今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。


ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。


それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。





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