古典小説を千字前後で紹介するガイド本
タナトス
ロシア文学
第1話 カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー作)
書かせていただきます。
【簡単な作品紹介】
村上春樹さんも影響を受けたと言われる、ロシアの古典小説。
【数行で読める、あらすじ】
時は十九世紀、ロシア帝国が舞台。お金持ちのフョードル・カラマーゾフが、何者かに殺され、大金も盗まれる。
犯人として、フョードルの息子にして長男、ドミートリィが逮捕されるが、犯人は別にいたのである。
犯人は誰だろう?
という物語。
【作品の特徴】
とにかく長い。
新潮文庫版が上・中・下巻に分かれていると書けば、長さが分かっていただけると思う。
あらすじは単純だ。その気になれば、数行でまとめられる。
にもかかわらず長いのは、キャラクターの描写に力を入れているから。
登場するキャラクターの、経歴や現在の立場、思想や主張、人間同士の関係などを、濃密かつ詳細に書いている。
極めつけは、ゾシマ長老という脇役であります。
文庫本で七十ページほどの過去編が、長々と語られる(その割に本筋とは関係ない)。ワンピースもびっくりな過去編っぷりには、度肝を抜かれること請け負い。
こんな調子だから、物語が長くなっている。
が、この緻密すぎるキャラクターの描写が、面白みでもあったりしますな。
キャラクターの悩み、苦しみ、答えを求めての行動、その末の結論と結末は、涙腺を刺激されますな。
特に事件の真犯人の動機に、全てが詰まっていると言っていい。
つまり、カラマーゾフの兄弟は、キャラ文芸なのですよ!
ラノベの元祖と言っても、過言ではない気がしますな。
読む時は難しく考えず、個性あふれるキャラクターの中で自分の推しを見つけ、その結末を追っていくのが、吉でありましょう。
キャラクター重視の書き方は、ドストエフスキーの他作品にも見られる傾向なので、他の長編に挑戦する際も、キャラクターを追っていく形で読むのが、筆者のおすすめ。
【作品の見どころ】
テーマと言った方がいいかもしれない。
カラマーゾフの兄弟は、推理小説とカテゴリーして良いと思うけれども、作中に哲学の要素を混ぜております。
作品発表当時のロシアは、哲学が流行ってたので、その影響かもしれないかな?
簡単に言うと、
「神様って本当にいるの?いないの?」
「神様がいるなら、どうしてこの世に悪が蔓延っているの? 悪がある時点で、神様なんていないんじゃないの?」
「神がいるなら、悪人に天罰が与えられるはずだ。悪事を働いて、神様が本当にいるのか、試してみよう(天罰が降ったら、神様がいる証明になる)」
みたいな感じの問いかけをしている。
当時のキリスト教社会で、常識とされていた価値観に対して、アンチテーゼを提示して、追求しているわけですな。
この辺りの哲学要素が、小難しいこと大好きな人達の、知的欲求を刺激して、単なるキャラ文芸に終わらない面白さを提供していたりする。
哲学に興味がない人には、どうでもいい話なんだけどね!
【今読むなら、これがおすすめ】
青空文庫でも公開されてるけど、文章がずらりと並んでるから、スマホとかで読むのは目が疲れる。だから紙の本がおすすめ。
読み易さを求めるなら、光文社古典新訳文庫が良いよ。訳文に賛否があるけど、それはマニアの意見に過ぎないので、初めて読むニワカさんには関係ない。
重厚な読み味を求めるなら、新潮文庫が肌に合うと思う。
【豆知識】
日本のプロ作家(高野史緒)が、続編を書いている。
『カラマーゾフの妹』の題で、江戸川乱歩賞を受賞しております。こちらも結構面白い。カラマーゾフの兄弟を読んだ後に、手を出してみると、いいと思うよ。
【終わりに】
今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。
ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。
それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。
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