謎の少女
「皆さま!!!
黒い軍服を着ていた男は大声で宣言をする!その言葉が耳に入った瞬間、俺は心底から全身まで震え始めた。強く拳を握る。視線を隣にやると
「いいぞ! 騎士王さまは最高!」
「王国のやろうどもをぶっ飛ばせ!」
「あはは! さすが騎士王だな! 」
「帝国特有の武器だね!」
笑いながら、人波から声が上がる。石畳みを挟む形で群がる人々。親の肩車で騎士王を眺める小さな子供。そのちょっと離れた位置でただ眺める老人ども。キャーキャーと叫ぶ女性たち。その全ては苛立たしいものだった。
「ばんざい!」
「サインくださ―い!」
戦争の風景を目の当たりにしたことがない平和ボケのクズども。崇拝している英雄の罪は知っているのか!
クソ!親の仇は目の前にいるのに!目の前にいるのになにもできない自分が一番腹立たしい。
弱い自分が悔しい!
「おいそこの君!」
聞き覚えのない声に振り返り見る。知らない少女が力強く俺の手首を握る。俺は答える余地すら与えられず、『村雨服屋』の中へ引っ張られた。
「なんであなたはここにいる?!」
浅緑の長髪、皐月さんが驚いた口調で知らない少女に質問を投げかける。知らない少女―背はともかく低く、顔にまだどこか幼さの面影が見られる。短髪は眼と同じ強い紅い色。それに、皐月さんの乳房が普通だとしたら、この少女は少年である可能性がある。
「皐月様、ご無事でいられたね! この方は同行させていただいたらしいけど……」
知らない少女は息を呑む。そして心配そうな形相を作りながら続ける。
「…ご、ご、ご彼氏ですか? しかし皐月様はまだ子供ではないか? 一年前まではぬいぐるみがないと寝られ‥」
言葉を言いきる前に、皐月さんはものすごい速さ、両手で少女の口を防いだ。その隙間を利用して俺は彼女に聞いてみる。
「あの? この少女は…?」
「え? この少女? えーと…赤の他人かな?」
身軽な動作で皐月さんの腕から逃げられた少女は、居住まいを正す。そして礼儀正しく行儀よくで言う。
「申し遅れたみたいね? 私は
「メイドさん? あ、確かに皐月さんはお姫様だったな! 俺、呉羽裕翔です。」
「へー、皐月様の秘密を知っているのは、仲がいい証拠ですね? しかし、さんだけは失礼だと思わないの?」
「別に! なんも思わないけど?」
そう言ってたきり、暁月さんの目は獲物を眺める獅子かのように、俺を捉える。彼女はため息をつく。それで、消える……消える?!一瞬どこへ行ったかなって探してみるけど次の瞬間、首に冷たい金属の感覚に見がすくむ。迅速な速度だね。
「皐月様にお失礼な態度をとる人はこの世には要らないと思いますが…」
「かえで! やめて!」
皐月さんの声にまるで犬かのように、表情が何もなかったように明るい微笑に変わっていく。
「皐月様?どうされましたか?」
「呉羽くんはいい人だから!」
「皐月様の指示ならそうさせるしかない。ですが、この汚いぶた…おっと間違えた、ご無礼を。この少年は認めないのです。」
「もーかえでたら!」
反撃の王 夢月亜蓮 @aobutakuki
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