漆黒の騎士
服装はまだ所々にぼろぼろなので服屋を探すために俺たちフィーニス都市をフラフラ歩いている。建物は基本的産業革命時代のレンガ造り。赤レンガ造りの建物は多い。赤レンガと白い
「ここはすごいだね」
俺は軽い口調で
「いや、全然よ!
「え? でも…例えばあれ、すごい煙出てるけど?」
「ん? あ! あれは工場だよ!」
「コウジョウ?」
俺はずっとシルバ村の中にいた。その世界しか知らなかった。だから、俺にとって、途方もない大きさのレンガ造り建物はともかく、そこから出ているとんでもない量の白煙まで新鮮に映る。
「ちょっと工場も知らないのか呉羽くん?」
「さすが聞いたことがあるけど、生で見られるのは初めてだ」
「私も子供の頃にここを訪ねたことがある! その時に私も呉羽くんみたいな反応をしたかもな? 覚えてないけど」
俺にとってこの街は落ち着かない場所だ。行き来している人々は皆、上品な服を着こなしている。そこまではいいが、戦争のせいでこのフィーニスには数えきれないほどの兵士が屯している。すれ違う馬に引っ張られている荷車にも多数の銃が載せられている。
「あ! あった! 見て!」
皐月さんは急に立ち止まり、ある方向へ華奢な腕をのばす。彼女が指したところに、めずらしい黄色のレンガ造りのお店があった。ガラスのショーケースにおしゃれな入口の隣に「村雨服屋」という吊り看板が設けられた。
「ショーケースを見てみよ?」
「え? それは面白いなの?」
「なっ?! まさか呉羽くんはショッピングしたことがないのか!」
「だからシルバ村はこいう店がないって!ちっちゃい村に必要最低限の物しかいない!」
「う~、悲しいだな」
「なんでお前が泣いているのか!」
彼女が俺をからかっているのをわかっていながら文句など言えない。彼女も彼女なりの悩みと不安があるはず。この変なやりとりはなぜか微笑ましく感じる。店に入るか入らないかのうちに、後ろから軍服を着た男性が叫んだ。
「道を開けろ!!!! 騎士王の
その一言に反応する皐月さんは虚しい表情をする。彼女の血の気が引いた顔を気にする余地はなかった。男の宣言のわずか数秒後。ドンドンと太鼓を叩く強い音が鼓膜を振動させる。
「っ?!」
一瞬、俺は自分の目を疑った。石畳みの道を挟む形で人が集まる。しかし、それはどうでもいい、
妄想なんかじゃないかなって思ったが、周りの人は皆騎士を歓迎するように手をふる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます